小児科 すこやかアレルギークリニック

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本能寺
2011年11月08日 更新

「敵は本能寺にあり」という言葉があります。

日頃から上越の子どものために、アレルギーであっても感染症であっても、的確に診断し、治療をするということに力を注いでいるつもりです。私の診ている患者さんだけでなく、地域の子どもはみなエビデンス(医学的根拠)のある医療を受ける権利があり、そういう意味では、“敵”は少なくないと思っています。

私の診ている食物アレルギーの患者さんで、通う園で微量な乳製品を摂取後にアナフィラキシーを起こし、立て続けに2回入院したお子さんがいます。当院からは少し距離があるので、近くの病院に搬送されました。そこでボスミン(エピペンと同じ成分)が投与されたようです。

確かに重症な食物アレルギーでしたが、それまではご家族の努力によりアナフィラキシーで入院ということはありませんでした。1回目の入院の時点でエピペンの購入を薦めていました。しかし、購入する前に立て続けに2回目の入院となってしまい、私も何とかしないといけないと考えました。

エピペンを処方した患者さんには、親御さんはもちろん、園関係者の方に当院に来て頂き、エピペンを打つタイミング等を指導するようにしています。大抵は、こちから親御さんを通して打診した時点で、すぐに飛んで来られるのですが、「救急隊に任せればいい」とおっしゃり、なかなか話し合いの機会を持てませんでした。

何度も働きかけ、ようやく医院に来て頂くことができ、診療の終わった頃に引き続き話し合いを持ちました。

現在、厚生労働省の推奨するアレルギーの対応に関するガイドラインにより、エピペンは園で預かり、緊急時には園の職員が人命救助の観点でエピペンを使用しても問題ないことが確認されています。

アナフィラキシーを起こす場合、過去にそうなった患者さんのアンケートでは平均19分でアナフィラキシーショックに至っています。10分以内が41%、10分以上20分以内が25%とデータを見ただけで、こちらが怖くなってしまいます。

園の方が言うように「医療行為」と見えなくもありませんが、園でお子さんを預かる以上、超重症な食物アレルギーのお子さんの場合、救急車を呼んだり、あたふたしているうちに10分、20分は経ってしまいます。園で起こったことは、すべて園に降り掛かってきますので、いつも言うようにお子さんを守ることが一番ですが、園の先生方もご自分の身を守るためにも、有事の際には速やかに対処できるようにしておかなければなりません。これらの説明をした後、「私が園に行ってエピペンの使い方を職員全員に話をしてもいいですよ」と伝えておきました。

それからしばらく経ち、何の音沙汰もありません。確かに園でも慎重に対応しているため、アナフィラキシーは起こしていないようです。そのお子さんはぜんそくもあり、当院で薬を処方していますので、先日定期受診がありました。

その辺の話を聞いてみると、まだ「医療行為だからやりたくない」、「アナフィラキシーを起こさないことが一番だ」、「うちだけでなく、市全体で足並みを揃えないといけない」、「(人事異動で)来年にはいないかもしれない」などとおっしゃっているようです。

ちなみに、「“医療行為”ではありません。」、「誤食は起こり得ます。既に2回入院しています。」、「重症なお子さんが在籍する園を最優先で対応しなければなりません。」、「話のすり替えです。」と即座に反論はできます。

私は患者さんを守りたいがために、また国の推奨する方法を広めたいだけです。こういう無理解、理解不足を“敵”と判断しました。他方面からのアプローチが必要だろうと考えました。

親御さんから、話が全く進んでおらず、進める気もないことを聞いた直後に、診療を一時停止し県庁に電話しました。告げ口のようで少し嫌な気持ちもありましたが、かかりつけの患者さんを守るためには、背に腹は代えられません。

その日のうちにその子の住む市の担当課から電話があり、「準備を進めている」との報告を頂きました。親御さんから聞いた園の先生の話とは大きく異なっています。私の働きかけからかなり時間も経っており、しかも2回も入院しているため「準備を進めている」という悠長なことは言っていられないということは伝えさせて頂きました。

これで、少しは話が前に進むのだろと思っています。本当なら私のとの話し合いで、患者さんを守るために園が一丸となって、最悪のケースを想定して速やかに対応できる準備をして下さればよかったのですが、今回はこういうアプローチになってしまいました。私にも反省すべき点があるのかもしれませんが、これまでは同様のやり方で対象となった園や学校側は理解して下さり、エピペンを預かって下さっています。

逆に“敵”を作ってしまうこともあるのかもしれませんが、誰かが尻を叩かなければ、前に進まないことです。もちろん、友好的なアプローチでエピペンを預り、場合によっては投与して頂くようにしていきたいと思っていますが、こういうアプローチも有効だと経験しました。

アレルギーもそうですが、マイコプラズマなどの感染症でさえ、誤った診断をし治療も間違っていることも少なくなく、治療を見直さなければいけないにもかかわらず、同じ薬を出し続けている同業者もいます。結局良くならず、当院を受診されるケースも多い訳ですが、私としては正しい医療を広めるために、診断や対応が正しくなければ、そうであることを伝えなければなりません。何も変わらないからです。

患者さんは、医療機関を選択した理由を「有名だから」とか「テレビに出ているから」などとおっしゃいますが、それこそエビデンス(根拠)のない話であり、いかに医師が自分の信念のもと、最短距離で症状を良くしたいと思うかだと思っています。これは私にも言えることですが、努力をしなければ、信念が薄ければ、診断を間違い、治療も間違うのだと思います。

真面目に、そして一生懸命やれば、“敵”は増えるのかもしれません。私はそれはそれで致し方ないと思っています。