食物アレルギーの診療に「食物負荷試験」が不可欠だと訴え続けています。
アレルギーの病気を持つ子どもはとても多いにも関わらず、アレルギーを専門としている医師が少なく、更に食物アレルギーの知識を持つ小児科医はほとんどいないのが現状です。
「食物負荷試験」をできる医師は負荷試験を勧めていますが、できない医師は負荷試験の存在を説明することすらしません。明らかに説明責任を果たしていない訳です。そして「除去しなさい」と繰り返している。
これだけでも大きな問題だと思うのに、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの場合は更にオーバーな対応がされていることが多いようです。
低年齢だと少ないのですが、運動が激しくなってくる年代になると、食物依存性運動誘発アナフィラキシーという病気が増えてきます。茶のしずく石けんで有名になった病気です。
つまり、アレルゲンを食べて、その後運動するとアナフィラキシーを起こすという病態です。自宅では食後に走ったりしないため、学校で初めて症状を起こすことが多く、一般的には給食を食べて、昼休みや5限目の体育の際に運動している最中に、顔が腫れてきて、息苦しくなって…という発症の仕方をすることが多いようです。
結構強めに症状が出ることがあるため、この病気を知っている医師は多いようです。給食を食べた後に運動してじんましんが出ると、多くの医師が食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑うようです。
それはそれでいいのですが、その後がいけません。原因追及をすることなく、「食後2時間は運動しないように」と患者さんに指示する医師が多いように感じます。
確かに、少し前まではアレルギー専門医であっても、食物依存性運動誘発アナフィラキシーに関しては負荷試験はやっていませんでした。
私も中学生の頃は、高い天井を見つけると意味もなく手が届くかジャンプしてみたり、階段を一気に何段飛べるか友達と競ったものです。今なんて、そんなことやろうとも思いませんが(汗)、とにかくこの頃はエネルギーが有り余っているのです。
そんな頃に、充分な根拠もなく「運動してはいけない」と言われたら、納得するでしょうか?。するはずもないと思っています。
最近は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーであっても、原因検索が必要とされます。専門施設では疑われる食品を摂らせて、運動させて、アレルギー症状が出るかどうかを確認する方向に変わってきています。
以前、当院で診ていた患者さんは、小麦を摂って運動するとアナフィラキシーを繰り返しており、これは典型的なパターンと言えます。実際、データを見ると小麦が原因食品としては最多で、2位が甲殻類となっています。それだけで9割を占めるくらいです。中には、私の実力不足かもしれませんが、原因食品が特定できないこともありました。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因追及のための検査をやっても、再現性といって、原因食品を食べて運動しても症状が出ないこともあるとされます。だからと言ってやる必要がないかと言えば、そうではないはずです。
県内では、「食物負荷試験」をやる医療機関が極めて少ないことは繰り返し言っていますが、この食物依存性運動誘発アナフィラキシーとなると、さらに減り、探すのが困難になります。
先日も書いたように、ある専門医に相談したら「死ぬかもしれない」と脅された患者さんがいらっしゃいます。いやいや、専門病院に限られますが、アレルギーで有名な病院の多くではやっています。
本来、この負荷試験は緊急事態に備え、総合病院でやるべきで、開業医でやる医師は全国的にもそういないと思います。当院では、新潟県の事情を考慮にいれると、患者さんのためにやらざるを得ない場合もあります。
この春に給食後に運動をしてアナフィラキシーを起こした患者さんが、総合病院から食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑われ、当院に紹介されてきました。もちろんエピペンは処方しましたが、この流れからすると、原因追及をやらざるを得ないと言えます。
この患者さんは2回症状を起こしていて、初回はエビを、2回目は焼きそばを食べています。先ほど、原因食品は小麦、甲殻類が多いと書きましたが、やはりこの患者さんは確率論から考えても、小麦かエビが考えられます。ただ、原因は1回目がエビで、2回目が小麦ということは少ないようです。
運動が大好きな患者さんの今後を考えると、原因を曖昧にして食後2時間は運動しないようにと指導するよりは、アナフィラキシーを起こすリスクを覚悟の上で、負荷試験をして原因を明らかにした方がいいと考えました。
少し前に書きましたが、まず原因として最多の小麦を考えて、焼きそばを食べて運動させてみることにしました。運動はベルトコンベアーのようなものの上を15分走らせるという負荷をかけます。結果は何も起きませんでした。
となると、「原因はエビでないか」となります。親御さんも本人も原因追及に積極的でしたので、ここはエビを使った負荷試験もやる必要が出てきました。
ということで、つい先日エビを食べて、運動負荷をかける検査を行ないました。この時も何も起きませんでした。ここまでくると、八方ふさがり状態です。
他に原因食品があるのかもしれませんが、給食のメニューを見ても思い当たるものはないようです。小麦かエビが原因なのだけれど、たまたま症状が出なかったのかもしれません。もしかすると、食物依存性運動誘発アナフィラキシーでない可能性すら考えられます。
今のところ、結果的に原因が「分からなかった」訳ですが、負荷試験すらせずに「分からない」と言っている場合とは一緒にして欲しくはないと思っています。
自分の中では「やるだけのことはやった」という思いはあります。ただ、患者さんからすれば原因が特定されないので、やってもやらなくても変わらないため、私の自己満足でしかないのかもしれません(涙)。
こういう場合、どう指導していいのか難しいと思います。あくまで確率論として小麦とエビは食べないようにして、大好きな運動を引き続き行なってもらうのが現実的なのだろうと思います。
他に原因があれば、それは除去していないため、またアナフィラキシーを起こしてしまうかもしれません。その時のためにエピペンは処方してあります。
リスクを極力避けるのが目的であれば、「食後2時間は運動しない」というのも一つの選択肢でしょうが、運動欲求の強い年代としては、その辺を説明した上で対応していくしかないのかなと思っています。


