講演ラッシュで忙しく、まだ予定が入っています。
しかし、これだけの頻度で講演に行っていると、何が本業か分からなくなりそうですが、私の本業は小児科の診療です(汗)。
夏風邪や咳の患者さんが多く、毎日仕事が終わる頃にはグッタリしてしまいます。診療の中に「食物負荷試験」も含まれます。負荷試験は、手間もかかるし、時間もかかるので、多くの医療機関が実施していません。小児科医は、子どものすこやかな成長を願うのが仕事なので、「あれもダメ、これも食べちゃいけない」と言うべきではありません。
最近は、根拠のある医療をしなければならないと言われていますが、食物アレルギーに関しては「食物負荷試験」なくして根拠のある医療はできない、という例を挙げたいと思います。
「果物でアレルギーを起こすの?」って方も多いと思いますが、頻度は決して少なくありません。中にはショックを起こすケースすらあります。
果物アレルギーには、2種類あります。ひとつは、卵や牛乳のように小さい頃から発症するタイプです。もうひとつは、花粉症絡みで発症するタイプです。花粉症を発症することで、その花粉と似た構造を持つ果物に弱い体質になってしまうタイプです。有名なのは、シラカバ花粉とリンゴの構造が似ているために、特に北海道などシラカバの多い地域の人は、徐々にシラカバの花粉に対し花粉症を発症してしまいます。その後に、これまで食べられていたリンゴが食べられなくなるという形で見られます。
前者は、バナナやキウイが多いようです。後者は、果物に限らず、野菜でも起こします。
ある幼児の患者さんは、1歳時にキウイでアレルギー症状があり、キウイアレルギーと診断されていました。その患者さんは、新潟県内では珍しくプリックテストが施行されていました。腕に卵や乳のアレルゲンエキスを1滴たらし、そこを小針で傷つけると、傷からエキスが染み込み、もしアレルギーがあれば蚊に刺されたように腫れるという検査です。
果物の場合、既製品のエキスはないため、果物そのものを使います。つまり、キウイの果肉を小針で突っつき、針先に果汁をつけて、それで皮膚を傷つけるのです。果物アレルギーの場合、アレルギー検査は陰性のこともあり、このプリックテストは有効性が高いとされます。
この患者さんは、前医からは卵や牛乳を除去するように指示されていました。アレルギー検査も陽性ですし、確かに気をつける必要はありますが、除去し続ける根拠はないのです。当院でこれらの「食物負荷試験」を実施し、実際に食べても何ともないため、解除しています。
これも当院への紹介状があれば、「負荷試験により解除しました」と返事を書けます。それがないので、前医へのフィードバックが何もないのです。残念ながら、その医師は、アレルギー検査の数値だけで「食べてはいけない」とこれからもずっつ言い続けることになります。これでは、医師も学べず進歩がない、患者さんにも迷惑がかかると、何もいいことがありません。
当院で負荷試験を受けることで、親御さん自身が、普通の小児科医よりも「アレルギー検査が陽性でも食べられることがある」ということを知ってしまったので、今度は以前、症状の出たキウイを食べられるか白黒を付けようということになりました。
キウイはアナフィラキシーを起こすこともあり、私自身も不用意に負荷試験はできません。ちなみに、この患者さんはアレルギー検査もキウイは中等度に陽性です。先ほど述べたプリックテストをやると、やはり腫れます。
この患者さんは、前医でキウイでプリックテストが実施されており、陽性と診断されていました。通常なら、「キウイアレルギーなので、食べてはいけない」と説明されるでしょう。ただ、可能性は高くても「食べてはいけない」と言い切る根拠はないのです。
その結果を踏まえても、慎重に負荷試験をやることにしました。ほんの少し食べてもらいます。何も起きません。量を少しずつ増やしていきます。何も起きません。最終的に、キウイ1個の半分を食べてしまいました。
乳児期に発症した果物アレルギーは治る可能性もあると言われています。一方、幼児期以降でも症状が見られる場合は、治るのは困難とされます。この患者さんの場合、治ったと言っていいのかどうか、まだハッキリとは言えませんが、家で繰り返し食べてもらい、何も起きなければ治ったと言えるのだろうと思っています。
結局、医師は患者さんから診療を通して学ばせて頂いています。例えば、ピーナッツは重篤な症状を起こすため、検査が陽性なら「一生食べられない」と言っている医師がほとんどだと思いますが、私の経験からもアレルギー検査がクラス2や3くらいでも、負荷試験をして食べられることを証明したケースもあります。
果物アレルギーは、アレルギー検査が陽性であっても、またプリックテストという皮膚テストが陽性であっても「食べられない」と断定してはいけないことを明らかにできたと思っています。
「食べられない」と思い込んでいると、いつまで経っても食べられないことになります。夏休みでもあり、学校を休む必要がないため、果物アレルギーの方も受診して頂ければ相談に乗りたいと思っています。


