小児科 すこやかアレルギークリニック

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20年 VS なし
2012年09月20日 更新

昨日は、市内の園にエピペンの話をしに行ってきました。

新潟県は食物アレルギーの後進県だと思っています。食物アレルギーの専門医が極めて少なく、アナフィラキシーを起こしエピペンが処方されなければいけない患者さんに処方すらされていません。

最近は、わずかながら処方する医師もいるようですが、出しっ放しはいけません。エピペンの打ち方はもちろん、どのタイミングで打たなければいけないか、もしくはどの状況で打たなくていいか、などを親御さんだけでなく、エピペンを預からなければいけない園や学校も知っていなければなりません。一部の校長や園長、養護教諭が知っていても、そういった人達が不在の時にアナフィラキシーが起こったら、何もできないことになってしまいます。

全国的には、エピペンを処方された園や学校に専門医が出向いて、エピペンの打ち方の実践的トレーニングをするという講習会が行われてきています。県内だと、消防隊員が指導するケースもあるようですが、本当は小児科医がやるべきでしょう。なぜなら、打ち方よりも、打つタイミングが重要だからです。

今年は県内各地に出向いて、こういう話をしてきました。上越、中越はもちろん、下越まで足を伸ばすこともありました。多くの医師がそこまでしませんが、エピペンを持っている患者さんのいる園や学校は、責任重大です。養護の先生以外は“素人”なのに、最悪のケース、打つことを求められているからです。

園や学校職員全員が打ち方を知っておく必要がありますが、職員全員が医院に来るなんてことはまず不可能でしょう。となると、患者さんを守るために、私が園や学校に出向くほかないと言えます。いや、「患者さんを守るために、こういう時に使って下さい」とお願いにいくのが本来の姿でしょう。

私がエピペンを処方している患者さんは、上越市、妙高市、柏崎市、刈羽村とやはり地元の近隣のことが多いです。長岡市、新潟市、魚沼市にもいます。昨年から今年にかけて、私がエピペンを処方しているほぼ全員の園や学校に行ったと思っています。

昨日もその一環だった訳ですが、以前から「行きますよ」と言っておいたのが、ようやく実現したのです。

いつも、こういう話をする時は前半に食物アレルギーの考え方をお話ししています。多くの医師がアレルギー検査のみで「除去しなさい」と言っており、それが誤った判断につながっていることが多いことを説明しています。「食物負荷試験」をしない医師は、そういう検査の存在を知ってもらうと困るのでしょう。検査の存在を患者さんに教えないのはフェアーではないのです。まだまだ医療は、自分の都合の悪いことは表に出さないという部分があります。

後半は、誘発された症状が軽ければ内服薬、それでもダメならエピペンという対処の仕方を説明します。いつも好評なのが、練習用のエピペンを実際に手に取って、打つべき太ももに押し当てるシュミレーションをしてもらうことです。

エピペンを預かるよう依頼があれば、園や学校は厚労省や文科省の方針のため、断れないことになっています。無理解から強引に断る園や学校もまだまだあるでしょうが、少し勉強していて良心的なところでは「最近は預からないといけない」と預かりを引き受けて下さいます。預かってはみたものの、使い方が分からないのが実情で、それを学ぶ機会もないのです。だから、医師側が努力してそういう機会を作らなければならないと思っています。

昨日、ひと通り説明が終わったところで、園長が締めの言葉として、ご自分の体験談を話し始めました。ソバを大好きだったお子さんが、ある日ソバを食べて嘔吐したのだそうです。翌日、かかりつけの小児科に行ったら、「ソバアレルギーなので、向こう20年は食べないように」、「他に美味しいものがあるので、ソバなんて食べなくていいでしょう」とも言われたそうです。

園長先生が、親御さんからのそういった報告を受け、その子がソバが大好きだったこともあり、あまりに根拠に欠けるような指導に納得がいかず、当院の受診を勧めて下さったそうです。そこで当院が出てきたのです。私にしてみれば、予想外のところで私の話しが出てきて、一瞬焦りました(汗)。

似たようなケースは時々あるため、そんなこともあったかなという程度の記憶で、私はなんて指導したか覚えていません。ドキドキしながら話を聞いていると、私がソバアレルギーでないことを証明して、今ではなに不自由なくソバを食べているのだそうです。それを聞いて、ホッとしました(笑)。

食物アレルギーを詳しくもないのに、知ったかぶりをする医師が少なくないことに、いつもガッカリさせられます。このケースも日頃から大好きで食べていたので、「おかしいな」と思う態度が必要でした。そうするのが医師の役目なのに、園長先生はさすがと言えます。いや、医師が情けないと言えるでしょう。

先日もお話しした通り、卵焼きを食べているお子さんが、ラーメンを食べて蕁麻疹が出ただけで、「卵を3年間除去しなさい」と言った小児科医がいました。食物アレルギーを分かった人なら、「おかしい」ことに即座に気付きますし、そもそも親御さんがおかしいと思って、当院を受診されています。ソバの指導をした医師と同じ小児科医だった気がしますが、いまだに同じような指導をしているようです。

知ったかぶりな指導をして、自分の評価を下げることは、口コミで広がりますし、少子化のすすむ状況では、小児科医として生き残っていけないと思います。最近は、園の先生が「医者を代えた方がいい」とアドバイスもしてくれます。「壁に耳あり、障子に目あり」じゃないですが、日頃からこんな医療をやっていると、「あの医院はいい加減だ」という噂が広まってしまうことでしょう。

園長先生は、当院が地元になければ受診を勧めることはできなかったとおっしゃっていました。そういう意味では、地元のレベルを上げることに一役買っているのかなと思いました。ただし、たまたま医師の言うことを冷静にみる園長の目に留まったから良かったものの、当院を受診されなければ、大した根拠もなく20年も除去し続けることになったことでしょう。除去なしとは、雲泥の差です。

私はこういういい加減な対応を、医療とは言いたくありません。“医療”とは怖いものだと思いましたし、我々小児科医は知らないうちに「見られて、評価されている」と感じました。