今週は、高校に出向いてエピペンの講演をやる予定になっています。
連休だったので、ちょっとドライブに行く時間を作ったりはしましたが、家で講演のスライドを作成していました。
今年は30回以上も食物アレルギーに関する話をしていますが、そのほとんどでエピペンを話を組み入れています。それは、園や学校のアレルギー対応ガイドラインで、万が一患者さんが誤食によりアナフィラキシーを起こした場合、園や学校職員でもエピペンを投与することを認めているからです。エピペンを持った患者さんがいれば、その子の通う園や学校は職員総出で子どもの命を守らなければならないのです。
多くの園や学校が子どものために、エピペンの勉強会をしましょうともちかけると、あっという間に会を企画してくれます。現場での意識の高さを感じています。
これまでは、エピペンはマイラン製薬という小さなメーカーが扱っていました。私は、こういう勉強会に話に行く時には、いつも同じ“相棒”と一緒に出掛けることが多かったです。それはマイラン製薬の方で、エピペンの打ち方の説明が上手なので、その部分は彼にお任せしていました。それ以外の食物アレルギーの基礎知識やエピペンの打つタイミングなどについて、私が集中して話したいからという理由でした。
11月からその“相棒”と別れることになりました。エピペンは最初はメルク社が扱っていましたが、数年前にマイラン製薬に変更になりました。この11月からはファイザー製薬が取り扱うことになるそうです。マイラン製薬の“相棒”の彼とは、何度も園や学校を回りました。ちょっと淋しさを感じています。
この週末は、エピペンに関する講演の準備をしていた訳ですが、エピペンの剤形写真が必要だったので、ファイザー製薬のホームページを初めて開いてみることにしました。そうしたら、トップページに気になる記事を見つけました。
それは、食物アレルギーの子を持つ母親の87.6%がアナフィラキシーショックを起こす可能性が高いと認識せず、というアンケート調査の結果でした。気になる方はお読みください。
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_10_31.html
かいつまんで話すと、食物アレルギーでアナフィラキシーショックを起こす可能性が高いと考えている親御さんは12.4%だけで、残りの87.6%がそういった危険性を認識しておらず、しかも食物アレルギーの対応を行なっている親の44.4%が何もしていないと回答しています。更に、重篤な症状を起こした際の第一選択薬であるエピペンの存在を71.4%の保護者が知らないと答えています。
これを見て、まさに新潟県の食物アレルギー事情を反映していると感じました。多くの医師がアレルギー検査の数値だけで食べられる・食べられないの判断をしています。理由はともあれ、かかりつけ医から「食べるな」と言われれば、その日から除去する生活が始まります。
今回のアンケートにもあるように、多くの方がまさかアナフィラキシーショックを起こすなんてと考えているのでしょう。とりあえず除去していれば、何も起きないのです。何も起きないから、エピペンまでいかなくとも、抗アレルギー薬などの蕁麻疹が出た時の対処薬さえも必要ないと考えているのでしょう。
当院でかかわっている患者さんが、関東の専門病院に入院した上で、複数の食品について負荷試験を行なったそうです。数値が高く、除去していたのですが、小学生でもあり、「どこまで食べられるかを明らかにしたい」と敢えて挑戦したのですが、アナフィラキシーショックを起こしてしまいました。これまでも誤食で症状が出ていましたが、ここ数年はなかったのですが、これが現在の状況を表していることが明らかになりました。
親御さんも、正直驚かれたと思います。この方は、かかりつけ医からエピペンの処方を受けていませんでした。当院に相談に来られた時に、数年前の誤食のエピソードからエピペンは持っておくべきと考え、処方していました。更に、その子の通う小学校にも出向き、職員にエピペンの取り扱いについて説明をしていました。「キチンと対応しておいてよかった」と感じました。
かかりつけ医は、「弁当だから誤食は起きない。だからエピペンは必要ない」と判断していたようですが、私は過去の誤食の状態から、「そんな悠長なことは言っていられない」と判断しました。医師が変われば、これだけ対応が異なります。
残念ながら、このファイザー製薬のアンケート結果は、食物アレルギーを扱うことの多いのは小児科医でしょうが、その小児科医の理解不足が招いているものであると思っています。
ちなみに、私は現在、県内の某市に食物アレルギーの対応をしっかりやって欲しいと働きかけていますが、エピペンや軽い症状を抑える内服薬を園で預かっているのは、その市全体で数人と聞いています。今回のデータの食物アレルギーの対応を何もしていないが44.4%でしたが、この数値が跳ね上がり、90%以上が何もやっていないことになると思います。この市では、エピペンの存在を知らないのは、今回のデータの71.4%を優に上回ると思っています。
データはないですが、当院のある上越市や近隣の街は、某市よりは高いはずです。近隣の別の某市は、食物アレルギーの診断書の90%以上が当院からのものだそうで、そういった患者さんへはエピペンや内服薬を出していますから、今回のアンケート結果をかなり上回るデータが出ているはずです。
結局、専門医がいるかいないかによって、こういう地域格差が相当出るのが新潟県の現状であり、対応の遅れている街はそれなりの努力をしなければならないのに、全くと言っていい程やる気のない市もあり、勉強会を開催する予算も付けられないと明言しています。
新潟県の現状を知る調査をやってみて欲しい、そう感じています。それからいろんなことが分かり、どうすべきか課題も浮かび上がってくるはずです。


