小児科 すこやかアレルギークリニック

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「インタール」という薬
2012年07月23日 更新

先週末の土曜に診療が終わったあと、N市に車を走らせました。

N市を訪れるのは、先月から早いもので3回目になります。21日も保育園での食物アレルギーの対応について理解を深める勉強会の講師を依頼されていました。

高速を使っても1時間くらいはかかりますし、決して近くはない距離です。しかし、そんな距離でも当院に通ってくださっている患者さんは多いのです。自分の診ている患者さんを守るためには、自分からその園に出向いて説明する必要があります。

その地区は食物アレルギーの専門医がいないため、今回伺った園の園長先生が周囲の園の先生方にも声をかけてくださり、総勢80人ほど集まってくださったようです。有り難いことですし、それだけ正しい情報を欲している人々が多いことを意味しています。

開始時間よりも早く着いてしまったので、園長室で園長先生と話をしたのですが、その中で、私の診ている患者さんの他に食物アレルギーの患者さんがいるそうで「インタール」という薬の名前が出ました。

それを聞いて「えっ」と思いました。この薬は、専門医がほとんど使わない薬だからです。よくよく話を聞いてみると、やはり専門医でない小児科医が処方していました。

ちなみに、当院ではこの「インタール」という薬は誰一人として処方していません。当院は新潟県ではトップクラスに食物アレルギーの患者さんを診ているはずです。「食物負荷試験」も県内では一番多くやっているのは間違いないでしょう。もし食物アレルギーでよく使われる薬なら、当院が一番たくさん処方しているはずです。

「インタール」という薬は、今回の処方について言えば“誤使用”だと思います。アレルギー検査が陽性の食品が複数あり、だから食前の飲むよう指導されていました。全国的にも「インタール」という薬を処方されている患者さんは、まだいると思いますが、多分その多くが非専門医によるものだと思います。

そもそも、保険適応は食物アレルギーがアトピー性皮膚炎を悪化させている場合にのみ使ってもいいことになっており、アトピーは落ち着いてきているそうです。ですから、“誤使用”ということになります。

私は、乳児でアトピー性皮膚炎の悪化要因が食物アレルギーによるだろうと思っても、特定できない場合に、やむを得ずにこの薬を使ったことがあります。保育園児には、まず使う薬ではないと認識しています。

この「インタール」の使用法は、食前20分前に飲ませ、それから食事を摂らせます。お腹の減ったお子さんをなだめながら、20分待たせてようやく食事を摂れます。それが1日3回、365日続きます。インタールを気安く処方する医師に、「自分のお子さんにやってみたらどうですか」と言いたくもなります。そういう親御さんの気苦労を考えると、処方をためらうような類いの薬だと思っています。

私の認識では、いつも言っているようにアレルギー検査の数値が高くても、「食物負荷試験」をやれば、食べられるケースは少なくありません。もしかしたらですよ、除去している複数の食品の負荷試験をして、どれも食べられたとしたら、飲ませる必要のない薬を、食前の20分前に毎回毎回苦労しながらのませていることになります。これは「治療」ではなく、患者さんに多大な迷惑をかけていることになります。医師としてはやってはいけないことでしょう。

ガイドラインをみると、複数のアレルゲンがある場合は、専門に紹介すると書かれています。残念ながら、専門でない先生はこういうことすらご存知でないのでしょう。

では専門医ならどうするか?。「食物負荷試験」をやって食べられるもの、食べられないものを明らかにする努力をし、解除できるものは解除し、除去すべきものをハッキリさせます。避けるべき「敵」が分かれば、それに注意していればいいので、「インタール」という薬を飲む必要がなくなると思いませんか?。

決して悪い先生ではないと思うのですが、私から言わせれば、必要な患者さんを専門医に紹介しない、飲ませ続ける必要があるのか検討されていないなどの行いは褒められたものではありません。

風邪薬なら、ほんの一時的に食後に飲ませるだけです。それが「インタール」になると、永年、食事の20分前に飲ませ続けられています。“誤使用”された場合は、本当に「罪作り」な薬だと思います。いや、敢えて言えば、「罪作り」なのは医師の方でしょう。

他のアレルギー専門の先生のホームページにも「インタール」はかなり使用が限定的であると書かれています。誰も医師がハッキリ言わないから、こういう行為が繰り返されています。親御さんのこれまでかけてきた労力や、計り知れないものがあるでしょう。

これをお読みの親御さんや園関係者の方は、現在使われている「インタール」の使い方が適切かどうか考えてみる必要があります。私の認識では、アレルギー専門医ほど使っていない薬だと思います。

先日、このN市から当院に通い始めた食物アレルギーの患者さんが、これまでの「除去、除去」という指導から一転して「食物負荷試験」を行なうことで、卵のアレルギー検査が高値にもかかわらず、卵の除去を解除されたと書きました。非専門の主治医にかかり続けていれば、今もなお「除去、除去」という食生活を送っていたことでしょう。

残念ながら、専門でない医師は「正しい」と信じて「除去、除去」と言い続けたり、「インタール」という薬を処方することが多いのです。ただこの考え方は、10年以上前の指導と言えます。これも敢えて言えば、医師の知識が10年前から止まっていることを指します。

今回の文章を読んでピンときた方は、すぐさま多少遠くてもアレルギー専門医にかかり、適切な、無駄に苦労することのない医療を受けられるように希望しています。