小児科 すこやかアレルギークリニック

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これを書かねば
2011年10月20日 更新

昨日、中越のある園にエピペンに関する説明を行なってきました。

それなりに忙しい中を、準備をするのは結構大変でしたが、すこやか健康フェアでご講演頂いた柴田先生に比べれば、“この程度”って感じです。その話をしようかと思いましたが、診療で「これを書かねば」ということがありましたので、そっちのけで、こっちのことを書こうと思いました。

ちまたでは、マイコプラズマが流行っていると言われています。近頃はテレビでもインフルエンザだけでなく、この夏に全国的に流行した「手足口病」や、ここ最近では「RSウィルス」、「マイコプラズマ」が流行っているなどと報道されています。

RSウィルスにしても、マイコプラズマにしても診断が簡単ではないため、流行の情報は、「本当だろうか?」と疑ってかかっています。いつも言っているように、食物アレルギーはアレルギー検査だけでは食べられる・食べられないの判断はできず、「食物負荷試験」によらなければならないのは、“常識”になっていますが、周囲では未だに「食物負荷試験」がほとんど行なわれていません。ぜんそくもアトピー性皮膚炎も結構見逃されており、医師にも当てになる人と、当てにならない人がいるんだと思い知らされています。

RSウィルスも、つい最近少しだけ状況は変わりましたが、これまでは開業医が外来で調べると、外来の検査は保険適応でないため、多くの小児科医が損になるからとRSウィスルを調べない状況にありました。私は患者さんのためにベストを尽くすべきと言っていますが、おかまいなしの医師が多いのも事実でしょう。

そんな状況で、「RSが多い」と言われても、「何を根拠に?」と思ってしまいます。調べる医師が増えたとは思えず、真面目に調べている医院での報告数が増えているのかなと考えています。

ただ、当院では自分の目でRSウィルスの患者さんを何人も確認していますので、「RSが増えている」というのは事実だろうと認識しています。逆に、自分の目で確認しなければ、信用しないようにしています。よもや、そんなことはないでしょうが、RSが流行っているという情報から、それっぽい症状の患者さんを「あれもRS、これもRSだろう」なんて診断が何となくされては困ります。

うちの子どもの通う園にも「マイコプラズマが流行っています」という報告があるようですが、この情報もいかがわしいんじゃないかと思ってしまいます。市内にはぜんそくを「マイコプラズマです。点滴しないと治らない。」と言っている医療機関もあり、症状が改善しないため、当院に鞍替えされる患者さんが多いのですが、当院で検査してもマイコプラズマの痕跡すらないことも数多く経験していますので、情報の出所が確かでなければ、信用に値しないと思っています。

咳が出ればマイコプラズマと診断していると思えるほどですが、中には「ちゃんと血液検査で調べてもらった」とおっしゃる方もいます。感染症のプロの間では、マイコプラズマの迅速検査(その日のうちに出る検査)は当てにならないことが知られています。使い方を間違えると、“誤診”につながるのです。

この話ならご存知でしょうが、インフルエンザの迅速検査は発症したばかりの状況で調べても「陰性」のことがあります。検査には弱点がある場合もあり、例えば兄弟がインフルエンザと確定診断されていて、別の子がカーッと熱が出れば、誰だってインフルエンザを考えます。かかりつけで調べて「陰性」だと、検査が間違いじゃないかと疑いますよね?。

誰もマイコプラズマの検査を疑わないのは、それこそおかしな話だと思うのです。

先日、こんなことがありました。私から見れば明らかにぜんそくと診断されるべきお子さんが、他院でぜんそくとは診断されていないのに、ぜんそくの薬が継続されていました。

風邪を引くと、それがきっかけとなってぜんそく発作を起こすことはよくあります。そのお子さんも熱を出し、かかりつけでマイコプラズマと診断されたそうです。当然、親御さんは「うちの子、マイコプラズマにかかっちゃって」と通っている園に報告することになります。

その医院さんでは、ジスロマックという抗生剤を処方されていました。私もマイコプラズマを考えると、ジスロマックという薬を出すことが多いのですが、本物のマイコプラズマの場合は、例外を除いて1~2日で「明らかに効いている」と感じる効き方をすることが多いのです。

