先日、発熱の患者さんが当院を初めて受診されました。
実は、数日前に他の医療機関を受診していました。採血した結果、CRPという炎症反応の数値が上がっておらず、「風邪ではないか」と言われたそうです。このCRPは細菌感染の時に、病気の勢いが強ければ強い程、数値が上がり、ウィルス感染の時は健康の人とさほど変わらないという値を取ります。
処方は解熱剤のみが出されたそうですが、その後も熱が下がらず、心配になって当院を受診されました。親御さんとしては、問診や診察もあっさり終わり、解熱剤だけ出されたことに不安はあったようですが、とても若い先生だったことも不安視していたようです。
ただ、これは結果論であって、熱がじきに下がってしまえば、親御さんも「適確に診断、治療された」と捉えることでしょう。
当院の場合、アレルギーでもそうでなくても、患者さんが治ることに重点を置いているつもりです。風邪や軽い胃腸炎なら「すんなり治ったら、来なくていいよ」と言っています。
治ったかどうか確認したいという医師もいるかもしれませんが、多くの親御さんが、所詮風邪ならばとりあえず薬をもらって、様子をみたいというのが本音だと思っています。私自身も治った患者さんをまた来させて、それこそ新たに風邪でももらってしまったら困るし、私も親御さんもお互い時間の無駄ですから、“治ったら来ない”ということを方針にしています。
ただ、症状が改善しなければ、風邪と診断した私が判断ミスをしている可能性も出てきます。それは私に責任がありますから、「治らなかったら教えて下さい」と言うようにしています。
先ほどの患者さんも本当なら、その先生に「治らないんですけど」と言って再診欲しかったと思います。ただ、その先生が若いことは悪いことではないし、当たり前のことですが、誰だって駆け出しの頃は若いものです。診療内容に例えば説明が少ないとか、何らかの不安を感じてしまったのなら、医療機関を代えるという選択肢は「あり」だと思います。
知人から当院の評判を聞き、受診しようと思っていたそうで、それなら尚更気合いが入ります(笑)。地元の医療は、往々にして話の聞き方、説明が足りないと思っています。今回、受診されて話を聞くと、ぜんそくが見逃されていました。それは今回の先生ではなく、もっと小さい頃から診ていた医師がぜんそくを捉えられていなかったのです。
ぜんそくだけなら、咳が長引くのですが、熱も続いています。巷には肺炎の患者さんも時々見受けられます。熱が続き、咳もひどければ肺炎も疑える状況です。聴診で分からない肺炎もありますが、見逃しがないようお子さんに思い切り深呼吸してもらい、肺の音をよく聴いてみました。
そうしたら、右の胸に変な音が聴こえます。ぜんそくの発作時の音とは明らかに性質の異なる音がです。「こりゃ、肺炎があるかも」そう思いました。レントゲンを撮ってみると、案の定、右の胸に肺炎像を認めました。
当院を受診された目的は、熱と咳です。原因は、肺炎と見逃されていたぜんそくと考えられました。その辺をじっくり説明すると、納得して頂けたようでした。親御さんは、前の先生の“若さ”に不安を持っていました。それで当院に来られたとなると、私も若くなくなったのかなと思ったりします(汗)。
ぜんそくを見極めるのは、専門医でなければ難しかっただろうと思います。ただ、「熱が下がらない」と若い先生の元を再診していたら、レントゲンくらいは撮ったかもしれず、肺炎は診断できていたかもしれません。
実際、前の先生の調べた炎症反応が上がらない肺炎もあり、そもそも最初に受診した時には肺炎になっていなかった可能性もあり、解熱剤だけ出されたという対応は間違ってはいないと思います。
今回は、お子さんが熱が続くことが心配で、「ベテランの医師に診てもらおう」と受診されました。では、年季の入った医師だと見逃しが少ないのでしょうか?。
同じ日に当院を痒い皮疹で受診された赤ちゃんがいました。私も知っていますが、2人の小児科医に診てもらっていました。しかし、典型的なアトピー性皮膚炎なのに見逃されていました。ぜんそくも適確に診断もされていませんでした。ちなみに2人とも、私よりは年上の先生で、それこそベテランの域に達しています。
私が専門のアレルギーについて言えば、私のよく言うガイドラインがさまざまな病気に関して作成されているのは、比較的最近のことですから、逆にベテランの先生の方がご存知ないことの方が多いくらいです。開業してからだと、日々の診療に忙殺されて、改めてガイドラインを学ぶ余裕もなかったりするからでしょう。
実際、最近は開業医でもホームページで自院の宣伝をすることもありますが、ベテランで、内容が豊富と思われていても、ガイドラインの「ガ」の字も出てこない医院さんもあり、逆に根拠のある医療が行なわれていなかったりします。ぜんそくをマイコプラズマなどと診断されているのです。
食物アレルギーの診療に「食物負荷試験」は欠かせないと言われますが、県内ではベテランの医師の多くが実施していません。県内の数少ない専門医に紹介することも、ないようです。逆に若い先生の方が、当院のことを患者さんに言ってくれたりしています。敢えて言えば、ベテランの医師の方がこれまでアレルギー検査の数値だけで「食べてはいけない」と患者さんに指示しており、「食べさせてあげたい」という気持ちが希薄になっているケースすらあるように感じています。
残念ながら、年配の小児科医だから何でも知っている訳ではないでしょうし、若いから信用できないという考えもちょっと違うと思っています。若くても、学会に参加して真面目に勉強している先生は、レベルの高い知識を持っている人もおり、結局は医師が目の前の患者さんにいかに情熱と責任を持ち、適確に診療したいと思うかが最も大事なことだろうと思っています。
ベテランだから大丈夫、若いから不安とは必ずしも言えないことを覚えておいて頂きたいと思っています。


