水曜の午後は、園や学校に出向いてエピペンの取り扱いについて説明するということをやっています。
今日も、隣の街へ出掛けます。今のところ、6月上旬までこれが続くことになっています。
昨日も、「食物負荷試験」を7件やりました。長岡市から3人、糸魚川市から1人というような感じで、市外からの受診が多いくらいです。
当院の場合、診療と同時並行でやらざるを得ないので、1日5人やるのが目安なのですが、患者さんの都合に合わせると定員オーバーになることもあります。
人数が多くなると、全員が上手くいくとは限りません。アレルギー症状が誘発されてしまうお子さんも出てきます。先日も2人、昨日も1人症状が出てしまいました。
最近の傾向は、あれもこれも食べられないという重症な食物アレルギーの患者さんが受診されることで、思うように食べさせられず苦戦しています。
よく書いているように、加工品を使えば、卵や乳の含有量が少ないので、結構食べられます。これまではそうやって、「食べられる」という自信を持って頂く作戦でした。しかし、極めて重症になってくると、それさえ叶わなくなります。
加工品にも、それなりに多く含むものと微量に含むものがあります。ごくわずかしか含まないものを選んで食べさせようとするのですが、それすら食べられないと私自身も正直へこみます。
そのお子さんは、以前乳成分でアナフィラキシーの既往のあるお子さんでした。前医でずっと除去を指示されていましたが、「食物負荷試験」の存在を知り、当院を頼ってくれています。
これもどういう訳か分かりませんが、アレルギー検査の数値はさほど高くありません。クラス6で食べられないなら分かりやすいのですが、クラス2程度でも重症なのです。そういう患者さんは、経験するところではありますが。
以前、負荷試験をやっていて、微量の小麦で症状が誘発されており、今回は微量の乳での挑戦となります。是非ともリベンジしたいところではあります。
私自身も「あわよくば…」と思っていたのですが、やはり現実は甘くはありませんでした。顔に発疹が出始め、最初は内服薬で対応しようと思っていたのですが、咳も聞かれ始めました。
もちろん、診療を中断して対応に当たるのですが、最初は肺の音はきれいでした。酸素の取り込みの低下もなかったのですが、徐々に咳き込みも増してきました。再度聴診してみると、今度は先ほど聞こえなかったゼーゼーという音も聞こえます。酸素の取り込みも低下してきました。
この患者さんはエピペンを所持しており、エピペンと同じ成分のアドレナリンを注射しないに越したことはありませんが、この状況では使うべきと判断しました。多分、多くの小児科医がアドレナリンを使わないであろう状況と思います。つまり、やや“早め”に使ったという訳です。
負荷試験で症状が出てしまった場合は、治療をすることになりますが、親御さんに使った薬の効果を確認して頂いています。家などで症状が出てしまった時に、少しは落ち着いて対処できるようにです。
エピペンの特徴は、即効性があることです。いざ注射をするとなると、お子さんは嫌がります。調布の死亡事故のことにも触れざるを得ませんが、女児も結果的にはエピペンを使うタイミングで担任が使おうとすると、針を刺す恐怖もあったのでしょう、「違う、打たないで」と言ったといわれます。場合によっては、暴れるお子さんを押さえて、エピペンを打つことも想定されます。
お母さんにも協力して頂き、大人2人で体を押さえて、私が太ももにアドレナリンを注射しました。私もお子さんに痛いことはしたくありませんが、この状況ではそうしない方がかわいそうと判断しました。
予想通り、数分で呼吸器症状は消えてしまいました。それはお母さんにも確認して頂いています。ただし、油断はできません。今回もアナフィラキシーに分類される症状でしたが、アナフィラキシーが強い場合は、アドレナリン(エピペン)を使い、一旦症状が軽快したものの、効果が切れて再悪化することもあります。
蕁麻疹は残りましたが、呼吸器症状はぶり返すことはありませんでした。患者さんには申し訳ないことに、辛い思いや針を刺す恐怖心を与えてしまいましたが、無事に回復してくれました。
これまで乳製品もずっと除去しており、親御さんもいま食べられるのかどうかも分からなかった訳ですが、これで現実を目の当たりにされたと思います。こういうことも大事なことだと思っています。微量でも乳成分を含む食品を与えてしまえば、アナフィラキシーに至ることが分かりましたから。私はこの事実を、この子の通う小学校にも伝えるべきと考えました。
学校側は除去するように言われて除去しており、実際のところはどれだけ重症かはよく分かっていないと思います。アナフィラキシーになった時に乳成分の食べた量を示せば、「こんなに重症なんだ」、「じゃあ、誤食は絶対にさせてはならないな」と分かってもらえるからです。
また、親御さんはこれまでエピペンは使ったことがありませんでしたが、今回同じ成分のアドレナリンの効果を目の当たりにし、“早め”に使う対処法を学んで頂けたと思います。こういう事例をこれから毎週のように繰り返される講演などで話せば、より理解を深めやすいのではと思っています。
周囲の大人、要は児童なら小学校、園児なら保育園・幼稚園を巻き込んで、「誤食させない」、また「誤食した時に適切に対処できるように努力する」ということをやり続けなければと思っています。


