この週末も、講演の準備でした。
今回はエビデンス(医学的根拠)を示すために、ほとんどをガイドラインからの図や表を用い、解説しようと考えています。ですから、スキャナーで図を取り込む作業をずっと繰り返していました。頑張ったお陰で、スライドが60枚程でき上がりました。
今回は、呼吸器感染症とぜんそくの最新治療についてお話しする予定です。ぜんそくの話も結構しているので、私の頭の中は、呼吸器感染症の話をどのように組み立てて行こうか?という思いで占められています。
そんな中、愛子さまが熱と咳で入院されたという報道がありました。宮内庁病院ではなく、設備やスタッフを考慮して東大病院を選ばれたとのこと。
今は退院されたとのニュースも入ってきましたが、小学生のお子さんが「熱」と「咳」で入院となると、マイコプラズマが浮かびます。しかも、全国的に今年は多いとされています。東京とて例外ではないでしょう。
ちょうど講演の準備をしていてデータがあるのですが、6歳以上の肺炎の原因の62%がマイコプラズマと言われています。ちなみに細菌性が8%、ウィルス性が6%、特定できなかったという意味でしょうが、不明が22%、マイコプラズマ+ウィルスが2%だそうです。つまり、64%がマイコプラズマということで、小学生以上の2/3はマイコプラズマと言っても過言ではないことが分かります。
この週末に無事に退院され、案の定「マイコプラズマの疑い」とニュースで流れていました。
多くの方が「マイコプラズマが流行っているので、愛子さまもマイコプラズマだったのね」と思ったことでしょう。私は、そのニュースを聞いて、「さすが東大」と思いました。
中には「マイコプラズマの“疑い”」と聞いて、何で「疑い」なんだよ!?と思った方もいらっしゃると思います。言い方は悪いですが「東大のくせに」という考えが頭をよぎった方もいたのではないでしょうか?。
ここ最近は、頭が感染症モードのため、マイコプラズマと誤診されているケースが市内には多いと言っています。逆に考えて頂きたいのは、さすがに東大病院よりは設備などさまざまな点で劣る診療所の先生が「マイコプラズマです」と言い切ってしまうのは、どうだろうかと言うことです。
マイコプラズマの診断の確定は、間をおいて2回検査し、抗体価が4倍以上上昇している、もしくは単回の検査で320倍以上であることが求められます。
愛子さまの場合、比較的早く入院されたようですので、私の推測では抗体が少し上がっているけれど、上がり切っていなかったと思われます。少し間をおいてもう1回検査して上がっていれば、「マイコプラズマでした」と確定できるのだと思います。
いま言ったのが、感染症のガイドラインに基づくマイコプラズマの診断の確定法なので、優秀な東大病院の小児科の先生も、基本に忠実な診断法で診断を試み、現時点では「疑いとしか言えない」状況だったのだろうと考えられます。
裏を返せば、「マイコプラズマです。点滴しないと治らない。」という医師は残念ながら存在するようですが、胡散臭いことが分かります。私は上越の子を守るためにこの地で開業しようと考えましたので、エビデンスのない医療は地元から根絶させなければいけないと考えています。
最近は、某医院さんで良くならないと、すぐに当院を受診して下さるようですが、「有名だから、行ってしまっていた」と多くの親御さんがおっしゃり、お子さんのためにベストのことをやってあげられなかったことを反省されているようです。
つい話が長くなってしまいました。先週の小児アレルギー学会で小児ぜんそくのガイドライン2012が発刊された訳ですが、基本は大きく変わっていません。マイナーチェンジという感じです。
ただ、日本の第一人者の先生方の苦労は見て取れます。前回の2008年版の場合、ちょうど「アドエア」の粉を吸うタイプでなく、スプレータイプの「アドエアエアー」という吸入薬の発売直前でした。
内科では、専門医でも非専門医でも、すぐに「アドエア」や同じタイプの「シムビコート」という薬がすぐに出されるようです。最近、少し触れていたことですが、その流れで、小児科でも「アドエア」が処方されるようになりました。もちろん、適切に処方されている場合もあるのですが、目に余るのが、ぜんそくと言えなくても処方されていたり、ぜんそくはぜんそくでも、そこまで重症ではないのに、出されていることもあります。
問題なのは、過剰に治療すれば、当然症状は治まります。ぜんそく症状を止めることは悪いことではありませんが、ダラダラと治療することになり兼ねません。アドエアには長時間効く気管支拡張薬が含まれています。以前、気管支拡張薬の乱用でぜんそく死が増えたという苦い経験を持つ国もあり、日本とて例外ではありません。
便利な薬が発売になったお陰で、症状を取り去ることは簡単になっていると思います。治療している患者さんが、症状が落ち着いているのが、適切な治療によるものなのか、過剰な治療なのかはなかなか区別がつきません。
今回のガイドラインでは、「ぜんそく症状がコントロールされているか?」ということを常日頃から確認する必要があると強調されているように感じています。その下のところに「ただし、過剰な薬物治療になっていないか注意が必要である」と書いてあります。過去のガイドラインにはなかったフレーズです。
食物アレルギーのガイドラインでは、「除去食療法」という言葉は使いたくないと作成委員の先生方伺って、それが印象的でしたが、今回のぜんそくのガイドラインで、最も気になった言葉がこの言葉でした。
検査法の理解不足で、マイコプラズマという診断が地元では乱用されています。ぜんそくに関しては、アドエアの使い方が気になっていましたが、ガイドラインでもその辺のことが注意喚起されているのです。これらはとても大切なことですから、多くの患者さんや養護の先生方にも知って頂きたいと思っています。


