来月に入ると、2週連続でエピペンの取り扱いに関する話を学校に出向いて行なう予定になっています。
今月は、先月までの講演ラッシュが一休みなので、時間的余裕が久し振りにできたのも確かでした。ただ、講演がないからと言って、やることがないかと言えばそんなことはありません(涙)。
今、やっているのは、食物負荷試験のデータをコンピュータに入力しているところです。これまで開院してから1000件ほどの負荷試験をやっていますので、それを元にひとつひとつ地道に入力してきました。
それを元にすれば、地元のテレビ局の医療情報番組で示したように、例えば卵白の値がクラス2以上の陽性だった場合、卵焼きや加工品を材料に負荷試験をやったら何%が食べられたなどというデータを分かります。
そのデータは、学会発表にも使えますし、患者さんに「うちでは90%以上の確率で食べられている」などと言うこともできます。手応えとして「ほとんどが食べられている」と言うよりは「何%が食べている」と具体的に数字で言った方が説得力があります。学会発表のために負荷試験をやっている訳ではありませんが、真面目に取り組んでいる結果としてのデータが有効に使えるのならば、それはありだと思うのです。
開業医で、負荷試験をこれなりの数こなしている小児科医は、全国的には多くないと思います。新潟県内の全ての医療機関で行なわれている負荷試験の何割かは、当院でやっているものと思われます。少なくとも、県内ではとても貴重なデータと言えると思います。
昨年10月末に福岡で日本小児アレルギー学会がありましたが、その時も当院の負荷試験についての発表を行ないました。
食物負荷試験は、ご存知のようにアレルゲンを食べさせてみて、食べられるかどうかを調べる検査です。卵アレルギーなら卵焼きやゆで卵1個、牛乳アレルギーなら牛乳200ml、小麦アレルギーならうどん100gなどと食べる目標が決まっています。
これだけ“濃い”ものを食べさせるので、強い症状を起こすこともあります。病院ならまだしも、開業医で行なうにはなるべく起き得るリスクを減らす必要があります。そこで当院では、ガイドラインでオプションに設定されている、加工品を用いた負荷試験を行なっています。
要するに、濃いものでなく、薄い食品を使って負荷試験を行なえば、1歳という低年齢であっても、アレルギー検査の値が高くても、症状が起きない、もしくは起きても軽い症状で済むのでは考えました。
実際やってみた結果は、「医療の広場 専門医のススメ」の中で、惜しげもなく公表しています。多くの小児科医が、アレルギー検査が高いと「ショックを起こすかもしれないから、食べてはいけない」と言っています。その“脅し”が、親御さんの食べられない方向に強く向かわせていると考えています。そんなこともあるかもしれませんが、その多くが正しくないことを、当院のデータが示していると思っています。
当地では、私が負荷試験に力を入れているにもかかわらず、それを知っていて必要な患者さんを紹介しない医師が少なくない現実があります。私の立場からだと、これだけ食物負荷試験の認知度が徐々に上がってきているにもかかわらず、検査自体を患者さんに伝えていない訳ですから、“悪質”以外の何者でもありません。
ただ、世の中には患者さんのために負荷試験をやってあげたいのだけれど、やり方を教えてくれる人がいないので、一歩踏み出せないという良心的な小児科医もいます。それが証拠に、小児アレルギー学会の私の発表の後、細かいやり方を聞いてくれた先生もいました。
今年の学会の発表は、当院の加工品の用いた負荷試験をもう少し踏み込んだ話をしてみようかと思っています。アレルギー専門医から見れば、当たり前のことと映るでしょうが、多分そんなに多いとは思いませんが、やってみようと考えている先生の背中をちょっとでも押せたらいいなと思っています。
なお、来週の月曜日の19日は、大学の同級生の小児科医が当院に負荷試験の見学に来る予定になっています。とても優秀な先生ですが、食物アレルギーに関してだけは伝えられることがあると思っていますので、私のノウハウをお話しし、彼の地元に負荷試験を根付かせて欲しいと思っています。
その前に、当院のデータを入力し、加工品を用いた負荷試験を実施した何%が無症状で、何%にアレルギー症状が出て、そのうちの何人が抗ヒスタミン薬を用いたのか、もっと重ければアドレナリンの注射をせざるを得なかったのかというデータを揃えておこうと思っています。それで学会の準備も楽になれば、一石二鳥となりそうです。


