小児科 すこやかアレルギークリニック

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アナフィラキシーの既往の負荷試験
2012年12月28日 更新

東京での11歳女児の給食後のアナフィラキシーショックでの死亡の報道から1週間が経ちました。

こんなことは繰り返されてはならない、そう思っています。親御さんのお気持ちを考えると、こう書くこともはばかられますが、この死を無駄にしてはいけないと思っています。

「食物アレルギーは、やっぱり怖い」、これがこの報道を聞いて専門医であろうと、非専門医であろうと、多くの保護者の方々に与えて印象だと思っています。この患者さんが、どういう医療を受けていたか分かりませんが、とても重症な牛乳アレルギーであったことだけはハッキリしています。

専門医なら、食物負荷試験でどれだけ食べられるのか(閾値)を指導されていたのだろうか、経口減感作療法の適応ではなかったかと考えるでしょうし、非専門医なら、食物アレルギーはやっぱり食べさせないのが一番と思った方が多いでしょう。

食物アレルギーは、専門医が極めて少ないため、今回の報道を受けて、多くの医師が「怖い」→「食べてはいけない」という極端な発想になってしまっては困ると思っています。昨日も触れましたが、うどんが大好物であっても、アレルギー検査で小麦の値がクラス2であっても除去を指示する小児科医もいるくらいです。これが現状です。こんなおかしな対応が助長されてしまっては、食物アレルギーの第一人者の先生方がガイドラインを普及させようとしていますが、その動きが後退してしまうのです。

食物アレルギーで「重症なら専門医に任せるべきだ」という動きになれば良いのですが、逆の方向に進んでしまうかもしれません。そういう危うさを感じています。

昨日、ある病院からミルクを飲み、アナフィラキシーショックを起こした赤ちゃんが紹介されてきました。負荷試験についても説明されていました。

専門医は、過去にアナフィラキシーショックを起こしていたとしても、子どもの食物アレルギーは治ることも期待されるため、負荷試験から逃げていられません。アレルギー検査だけ高くても、その食品を食べたことがないケースでも負荷試験の適応になります。

負荷試験をやる側からすれば、「何かあったら、オレの責任だ」と覚悟を決める必要があります。誰もやってくれないから、リスクを背負ってでもやらなければならないのです。

先の紹介されてきた牛乳アレルギーの赤ちゃんは、以前はそういうエピソードがあったにせよ、現時点ではどうかと考えると、負荷試験は避けられません。ただ、当院のように入院施設を持たない開業医だと、「負けるケンカはできない」のです。となると、当院推奨の加工品を使った負荷試験で対応しようと思っています。

先日、重めの卵アレルギーのお子さんに負荷試験を行ないました。以前、カステラを食べてアナフィラキシーを起こしたことがあり、それをきっかけにエピペンを処方したくらいですから、重症であることがご理解頂けると思います。

卵アレルギーの確認には、最終的には卵1個を使った卵焼きを使用していますが、この患者さんの場合、まずカステラを攻略してからでないと先に進めません。ということで、今回の負荷試験は、カステラを食材にしました。

最悪、またアナフィラキシーを起こすかもしれません。でも、「意外にも食べられるかもしれない」、そういう期待を持たなければ負荷試験なんてできません。

当院の場合は、150人以上受診があり、医師も一人しかいないため、診療と同時並行でやらざるを得ません。ただ、「いかに安全に食べさせるか?」ということを最も重視して負荷試験をやっているつもりです。診療しながらも、負荷試験の患者さんを気にしています。もちろん、隣の部屋で診療しているので、何かあっても飛んでいけます。

カステラで負荷試験をやってみて、まぶたに蕁麻疹が出て、咳も出始めました。ちょっと様子をみたら、それらの症状は引いてきたので、負荷試験を慎重に続行することにしました。

残念ながら、身体にも蕁麻疹が出始めたため、負荷試験は中止となりました。リベンジはなりませんでした。いつ、またアドレナリンを注射するかとも思っていましたが、内服薬で症状は治まってくれました。

お母さんとも付き合いは長いので、きっと「ああ、やっぱりダメだったか」とお思いだったのだと思います。こういう時は、「残念だったね」と言わずに、何か良い点を見つけるようにしています。

前回はエピペンと同じ成分のアドレナリン注射を使わなければなりませんでしたが、今回は使わずに済みました。卵アレルギーの攻略に向け、少し前進していることが分かりました。光明が見えたと言えましょう。

負荷試験を受けるに当たり、患者さんや親御さんが一番ストレスでしょうが、私の立場からも「今日は大丈夫だろうな」と思うことはあっても、絶対ではないのでプレッシャーはかかります。増してやアナフィラキシー既往者の負荷試験は、「誰かがやってくれれば」と思うことも正直あります。ただし、それは期待できません。

負荷試験をやる医師の側から言わせて頂くと、大きなリスクを背負ってでも決意を持って頑張っていることを少しは理解して頂けると幸いです。