いきなりですが、私は収入を上げようと思って開業医になった訳ではありません。
前勤務先の病院で「アレルギー外来」を立ち上げたのですが、その枠では足りなくなり、アレルギーで困っている子ども達を十分に診ることができづらくなってきました。
専門医に巡り会えず、過小診断や過小治療で改善せず、困り果てている患者さんを適切に診断し、治療することで、症状が改善していく姿を見て、“自分の生きる道”だと実感しました。ただ、与えられた枠の関係で、十分な対応ができなくなり、自分の中では閉塞感を感じていました。
私は、開業思考はあまりなかったのですが、ふと「開業したら、毎日アレルギー外来ができるんだ」と思った途端、「これしかない」と思いました。
周りを見てみても、小児科医は40歳を過ぎて開業を決意される先生が多いようです。それは、小児科医として十分トレーニングを受け、長い年月一般診療を経験した上で、「そろそろ一人でもやれる」と思えるようになって思い立つようです。
開業医は、基本的には医院に医師が一人しかいませんから、誰も頼れません。責任のある医療を提供するには、十分な経験が必要でしょう。だから、30代前半のような若い開業医はまずお目にかかれないのです。
当時、ちょうど私も40代前半で、一般診療もそれなりにできるかなと思い始めたところで、逆に手に負えなければ、その道の専門医に紹介すればいいと思っていましたし、着々と準備をした上で、4年半前に開業の日を迎えたことを昨日のことのように思い出します。
今の日本の医療システムは、とにかく大勢診た方が利益が上がります。同業者のことは、よく分かっているつもりです。一生懸命やっている小児科の先生も知っていますが、効率重視で、診察室に入ったと思ったら、もう出されているみたいなスタイルを取っている医院さんもあり、スピードを重視するあまり誤診の多い医師もいなくはありません。残念ながら、これでは本末転倒としか言えません。
私の開業の目的が、収入を上げることや、無責任に大勢診るということではなかったのですが、ふと振り返ると、当院も大勢の患者さんが受診して下さるようになりました。一生懸命やれば、当然信頼を寄せて下さる患者さんも増えます。土曜だけで100人近くの受診があったり、先週も午前中はいつもより患者さんが少ないなと思ったら、午後だけで100人に迫る受診があったりと、猫の手も借りたい程です。
最初は素晴らしい志で開業しても、徐々に方針が変わってしまう医院さんもあることでしょう。私はそうはなりたくないのです。
よその小児科さんがどうなのかはよく分かりませんが、「ちょっと鼻が出ました」という患者さんは結構いるのかもしれませんが、当院ではほとんどいません。受診のほぼ全員がアレルギーがあり、「慢性疾患」の患者さんです。
ただ、そういうお子さんが熱が出たり、吐いたりして、いわゆる「急性疾患」で受診されることもあります。風邪を引くことで、ぜんそくがあれば、発作を起こしたり、アトピー性皮膚炎があれば皮疹が悪化したりすることもあるのです。ですから、丁寧な診察は欠かせず、時間は取られます。
先日、ふと開院当初の目的が実現できているか確認してみたくなりました。それを調べるのは難しいですが、どうしたらいいかと考えました。ちょっと乱暴かもしれませんが、受診番号が若ければ、開院当初から来て下さっている患者さんと言えるでしょう。開院当時は近隣の小児科さんからアレルギーの患者さんがごっそり移ってこられましたので、若い番号が少なければ、どうしようと思っていました(汗)。
当院の患者番号は1001番から始まりますが、ある日の患者番号別の比率は1000番台が10%、2000番台が10%、3000番台が10%、4000番台が10%、5000番台が25%、6000番台が15%、それ以降が20%でした。
急性疾患を診ている小児科さんの比率が分かりませんが、子どもは乳幼児期は風邪を引きやすく、その後は体も丈夫になってくることを考えると、当院の比率とは少し異なっているのだろうと思っています。それなりに若い番号から最近のものまで散らばっている印象です。
いずれにしても、当院でアレルギーの患者さんを全部診られる訳もありません。重症な患者さんはアレルギーの専門医が診るべきですが、患者さんは医師の実力の差を把握していない方もまだまだ多いようです。アレルギーの子どもを責任を持って診続けることも大切ですが、非専門医が対応できないような重めの患者さんに当院に来て頂けるようにしたいと思ってます。同業者からまず紹介してもらえませんので、知名度も上げなければなりません。
開院当時の気持ちと微塵も変わっていないつもりですが、自分の開業小児科医としての理想を追い求め続けるために、「いま、自分は何をやっているのか」を振り返りながら、反省すべきは反省し、前に進んでいきたいと思っています。


