先日、先月講演に行った当院から100キロ以上離れた街から、患者さんが遠路遥々受診して下さいました。
食物アレルギーの講演に行ったのですが、その患者さんは「長引く咳」で悩んでいました。
実は、講演に行ったその日のうちにメールが私の元に届いていました。咳はかれこれ3年スッキリせず、近くの小児科に通っているが良くならない、診てもらえないか?という内容でした。
もちろん、引き受けました。私にとっては“常識”なのですが、症状が長引き、改善しなければ、医師の診断が違っており、慢性の病気が隠れているのではないかと考えます。前医では「原因不明」と言われていたようですが、やはり慢性の病気を考えるべきでしょう。
国や行政は、食物アレルギーの死亡事故を受けて、園や学校の先生方が誤食時に適切に対処できるよう準備しておくことを求めています。しかし、園や学校の先生は教育のプロであって、食物アレルギーは全くの専門外です。これまで学ぶ機会もなく、いきなり間違いなくやりなさいと言われても困るはずです。
しかも、園や学校の先生方が、“食物アレルギーの正しい情報を得られない”状況にあることが多いことも問題です。それは多くの医師が食物アレルギーは専門外で、今の考え方とは場合によっては真逆の指導をしているからということもあるでしょう。
そういう環境下にいる園や学校の先生方を前にして講演をする場合、専門医として食物アレルギーの正しい知識を持って頂くことが最初にすべきことと捉えています。誤食時の対応を話したところで、食物アレルギーのことを知らずして、付け焼刃的に頭に入れても、じきに忘れてしまいます。
となると、食物アレルギーは医師によって言うことが相当異なるが、世の中には食物アレルギーのガイドラインというものが存在し、今日はそれに沿って話していきたいというような話し始めになります。
そういった話し方が聞き手に好意的に捉えられるのか、そうでないかは分かりませんが、今回の親御さんは私の話を聞いて「この人はこれまでの小児科医とちょっと違う」と感じて下さったようです。
メールでいつ来られるか聞いていたので、私の知識を総動員し、そんな遠路から受診して下さるので、不安や疑問点を解消して帰って頂きたいと思っていました。
実はメールの1、2回のやり取りの中でだいたい診断は分かっていました。治療も予想がついていました。あとはメールのやり取りですべては聞けなかったので、不足している情報を聞き足しました。
最初は、ぜんそくの手前の状況だろうと思っていましたが、ぜんそくの診断基準を満たすもので、明らかにぜんそくと診断できるものでした。ぜんそくのことを少し知っていれば、診断が難しい訳でもなく、しかもゼーゼー言って急患センターを受診したこともあり、その時の担当医から「ぜんそくがある」と言われていたのを、親御さんは主治医に伝えたにもかかわらず、原因不明という辺りに相当問題がありそうです。
ぜんそくは、日頃は明らかな症状が出ないために、典型的な症状が出た時の情報はとても有効です。そういうヒントがあったにもかかわらず、診断できなかった訳です。何故分からないことを「分かりません」と素直に言ってあげられなかったのかと不思議でなりません。
ただ、親御さんに悪い点が作用します。他の小児科医に行き、原因を突き止めようとしますが、「同じ薬を飲んで様子をみればいい」と言われてしまったそうです。最近で言う「セカンドオピニオン」を求めた訳ですが、2人目の小児科医もぜんそくの知識に乏しかったため、それは不運としか言いようがありません。
それで3年も“放置”されてしまいました。ぜんそくなど慢性疾患は治療が遅れれば、その間に症状が悪化し、より重症化することはよくある話です。こういう責任って誰が取るのだろうと思ってしまいます。
実は、つい先日から「キプレス」と「パルミコート」という薬が開始されていました。その話はメールでは聞いていませんでした。「ようやくぜんそくと診断されたのね」と思ったのですが、驚いたことにぜんそくの「ぜ」の字の説明もなく、こういった治療が開始されていました。
これらの治療は、ぜんそくの重症者に行なう治療にもかかわらずです。残念ながら、「この世に良心的な医療ってあるのだろうか?」と思ってしまうような出来事です。
ぜんそくの薬が出てしまっているので、保険側には「ぜんそくと診断し、治療をしています」という連絡がいくことになります。そうしなければ保険診療が受けられないからです。
多分、前医の頭の中は「ぜんそくかもしれない」という考えはあるのでしょうが、診断を決定する知識まではないのだろうと思っています。「ここまで症状が長引いているから、ぜんそくかもしれず、その治療をやってみましょう」と言うのなら分かりますが、説明も一切なく、裏で当てずっぽうで治療が行なわれているという格好とも言えるやり方が行なわれており、こんな“医療”では患者さんが気の毒でなりません。
先程、お子さんの病気について不安や疑問点をなるべく解消してもらおうと書きましたが、この悲惨な状況を受け、最初から説明をしました。
食物アレルギーの講演を聞いた時も衝撃的だったそうですが、今回の話もまた衝撃的だったようです。
新しいラーメンやに入る時は「当たりだろうか?、ハズレだろうか?」とちょっと疑ってかかるでしょうが、どういう訳か医療に関しては、多くの方が当たりと信じて疑わない訳です。そこがそもそも問題です。医師の言うこと、やることが正しければ、どの医療機関に行っても同じ医療がなされるはずですよね?。
私のやっていることも100店満点ではありませんが、こんな私が言う権利もないのかもしれませんが、アレルギーに関しては、多くの医師がハズレと言えると思っています。言い方は変ですが、多くの医師がいかにボロを隠して診療しているかとも言えなくもないと思っています。実際、ガイドラインすら守られていないというか、ガイドラインに沿った医療をされて、当院を受診された患者さんはほとんどいないと感じています。
これからも講演活動が続きますが、1人でも多くの方に「ちょっと違う」と感じて頂けるよう、新潟県の子ども達のために頑張らなければならないと思っています。


