地元で診療していると、医療のレベルってこんなにも違うものかと驚きます。
私はアレルギーの専門病院で学び、日本アレルギー学会認定の専門医の資格も持っています。当然のことながら、専門でない先生よりはいろいろな“引き出し”を持っているつもりです。
それが5年経って徐々に浸透してきて、他院にかかっても良くならなければ当院を受診されるケースが多いのですが、あまりのぜんそくやアトピー性皮膚炎の誤診の多さに驚いています。「医師ってこんなにも努力しないものなのか」と思ってしまいます。
あまり言いたくないのですが、通院して症状が改善しなければ、医師の実力を疑うことも大切です。いつも言うように、ガイドラインに沿って治療すれば、めきめきと改善することがほとんどです。
先日、ある患者さんが当院を初診されました。「アドエア」という薬が出されていました。以前も解説したことがあるのですが、「フルタイド」という吸入ステロイド薬と「セレベント」という長時間作動型の気管支拡張薬を混ぜた吸入薬です。ぜんそくの治療は、他の吸入薬もあるのですが、よく使われる薬という意味で、重ければ「フルタイド」を使い、更に重ければ「アドエア」に変更すると思って頂いても構わないと思います。ただ、確認しておきたいのはぜんそく自体が重症な人に使うというのが条件です。
その患者さんは、咳が長引くということで「キプレス」という内服薬が出ていました。ぜんそくはゼーゼーを繰り返すのが、病気の定義です。ゼーゼーしたことがないそうで、つまり、ぜんそくとは診断できないということになります。
風邪を引いて咳が悪化したという理由で、「これを吸いなさい」と言われ、先ほど述べた「アドエア」が出されたそうです。「私がガイドラインに沿った治療をしている」ともおっしゃったそうです。
それを聞いて「あちゃー」と思いました。ぜんそくと診断できないお子さんに、ぜんそくの最重症な患者さんに使う薬が処方されていたからです。残念ながら、ぜんそくのガイドラインには、そういうことは載っていないのです。
私はガイドラインを作った側の先生のもとで研修させて頂き、トレーニングを受けてきました。来る日も来る日もぜんそくの重症患者さんの診療を行なってきましたので、治療法が“染み付いている”と言ったら言い過ぎかもしれませんが、ガイドラインに沿わない治療をされている患者さんを見ると、とても違和感を覚えます。
先の患者さんはアドエアをずっと続けるように言われたそうですが、ぜんそくとも診断できないので、中止して経過を見るように説明しました。その患者さんが今後ぜんそくと診断が付き、アドエアが使われるようになるかは分かりませんが、現時点ではガイドラインからズレているので、止めるのが筋です。
どうして同じガイドラインを見ていて、言っていることが異なるのか、患者さんからすれば不思議でしょう。
また、先日、日光蕁麻疹と思われる患者さんが受診された時に、色々聞いているとぜんそくがあるようです。この患者さんも某小児科で少し前のことですが「アドエア」が出されていたようです。この患者さんは、医師からずっと続けるように言われていなかったため、症状が落ち着くとアドエアの吸入を止めていたそうです。
この患者さん、話を聞くと今でも運動すると息切れがするのだそうです。運動誘発ぜんそくが残っているようです。運動誘発ぜんそくは、ぜんそくの重症度に比例することが多く、ぜんそくが治っていないことを表しています。
「肺機能検査」をやってみました。上越の小児科では、当院しかやっていない検査ですが、呼吸機能が数値で解る優れものです。そうしたら、ぜんそくの悪さを象徴する項目が57点しかありませんでした。その日はぜんそく発作を起こして受診された訳ではなく、蕁麻疹の相談でした。ぜんそくのため、気管支が相当ダメージを受けていることを物語っていました。
ぜんそくのガイドラインには、「肺機能検査」が正常であることも大事なポイントであると書かれています。増してや、運動しても日常生活で症状が出ないように治療するとも明記されています。
肺機能検査は、園児だとできませんが、小学生も中学年以上なら簡単に検査できます。この患者さんは、「肺機能検査」をやっていれば、異常が見つかったはずで、もっと早く適切な治療ができたはずです。ガイドラインに沿った対応がされていないのは、明らかです。
この患者さんは、気管支が荒れて狭くなっているので、まさに「アドエア」を使い、気管支をこじ開ける治療が必要だったのです。治療が遅れた分、運動誘発ぜんそくなどの症状を繰り返していた訳で、気の毒なことをしました。
今回のように「ガイドラインに沿っている」なんて安易なことは言って欲しくないと思っています。患者さんは素人で病気の判断はできず、医師の言うことに従うしかありませんから、特に開業医の場合は、医師がそう言えばそうなってしまうのです。間違ったことを言えば、ことは間違った方向に進んでしまいます。
責任が重大なのに、医師がそのことにすら気付いていない…。「医療」って怖いと思います。
その一方で、自分の医院のホームページにガイドラインの「ガ」の字も出てこない医院さんもあります。当院に逃げてこられた患者さんは数えきれない程いますが、一人としてぜんそくと正しく診断され、適切に治療されていたことはないのです。これも驚くべきことです。風邪とかマイコプラズマとか言われているのです。
これで「アレルギー科」を名乗っていようものなら、被害は甚大です。でも「アレルギー科」は自由に名乗っていいことになっており、何の疑いもなく通っている患者さんも多いようです。つくづくも「医療」って本当に怖いものだと思います。たまに患者さんにも言っているのですが、私自身が相当に医療不信に陥っています。
診断や治療が間違っていれば症状が良くならないのは、当たり前としか言いようがありません。良くなっていないのに、専門医に紹介がない、これが上越の問題点でしょう。患者さんにとってそんな不利な“慣習があるようです。
中には難しいケースがあるかもしれませんが、多くの患者さんを私が診れば、運動誘発ぜんそくや夜間の救急受診を減らせるでしょうし、無駄な治療もしませんから、医療費は相当削減できると思っています。
現実問題として難しいことかもしれませんが、地元のおかしな「医療」を受けているアレルギーの患者さん全てを救いたいと思っています。


