小児科 すこやかアレルギークリニック

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ショック体位
2013年12月19日 更新

昨日は、隣街の学校にエピペンの話に行ってきました。

この患者さんは、ハチに刺され、アナフィラキシーショックを起こしました。調布の死亡事故から明日で1年になります。この9年で食物アレルギーの子どもが1.7倍に増えているというデータも報道されています。

食物アレルギーが注目される中、今回のお子さんはハチ毒によるアナフィラキシーショックでした。食物アレルギーに限らず、アナフィラキシーショックの治療薬はエピペンしかないと考えて頂いて構いません。他にも薬物でショック状態に陥ることもあります。

とにかく、アレルギー反応が強く出て、血圧が下がるなど生命の危機的な状態に陥れば、エピペンを速やかに投与する対応が求められています。

今回の患者さんは、校外授業で笹の葉を取りにいき、ハチに刺されてしまったそうです。過去にも刺されていましたが、大した症状が出なかったので、そのまま歩いていたら、フラフラになり歩けなくなったそうです。その後、先生がおぶって進んだようですが、意識も遠のいていきました。

ここで調布市の死亡事故を思い出して欲しいと思います。誤食のあと、「気持ちが悪い」と言って教室に戻ってきたのですが、その後「トイレに行きたい」と言うのですが、その時点で歩けない状況だったので、養護教諭がおんぶをしてトイレに連れていきます。

アナフィラキシーショックの場合、全身の血管が開きますので、おんぶをして身体を伸ばすと頭の血が下に落ちてしまいます。つまり、意識が消失してしまうこともあるのですが、まさにそんなことが起きてしまいました。おぶってトイレに行き、便座に座らせた時点で呼びかけに反応しなくなったといいます。

今回の患者さんも状況はソックリです。調布の事故の教訓が活かされていないと言われそうですが、初めてのアナフィラキシーショック症状ですし、食物が誘因ではないので、学校の先生もそうなるとは思ってもみなかったと思います。

現場から連絡を受けた養護の先生が車で迎えに行ったのですが、お子さんがつらがって横になりたがるため、車のシートに横たえさせたそうです。

そうすることで、本人いわく,意識がハッキリしてきたそうです。その後、救急搬送されて、病院で治療を受けます。

アナフィラキシーショックの時に取るべきものとして「ショック体位」が挙げられます。

身体を横たえ、足を15~30センチ挙上するというものです。こうすることで、頭に血液を重点的に行かせることができるのと、心臓の負担を減らすことができます。起きていれば、心臓が頑張って頭のてっぺんまで血液を送らなければいけないのが、そこまで頑張らなくても頭に血が通うことになります。

車の中ということもあり、「ショック体位」は取れなかったものの、身体を横たわらせることで、脳への血流が保たれ、心臓の負担を軽減できたものと思われます。学校の先生から、そんな生々しい話を聞くことができましたし、講演の中で「ショック体位」の話を聞いて、その時の状況を理論的に理解できたとおっしゃっていました。

調布市の事故の時ほど、アナフィラキシーショックの症状が重くなかったため、言い方は申し訳ないのですが、そこが生死を分けたのだろうと思います。しかし、先生も車に頭を高くした格好で普通に乗せていたら、もっと悪化させたかもしれないと言っていました。

園や学校現場で、ショック状態になると騒然とし、先生方も冷静ではいられなくなります。今回の話をお聞きし、私も「ショック体位」の有効性を知ることができましたし、逆にこういう話をすれば、ショック状態の子どもを楽にするためにはどうしたらいいかということにもつながります。

今後も、エピペンの打ち方だけでなく、「ショック体位」の有効性についても広く知ってもらう努力をしていこうと思っています。