その患者さんは、「熱が3日下がらない」と当院に“鞍替え”してきました。お母さんは、マイコプラズマの検査がうっすら陽性だったと、マイコプラズマであることを強調されています。だったら何故ジスロマックが効かないのでしょう?。例外なのか、マイコプラズマの診断が間違っているのかを考えるべきだと思います。

私は、はなっからマイコプラズマであることを疑っていました。明らかにおかしなことが起きているのです。熱が遠慮なく続き、ぜんそくも悪化の一途を辿っている。血液検査をしてみると、炎症反応は全くの陰性で、何かのウィルスが原因していると考えました。

お母さんには「多分、RSウィルスが出るのだと思います」と言っていました。実は、今週からRSウィルスの検査が一部保険適応になりました。“一部”と書いたのは、0歳児に限るという縛りがついています。

ということは、これまでRSウィルスを調べなかった小児科さんでもバンバン調べるようになることが予想されます。その結果、RSウィルスの迅速検査キットが入手困難になるかもしれません。となると、これまで損になっても真面目に調べてきた当院のような医院には「大迷惑」な話です。そうならないことを祈っています。

今回のお母さんには「これまマイコプラズマじゃないでしょう。RSが最も考えられます。」と大見栄を切ってしまったので、「そうじゃなかったらどういう言い訳をしよう?(汗)」と考えながらRSウィルスの検査をしました。この子は0歳児じゃないので、自腹を切ることになりますが、マイコプラズマと信じて疑わない親御さんに原因が違うことを証明するには、それでも致し方ないのです。

この患者さんはRSウィルスが陽性でした。「オレってやるじゃん」と思うことも稀にありますが、今回もちょっとそう思いました(笑)。でも自分の感覚を信じながら診療していれば、的を得たというか、予想通りの結果が出ることも多いものです。

ただ、今回のマイコプラズマが間違いだったかと言えば、マイコプラズマとRSウィルスの合わせ技だったことも否定はできません。ただ、ジスロマックが全く効いていないところを見ると、マイコプラズマはいつもの“誤診”で、RS単独犯だと思っています。

その子の通う園では、先生やお母さん方の間で「マイコプラズマの子が出たらしいよ」なんて噂になっているでしょうが、間違いである可能性が極めて高いと思っています。迅速検査は「疑陽性」(間違って陽性と判断されること)が多く、市内で広くこの検査は行なわれていますので、「マイコプラズマが流行っている」という情報はどれだけ正しいのだろうかと疑わざるを得ないのです。今回のような経験をしょっちゅう繰り返していると、尚更です。

先ほど例えに出したインフルエンザも、以前は迅速検査なんてありませんでした。高熱だったり、関節痛、ぐったり感などの他に流行状況で、医師が感覚を研ぎすませてインフルエンザと診断していました。ところが簡単に検査ができる時代になり、医師が“楽”をするようになりました。

自分で言うのも何ですが、患者さんがマイコプラズマと診断され、治療を受けても良くならず、1日も早く症状を良くしたいと考えて、かかりつけを代えてまで当院を頼って受診されました。その期待に応えるためには、医師が感覚を研ぎすまして対応するしかありません。それにより、原因を明らかにできたと思っています。

マイコプラズマは誤診も少なくなく、一部の「マイコプラズマが流行っています」というのはガセネタもありそうです。それを正すのも私の役目だと思っています。ただし、今度話そうと思っていましたが、「100%間違いない」と思えるケースもあります。市内では、マイコプラズマがいるのも事実でしょう。

診断も大事だけれど、「何のための診断か?」と言われれば、正しく治療して、症状を速やかに改善させるためでしょう。言い方は変ですが、医療は“結果オーライ”的なところがあって、診断はハッキリしなくても、とりあえず治ればいいという捉え方もあると思います。その逆は、大して意味がないと思っています。つまり、“診断”を告げられたけれど、それが正しくなくて、治療に結びつかず、いつまで経っても治らない、というケースです。

当院は、アレルギーの他に、呼吸器感染もこだわっているつもりです。マイコプラズマなどと診断されて改善しない場合は、早めに相談して下さればと思っています。