柏崎市にエピペンの講演に行ってきました。
今回は、エピペンを処方しているお子さんが通う学校に行って、学校の職員にいざという時にエピペンを使ってもらいがために、話に行ったというものです。
特定の学校に行くのは、という違和感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、食物アレルギーが重症でなく、エピペンを持っていない学校に行って話しても、関心を持ってくれる人は少ないと思いますが、現時点で所持しているお子さんが所属していれば、アナフィラキシーに遭遇してしまうかもしれません。
いろいろとお忙しい学校の先生方に、更に仕事を押し付けるようで恐縮ですが、食物アレルギーは昔と違って頻度も増えていますし、海外でも重症化しており、入院するケースも増加しているというデータがあります。正しい知識と対処法を理解しておく必要性は高いと言えます。
その小学校には、この春、私が赤ちゃんの時から診ている患者さんが入学します。卵や乳、小麦、大豆などがアレルギー検査でクラス6でした。今は数値的に下がっている食品もありますが、口にすると症状が誘発されるという過敏さは相当残っています。
食物アレルギーの診断書では、卵も乳も小麦、大豆など多くの食品でアナフィラキシーの既往があります。多くの職員の方が「こんな子、見たことない」というものでしょう。
実は、もう1人この1月にピーナッツでアナフィラキシーを起こし、入院したお子さんもいます。その子もだいぶ前からの付き合いですが、以前は卵や特に乳製品でアナフィラキシーを繰り返していました。これまでピーナッツはアレルギー検査の数値が不気味に上がっており、嫌だなと思っていたのですが、誤食で蕁麻疹の他、呼吸困難、チアノーゼも見られる程の重い症状が見られました。
長年診ている2人の患者さんがたまたま同じ小学校に通っているのです。昨日も言ったように、別のアナフィラキシーの既往のある児童2名が通う2校の先生方も集結してくださり、会場は大勢の学校職員の方々にお集まり頂きました。
私が上越市に開院前に柏崎市内の病院に勤務していたこともあり、今回対象となった4人の患者さんのうち、3人は以前から私が診ていたということになります。もう1人も3年程の付き合いがあります。
そのうち2人は卵は完全除去になっています。食物アレルギーに詳しくないと、検査の数値が高いからという理由で完全除去を指示している場合がよくあります。最近の食物アレルギーの対応は「必要最小限の除去」が基本です。
例えば、茶碗蒸しを食べてアナフィラキシーを起こしたとします。つまり、“濃い”食品で症状が出てしまっても、“薄い”食品は食べられることがあります。ビスケットやパンに含まれるような微量の卵成分を許容していれば、それは食べてもいいという判断につながります。“濃い”ものだけ除去していれば、良い訳です。それが「必要最小限」という意味です。
最近は、患者さんの方も良くならなければ「医者を代える」という選択肢があることを知っています。つまり、医者の知識や技術が一緒ではないことをご存知なのだと思います。もしかしたら、私の「卵を完全除去してください」という指示がオーバーなもので、本当はそこまでする必要がないと思ってもらっても困ります。本当に重症だからです。
今回の話では、私のこの春に書いたアレルギー診断書が「いかに適正であるか」ということを理解して頂こうと思いました。本当の重症さを分かってもらわなければ、緊張感も薄れてしまい、誤食も起こりやすくなります。
ちなみに、そのうちの1人は仕出し弁当でアナフィラキシーを起こしています。親御さんも、非専門の小児科医よりは食物アレルギーの知識をお持ちなくらいですから、普段はアレルギー症状は起こしていません。気をつけていたにもかかわらず、アナフィラキシーが起こってしまったのです。
その時は理由は分かりませんでしたが、かなりの確率を持ってこういうことだったのだと思います。弁当にカボチャの煮付けが入っていました。その隣には、卵焼きが入っていたそうです。もちろん、卵は完全除去中ですから、卵焼きは食べなかったのですが、隣り合わせになっていたカボチャに卵の成分が付着していたようです。こういうエピソードを話せば、重症感は伝わります。
この4人の患者さんだけで、「食物負荷試験」は合計20回は越えていそうです。何か食べられるものはないかと、頃合いを見ては食べさせる努力は続けてきました。他のアレルゲンに関しては、かろうじて食べられたこともありましたが、卵に関していえば、何度試みても蕁麻疹などの症状が出て、食べられないことを確認しています。
今回の話で「食物負荷試験」という検査があることを力説しました。検査の存在自体をご存知でない方も多いからです。その負荷試験の技術を駆使して、何度実施しても卵という“壁”に行く手を遮られています。
多分、私の努力は先生方に伝わったと思っています。その結果、卵の完全除去という判断が下されていることはご理解頂けたと思います。理解不足から来る、つまらない誤食は減るものと信じています。
話の後半は、いつものエピペンをどういうタイミングで打つべきか、どのように使うかの話をしました。中には「エピペンの使い方だけ知りたい。それだけで十分。」と言う先生もいたのかもしれません。でもそれでは不十分だと思ったし、ましてや、場合によっては6年以上の付き合いがあり、負荷試験を積極的に行ない、ある意味、苦楽をともにしてきました。上越まで通って、何で地元じゃダメなんだろうとお思いの方もいたと思います。医療は信頼関係が一番大切だと考えています。
エピペンの使い方を知るのが目的の研修会ではありましたが、食物アレルギーの最新の考え方のほかに、粘り強く食べられるものを探していく診療の仕方、親御さんとの関わり方なども伝わったら、成功と言っていいのではないかと思っています。


