小児科 すこやかアレルギークリニック

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「エピペンを預かる」ということ2
2011年10月14日 更新

昨日の続きです。

近年、食物アレルギーの子ども達が増えていると言われており、昨日も書いたように、軽症が多く、重症なお子さんはごく一部です。治療も様々です。

中には、過去にアナフィラキシーの既往がある、当院のように「食物負荷試験」をして、その結果予想外にもアナフィラキシーを起こしてしまい、今後も誤食は起こり得るため、エピペンを処方されたというケースもあるでしょう。

先日の「すこやか健康フェア」の柴田先生のご講演の中でも、微量のアレルゲンで症状が誘発される場合、そういった症状が反復されている場合、ショックを誘発させやすいピーナッツや魚介類、牛乳、ソバなどがアレルゲンの場合の他に、修学旅行・海外旅行時や医療機関から離れた地域に住んでいる場合もエピペンの適応になるとお話しされていました。

エピペンは、どの小児科でも出してもらえる訳ではなく、逆に新潟県では限られた小児科でしか処方してもらえないとは思いますが、私自身も数十人に処方しており、先月より保険診療でまかなわれることになったため、より一層処方に拍車がかかると思います。

実は、私の患者さんで、食物負荷試験をした際に微量の卵に反応してしまい、これはエピペンの適応と考えて処方したお子さんがいます。園に通っていますので、昨日も書いたように、どんなに園が細心の注意をもって対応してくれていても、誤食は起き得るし、ポイントは微量の卵で反応してしまったため、「万が一、卵焼きを一口でも食べようものなら…」と心配しています。

現在の流れではこうです。誤食があれば、症状を確認し、軽ければ対応薬を飲ませて様子をみて、それで症状が治まるようであれば、経過観察でよい。内服させても症状がどんどん悪化していくこともあります。全身にじんましんが広がってくるとか、機嫌が悪いとか、咳が出てくるとかという症状があれば、要注意です。これくらいの症状だとエピペンの準備が必要であり、内服薬では軽快が難しいくらいの程度だと思います。

アナフィラキシー時には30分以内のエピペン投与が求められており、親御さんや救急車が短時間で駆けつけられる状況であれば、慎重に状態を観察して待っていてもいいと思います。

お母さんも出先であったり、救急車にはエピペンは搭載されていませんので、やはりお子さんが自分を守る薬は、本人の身の回りに携帯しておいた方が望ましいのです。ただ、園児が針の付いた緊急薬を管理できる訳ではありませんので、園にいる間は園の先生が保管しておくことが必要でしょう。登園時にエピペンを持って出掛け、園に着いたら先生に預け、園で保管する。家でもアナフィラキシーの可能性もありますから、帰宅時にエピペンを持ち帰るのがいいと思います。ただし、保険診療に認められたので、場合によっては2本持ち、園と自宅用にしておくやり方も今後は増えてくることでしょう。

実際に目の前でアナフィラキシーが起こってしまった場合、小学生ならまだしも園児なら自分で注射はできません。親御さんもすぐには駆けつけられない場合もあるでしょう。滅多にないことでしょうが、頼りの救急車が大きな事故や災害で出払っていて、すぐに到着できないこともあるかもしれません。

滅多にないことが重なり、エピペンという武器を持っていながら、何もできずお子さんにもしものことがあれば、それは特に人道上の観点で大きな問題です。園の先生がエピペンを自ら注射しなければならない状況は、それこそ“万が一”かもしれません。その時のために、せめてエピペンの使い方は知っておくべきだと思うのです。ましてや、国がそういう方向性を勧めているため、「知らぬ存ぜぬ」ではいけないでしょう。適正に使って、何か起きても学会がサポートしてくれることになっているはずです。

誰だって自分はかわいいはずです。もちろん園児を守るためでもあり、園の先生も自分を守るためにも、一度はアナフィラキシーの状態やエピペンの打ち方、打つタイミングは知っておいた方がいいと思うのです。

某市に住む私の患者さんのお母さんが、エピペンを園に預かってもらうようお願いしたそうです。「医療行為だから」、「救急車を呼べばよい」と母の要望を受け入れてくれませんでした。もしかしたら、母の要望を無理難題と思ったかもしれませんが、現在の流れからすれば、これまで述べてきた通り、お母さんの言っていることが正しいのです。

市の保育課とも相談することになったそうですが、「処置の仕方が分からない」、「保管の仕方が分からない」という返事だったようです。ただ、残念ながらその言い分は通りません。何故なら、園側には当院に来るか、私が園に行ってエピペンの使い方を説明すると伝えてあったからです。

理論武装で園を責め立てている訳でも何でもなく、私はお子さんとお母さんを守りたいだけです。園にとっては“不都合なこと”であっても、時代が変わって国が食物アレルギー児を守る方針を打ち出しているので、私は県内には数少ない専門医として、その流れを広めたいだけなのです。

確かに、医療関係者でもないのに、子どもに薬を注射するという行為はなかなかできないはずです。「エピペンの注射をしなければならない」という言葉が先走りしている感もありますが、そうそう滅多に打たなければならない状況には遭遇しないと思っています。

誤食が起きれば、園の管理責任となってしまうでしょうが、まずは口の中にあるのに気付けば吐き出させる、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬といった対処薬を飲ませる、親御さんに電話する、状況によっては救急車を呼ぶということを冷静にできれば、それで充分と思います。万が一の際には、手を下さなければならないという心づもりを持っていることが重要だと思っています。実は、そうすることで園の先生方も守ることができると考えています。

今度、話し合いに参加することになりました。70キロ離れていますが、私の方が出向くことになりました。そのための資料も作らなければならず、学会の準備が後回しになってしまいますが(汗)、患者さんや新潟県のことを考えると、そちらの方を優先すべきでしょう。今の流れを理解して頂けるよう、頑張ってきます。