ようやく肩の荷が下りました。
昨日の午後は休診でした。午前中のみの診療でしたので、外来は結構混みました。
アレルギーの専門医は、聴診にはこだわっています。軽い喘鳴などの異常音を聞き逃せば、診断を誤ってしまうからです。最近の寒暖差の影響か、ぜんそくの調子が悪いお子さんもいます。それであれば、ゼーゼーと言う音が聞こえるのですが、肺炎などが合併していると、それとは明らかに異なる音がします。医学が進歩しても、アナログ的な聴診という作業は、やはり大事だと思っています。
もし肺炎を疑わせる音があれば、肺炎か気管支炎を考えます。こういう時は、胸のレントゲンを撮ることになります。勤務医の頃は、放射線科に回ってもらい、技師さんがレントゲンを撮って、でき上がったレントゲンを見て判断するだけでしたが、今は自分でやらなければなりません。
当然、診療がストップします。それでもなるべく正しく診断するには、診療が終わるのが遅くなってでも、必要なことはやるべきだと思っています。
最近は、マイコプラズマが流行っていると言われています。全国の拠点となる医療機関でマイコプラズマと診断された患者さんが増えているそうですが、昨日も書いたように東大病院でさえ「疑い」なものを、すべての医師が確実な方法で診断しているのだろうか?という疑問はあります。
実際に、他の特定の医院さんでマイコプラズマと診断されたが、診断が疑わしい場合は当院で再検査させて頂きますが、マイコプラズマだった試しがありません。自分の目で確かめないと、信用しないようにしています。というか、日々の診療態度で信用できるところと、できない医院さんがあると言った方が適切でしょうか。
マイコプラズマ流行の情報がウソかと言えば、そうではないと思います。当院でも肺炎は何人か診ているし、治療もしています。ただ、市内の感染症情報ほど、多くはないと思っています。
ただ、昨日はレントゲンを撮らなければならない、と思うお子さんが3人いました。午後からの講演は15時からだったのですが、そんなこんなで、午前中の診療が終わったのが14時近くになっていました。少しヒヤヒヤしました(汗)。
慌てて家に帰り、昼ご飯を食べて、背広に着替えて出発です。私の出番の直前に到着しました。会場が近くて良かったです(笑)。
感染症の話はし慣れていないので、早く終わってしまうのも何だし、スライドを多めに用意しました。養護教諭の先生方も、もちろん医学的知識はお持ちでしょうが、私自身もどこまで話せばいいか、よく分かりません。せっかく呼んで頂いたので、感染症の時に医師が何を判断するために血液検査をするのか、迅速検査や胸部レントゲンなども欲張って説明しました。
その医師の“経験論”を話したところで、正しい経験を積んでいれば、正しい話になるのでしょうが、我流の判断を繰り返していれば、独りよがりな話になってしまいます。
呼吸器感染の話をする場合は、「咳」がポイントになります。咳の性状、出る時間も大事なヒントになります。となると、健常児の咳はどうなのかなど、こと細かに話さないといけません。
ひと通り説明したあとで、今度は各病気の説明をしなければなりません。上気道炎、下気道炎(気管支炎、肺炎)、マイコプラズマ、クラミジア肺炎、インフルエンザ、結核、百日咳、後鼻漏症候群など、学童や生徒がかかりやすい病気を病気の特徴から、診断法、治療法を説明していきます。
マイコプラズマはこの辺は誤診率が結構高いので、正しい診断の仕方や、耐性菌が増えているので、その際の治療法も話をしました。耐性菌を念頭に置いた治療を進めていけば、何日も点滴に通わされることはなくなると思います。医師の差も養護の先生には理解して頂く必要がありました。
時折、時計を見ながら話をしていたつもりですが、呼吸器感染症とぜんそくの治療を話さないといけないのに、呼吸器感染症のところで、もう1時間近くかかってしまいました。「こりゃ時間が足りないな」とぜんそくの部分は多少端折ったところもあります。
ただ、端折れないところもあります。過去に日本でも気管支拡張薬の誤使用で、喘息死が2回に渡り増えた経緯があります。そして、アドエアなどの長時間作動型の気管支拡張薬を出す小児科医も増えてきたと感じています。もちろん重症なお子さんなら必要ですが、軽症に出し続けるのは再考を要します。
あと、まだ小さなお子さんに大人と同じ「ディスカス」という強く吸うタイプの吸入ステロイドを処方する医師がいますが、中には真面目に継続しても症状が良くならないと言うお子さんもいます。そのお子さんが、キッチリ使える吸入ステロイドを処方すべきで、同じ吸入ステロイドでも剤形を代えたら、有効に作用したケースも経験します。
また、重症なお子さんはぜんそくを大人に持ち越してしまう可能性が高いのですが、最近出てきた小児ぜんそくの長期予後のデータを紹介しました。逆に、小中高の児童生徒で、体が強くなってきているにもかかわらず発作を繰り返すようでは、治るという意味では期待が薄いと言えると思います。こういう患者さんは、継続的治療が欠かせなくなるのですが、通院が不定期で、治療不足になり、思春期ぜんそくで死亡例もあることも説明しました。
私に与えられた講演時間は1時間半でした。タイトルのミッションインポッシブルというのは、1時間半の“指令(ミッション)”がインポッシブルだったという意味です(汗)。お陰で、質問時間まで目一杯の2時間弱話してしまい、ご迷惑をお掛けしました。よりコンパクトに話すというのが、今後の私の課題だと思いました。
蓄膿症の場合、抗生剤を長めに使うと70%が改善するという治療法があるにもかかわらず、抗生剤も処方せずに頻回に鼻の吸引に通わせる耳鼻科もあります。「治って欲しくないのかな」と感じています。汚い鼻が気管を刺激して咳を繰り返すのが、前述の後鼻漏症候群となりますが、ちょっと理解し難い対応をしている医院さんもあることも話さざるを得ませんでした。
今回の講演のために、だいぶエネルギーを使いました。養護の先生方にとって、どこまで実践的で、役に立つのかはよく分かりませんが、なるべく根拠のある話を盛り込んだつもりです。“通っても良くならない”場合は、医師のやっていることに根拠があるのかどうかを、今回の資料で確認して頂きたいと思っています。
インフルエンザの診療は、迅速検査で診断して、タミフルやリレンザといった抗ウィルス薬を出すだけですから、医師の技術の差は出ようがありません。アレルギーや呼吸器は不得手な医師も多いので、かなり差が出てきます。
少なくとも、「お医者さんのやることは全て正しい」、「何から何まで任せておけば大丈夫」という地元の風潮に一石を投じることができれば、今回のミッションは成功と言えるのだと思っています。


