秋の深まりとともに、ぜんそくの調子の悪いお子さんが増えてきました。
というと、外来はゼーゼー言うぜんそくの患者さんが多く、点滴をしているイメージがあるかもしれませんが、当院では一人も点滴はしていません。
当然「えっ!?」ってことになると思うのですが、ぜんそくがある程度重いと判断され、日頃からキチンと治療していれば、秋が深まろうが大崩れはしません。ここ最近も「調子いいです」と言って、定期通院して薬を処方しているケースが多いのです。
どちらかというと、軽くて予防的な治療をしていないお子さんが咳き込んだり、ゼーゼー言ったりするのですが、そこまで重い発作には至っていないようです。「点滴をしていない」のはそういうことです。
極めて重いお子さんは例外でしょうが、時々「点滴をしてもらっている」という患者さんは治療が適切でない可能性を考えなければなりません。
他院で治療しても良くらないと当院に相談に来られるケースでは、明らかなぜんそくなのに、ぜんそくと診断されておらず、風邪薬しか出されていなかったり、ぜんそくが過小治療で、それが故に発作を起こし、点滴を繰り返しているケースもあります。点滴を繰り返せば、診断や治療を見直すべきなのに、それすらされていなかったりします。
普段、食物アレルギーの話をすることが多いのですが、ぜんそくも語りたいことが沢山あります。結局、“一番の薬”は「医者を代える」ことだったりして、私も患者さんもガッカリすることが結構あります。医師は、患者さんの症状を良くするために診療している訳ですから、自分が治療しても良くならなければ、専門医に紹介するということが常識なのです。まずそんなこともありません。モラルにも問題がありそうです。
ということで、最近はぜんそくやぜんそく予備軍の患者さんがとても多く、外来は混雑しています。そんな中、市内のある保育園に通う患者さんの親御さんから「アレルギー症状が出たので、すぐにそちらに向かいます」という連絡を頂きました。
名前を聞くと、エピペンも処方しているような重い食物アレルギーのお子さんです。「大丈夫かな」とこちらにも緊張が走ります。
しばらくして、受診がありました。診療の手を止めて顔を見に行ったのですが、緊急事態ではなさそうです。つまり、顔の蕁麻疹もまばらで、呼吸困難もありません。機嫌も悪くありません。悪い状態なら、エピペンだ、酸素だ、点滴だと大騒ぎになったはずです。
ちなみに、昨日、大人のアナフィラキシーの勉強中だと書きましたが、こういう記述がありました。「アナフィラキシーショックでは、循環血液量の35~50%が最初の10分で血管外に漏出する」、のだそうです。つまり、重度の脱水になるので、生命を維持するために大量な点滴が必要になるのです。ショックまで至っていなくても、多かれ少なかれ脱水は避けられず、点滴が必要なことが多いと思います。
まず、どういう状況だったかを問診することになります。牛乳アレルギーでアナフィラキシーの既往もあるのですが、これには気をつけていたため、これまで食べていたものを食べていたそうです。結局、私の力不足か、今回の症状の引き金はハッキリしませんでした。
これも勉強中のアナフィラキシーの本に書いてあったのですが、アナフィラキシーの約20%が原因不明とされるのだそうです。原因となりそうなエピソードがないからと言ってアナフィラキシーを否定できないとも書いてありました。
症状として、蕁麻疹が体のところどころに出て、咳も少し出たそうです。その子の通う園では、私の処方したステロイド薬を飲ませて下さっていました。親御さんの話では、園に迎えに行った時よりも悪化はしてないそうです。
聴診すると、若干痰絡みの音がしていましたので、気管支拡張薬の吸入をしました。大した脱水はなさそうで、点滴は必要なく、既に必要な内服はなされていたので、追加の内服はせずに、しばらく院内で経過をみさせて頂くことにしました。
私のやっていることとして、エピペンを処方した患者さんの通う園や学校には、できるだけ出掛けていって、職員の方々にエピペンの投与のタイミングや注射の仕方を知って頂くように心掛けています。エピペンの処方は少し前でしたが、実は先月、その子の通う園に出向き、アナフィラキシー時の対応について話していました。
確か、軽い症状用の抗ヒスタミン薬も処方していましたが、それよりは重いと判断されたのでしょう、ステロイド薬が園で投与されていました。呼吸器症状も軽く、エピペンの出番でもありませんでした。アレルギー症状をみて、投与すべき薬の種類とタイミングはどんぴしゃり、だったと思います。
院内で様子をみると、来院時にみられた症状は消失してしまいました。やれやれ、という感じです。
園は、重い食物アレルギーのお子さんを預かる以上、病気のことをある程度は知っておき、特に緊急時の対応を知っておく必要があります。その辺は、なかなか浸透せず、県内各地で必要な対応すらしてもらえず、困っている患者さんも多いことでしょう。本来、行政側が主導権を持って対応すべきなのに、その行政がこれまた理解不足で、学ぶ姿勢が足りていないところすらあります。
そういう意味では、私の地元ではある程度の水準にあるとは思っていましたが、今回の園側の適切な対応をみて、それを確認することができました。上越市でできるということは、他の市町村でも理解とやる気さえあれば、可能だと言うことを表します。
既に新潟県では、できるところとできないところで“格差”が生じています。行政の対応の遅れとも言える訳ですが、それを是正するために、今回の「すこやか健康フェア」では全市町村にも案内を出しました。参加していない行政が多かったことが新潟県の現状を表していると思っています。
本来は、個人で行政に働きかけることではないのかもしれませんが、誰から尻を叩かなければ何も変わりません。そういう意味で、今回の園の対応は、私にとっても自信になります。
焦らず、腐らず、地道にやっていくしかないということなのでしょう。


