小児科 すこやかアレルギークリニック

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予防接種ができない!?
2012年02月16日 更新

先日、市外から患者さんが受診されました。

当院ではよくあることですが、巷では「3分診療」が多い中、数十キロの距離を期待して受診される訳ですから、時間をかけて誠実に対応しようと努めています。

主訴は「インフルエンザのワクチンが接種できない」というものでした。家族歴を見ると、母もインフルエンザワクチンで腫れるなど副反応が出やすいようです。となると、言い方は変ですが、筋金入りと言えるのかもしれません。

私もまだまだ分からないことは沢山あり、勉強しなければいけないことも一杯あります。世の中には、接種が困難な患者さんはいるはずなことは知っています。ただ、それなりにアレルギー体質の強い患者さんを大勢診ていますが、予防接種ができないという患者さんには遭遇したことがありません。

昨日の話ではないですが、前にかかっていた医師の判断は、悪いですが「本当かな」と思ってしまいます。まず、自分のこれまでの感覚から「それは本当だろうか」と疑うことは大事だと思いますし、よく刑事物のドラマでもそんなようなことは言っています。

ここで、いろいろと問診することになるのですが、前にかかっていた病院ではキチンとした手順を進めていたようです。どういうことかと言うと、アレルギー体質のあるお子さんは、ない子に比べて予防接種での副反応の出る確率は高いだろうと思います。小児ぜんそくのガイドラインには、予防接種の皮内テストのことが書かれています。

つまり、ワクチンを10倍希釈し、その0.02mlを皮内に注射し、腫れ具合をみて、判断するというものです。蚊に刺されたようにプクッと腫れることがあり、その直径で陰性、陽性を判定します。「陰性」:8ミリ以下、「陽性」:9~14ミリ、「強陽性」:15ミリ以上となっています。

ちなみに、「陰性」では通常通りの量をそのまま打っていいことになっており、「陽性」では0.1mlを接種し、30分見て何も起こらなければ、残りを接種することになります。MRワクチンなら0.5ml接種しますので、最初に0.1ml打てば、0.4ml打つことになります。即時型の反応が出れば、0.4mlは打たないこととしています。「強陽性」なら接種は中止という決まりになっています。

根拠のない医療をするのは、患者さんに失礼ですし、アレルギーの場合は危険も伴うことも有り得ます。予防接種に関しても、私が勝手な判断でやってきた訳ではなく、このガイドラインに沿った方法で接種してきて、これまでは何も起きなかったのです。

こういう方向性が示されているにもかかわらず、インフルエンザワクチンやMRワクチンの希望者に「卵アレルギーがある人は打てません」と平然と言う医師もおり、患者さんに不安をあおるような発言はすべきではないし、できなければできそうな医師に紹介すべきと思っています。

今回の患者さんは、前にかかっていた病院でこの方法でテストをし、「強陽性」だったということでした。根拠のある対応をされていたのですが、先程のガイドラインによると「打てない」という判断になります。

個人的には、かなり卵アレルギーの強いお子さんでも、アレルギー検査の値がクラス6であっても、卵でアナフィラキシーを起こしたことがあっても、接種をしてきました。親御さんが接種を希望されているのですから、根拠を示さずに「打てない」と言うのは卑怯だと思っています。

この患者さんには悪いですが、もう一度皮内テストをさせて頂くことにしました。実は兄弟2人で受診しており、2人とも接種できないということでした。

結果は、上のお子さんが「陽性」、下の子が「陰性」でした。となると、上の子は最初に0.1mlを打つ、下の子は通常通り0.5ml打つという方針になります。

既にインフルエンザが流行期に入っていますが、親御さんはインフルエンザワクチンが打てないものと諦めていらっしゃいましたが、そうでもないことをガイドラインに従って説明すると、接種を希望されました。私もその希望に沿うようにしようと思いました。

2人立て続けにインフルエンザワクチンを接種し、30分後に診察しましたが、何も起こらず元気にしています。上のお子さんは、また診察後、残りの0.4mlを反対の腕に接種しました。

また30分様子をみて、何も起こりませんでした。親御さんも、お子さんが2人ともインフルエンザワクチンを無事に完了し、とても嬉しそうにしていました。今年は事情で流行期に入っての接種でしたが、来シーズンは打てるのだろうと思っています。

政治の世界で「火中の栗を拾う」という言葉が出てくることがあります。医療もそうなのかもしれません。私も「ワクチン接種は諦めて下さい」と言えば、そのひと言で済ませることもできました。まさに「1分診療」です。

ただ、自分の中で納得できなかったので、ガイドラインの手順に沿って進め、無事に接種ができました。兄弟2人で、まず話を聞いて、皮内テストをし、判定をし、0.1ml接種し、経過観察後残りの接種をしました。合計で20~30分はかかったはずです。

今の医療は、手間をかけない医師が多く、かけられるべき患者さんが路頭に迷うケースをよく目にします。先日お話しした重症なアトピー性皮膚炎なのに、皮膚科でステロイドの塗り方さえも指導されていなかった患者さんもそうです。

私としてはそれがスタンダードだと思って欲しくはないし、医者が皆そうだとも思って頂きたくはありません。今回のケースも、一応一件落着だろうと思っています。