小児科 すこやかアレルギークリニック

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エピペン、敢えて使わず
2013年10月07日 更新

食物アレルギーの診療に「食物負荷試験」は不可欠とされています。

どんな病院でも開業医でも、食物アレルギーは避けて通れないくらい頻度の高い病気です。乳幼児では5~10%いると言われるくらいです。

全国の小児科のある病院と開業医はどれくらいあるのか分かりませんが、多分すべての小児科で食物アレルギーの患者を扱ったことがあると思います。となると、その多くの施設で負荷試験はやっていないでしょうから、ガイドラインに沿わない診療がなされていることになります。

いつも言うように、多くの医師が「食物負荷試験」という検査法があることすら患者さんに伝えていない現実は嘆かわしい限りです。以前は、単純に「食物負荷試験」という検査法を知らない医師が多かったのですが、今は知っていて伝えていないのは“確信犯”としか言いようがありません。

新潟県を見ても勤務医が減り、開業医は増えています。開業医同士は言わばライバルな訳ですから、負荷試験をやらない医師にとっては負荷試験の存在を伝えることは死活問題なのかもしれません。

日本人のモラルの低下が叫ばれていますが、医師もこの分野ではそういうことが言えるのだろうと思っています。私が食物アレルギーに力を入れているせいもあるから、尚更そう思うのでしょう。

やや極端な言い方かもしれませんが、私の場合、他院に患者さんを紹介したら自分の収入が減ると考えたことは一度もありません。でも実際は減るのでしょうね。医療において、利益などと言い出したら制約を受けるのは現実なのだろうし、その結果おかしな方向に進んでしまうのだろうと思っています。

で、その「食物負荷試験」ですが、当院のモットーは「負けるケンカはしない」です(笑)。食べられそうなものを選んで負荷し、自信を持って頂くことに重点を置いています。

ほとんどの方が笑顔で帰っていかれますが、そんな重くはないですが、アナフィラキシーを起こす方もいらっしゃいます。蕁麻疹が出て、ゼーゼー言うこともあります。

7月の末に日本小児アレルギー学会が一般向けのエピペンの適応を公表しました。消化器、呼吸器、全身の症状を13個示し、どれか1つでもあればエピペンを使用してもいいというかなり画期的なものです。

それによると、先に述べた「蕁麻疹が出てゼーゼー言う」ケースではエピペンの適応に入ります。小児アレルギー学会の意向としては、手遅れにならないように、早めに対処しておくという意味合いが強いと思っています。

先日、負荷試験をやったお子さんも蕁麻疹が出て、軽くゼーゼー言い始めました。このお子さんの場合、重めの食物アレルギーでしたが、体重が軽く、エピペンは処方したくともできない状況でした。抗ヒスタミン薬とステロイド薬の2種類を処方していました。

学会側の意向に沿えば、「早めにエピペンを使っておく」という方法でも良かったと思うのですが、私はステロイドの内服薬を選択しました。「これで何とかなるかも」と思ったからです。ただし、注意しながら経過観察し、更なる悪化があればエピペンの成分であるアドレナリンをためらわず使おうと思っていました。

なぜ学会側の意向にやや背く(?)方法を取ったかと言えば、その患者さんはエピペンを持っていなかったからです。エピペンを使えば、速やかに症状は軽快したと思うのですが、親御さんの手元に武器としてエピペンはなく、2種類の内服薬があるのみです。手元の武器がどういう感じに効くことを知っておくいい機会だと思いました。

ここでエピペンと同成分の薬を使っていたら、親御さんはちょっとでもゼーゼーっぽくなれば、エピペンを持っていない分、相当慌ててしまうと思います。

アナフィラキシーといっても重くなければ、エピペンを使わずに回復するケースも結構あることは経験済みです。内服薬で何とかなれば、それに越したことはないと思うのです。もちろん、急激に悪化しても、医院なので速やかに対処できるため、こういうゆとりを持った対応が可能になると思っています。

幸い、更に悪化することはなく、軽快してくれました。手遅れになっては元も子もないですが、親御さんに内服薬でも対処できる場合もあることを知って頂けたと思っています。

自分の中で「これはヤバい」と思えば、エピペンの成分であるアドレナリンの注射に躊躇はしていないつもりですが、そこまで重くなければ、手元にある内服薬の効果を見極める指導も必要なのだろうと考えています。