昨日は、製薬会社から依頼のあった講演でした。
その会社がワクチンを扱うため、要請のあった食物アレルギーだけでなく、ワクチンによるアレルギー反応についても話を組み込む必要がありました。
手元にあった文献をもとに、スライドを作りました。折角なのでそれをちょっと披露しようかなと思っています。
日本はワクチン後進国と言われているようですが、その分アメリカは先進国と言えるのでしょう。日本よりも人口の多いそのアメリカで、ワクチンによるアナフィラキシーは年間数十件とされています。
一方、2006年の日本の報告では、アナフィラキシーとは限らないけれど、接種後にみられた重篤な反応は1290万回の接種で9例だったそうです。パーセンテージで表すと、0.0007%。いかに少ないか分かります。
ただ、子どもの健康を守るための予防接種が、健康を害する引き金になることは避けなければなりません。
ここで確認しておきたいのが、このパーセンテージは別に卵アレルギーによって引き起こされた訳ではなく、接種後にたまたま症状を起こしたものも含まれている可能性があるそうで、因果関係は証明できていないようです。ちなみに、死亡例はなかったということでした。
メーカーの方も言っていましたが、予防接種というと小児科医が多いのでしょうが、不安の多くがアレルギー反応なのだそうです。確かに予防接種によりアナフィラキシーを起こし得ると思います。
調べてみると、ワクチンに含有され得るアレルギーの原因として、ゼラチン、卵アルブミン、保存剤としてのチメロサール、アルミニウム、フェノキシエタノール、抗菌薬としてカナマイシン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、その他ラテックス、真菌と書かれていました。
実は、以前予防接種後に全身蕁麻疹やアナフィラキシーの報告が年間20件以上ありましたが、その原因がゼラチンだと特定され、それ以来メーカーの企業努力もあり、ゼラチンフリーといってゼラチンを含有しないワクチンが一般化しています。
私の研修先での研究では、平成11年2月にワクチンメーカーのゼラチン除去作業が完了したため、それ以来ゼラチンアレルギーが減少していることが分かりました。
嫌な言い方になりますが、まだ赤ちゃんのうちから、せっせとゼラチンを予防接種という形で注射されて、ゼラチンアレルギーの体質とならされてしまった方が存在したといえます。子どものお菓子であるグミを食べて、アナフィラキシーを起こしたというケースも何度か聞いたことがありますが、それが激減したのです。
そういった反省を踏まえ、ゼラチンフリーのワクチンに切り替えられました。また、一時問題に上がったチメロサールも、現在は除去されていると思っています。
そういう経験の積み重ねから、より安全なワクチンが作られるに至っているようです。ちなみに、日本のワクチンは他国に比べ、精度が高く、いわゆる不純物の含有は極めて少ないようです。
特にインフルエンザや麻疹のワクチンでは、卵の含有が取り沙汰されていますが、面白いデータを見つけました。卵のアレルギー検査が陽性の患者さんにインフルエンザワクチンを接種後の反応を調べています。
ワクチン接種後に注射部位の発赤、腫れ、発熱、嘔吐、湿疹の悪化、喘鳴といった症状を来した患者さんが、ある一定の確率で見られたそうです。卵のアレルギー検査の数値と絡めて評価してみると、卵白の特異的IgE抗体のクラス別で、クラス2:8.5%、クラス3:9.2%、クラス4:5.9%、クラス5:15.7%、クラス6:14.3%でした。
これをみると、数値が低くても、卵の摂取状況で食べられていても副反応は起き得るようです。となると、卵アレルギー児に接種した時の副反応は、必ずしも卵成分に起因しないことが示唆されると言えましょう。
残念ながら、予防接種により何らかのアレルギー反応は、しばらくはゼロにはできないと思っています。今日述べてきたように、原因が特定されれば、除去する努力もしてきています。実際に症状の出る方は、ワクチン成分の何かに反応しているというこことなのでしょう。
となると、卵のアレルギーの数値が陽性だから接種を受けないというのは、正しくない判断である可能性があると思っています。
子どもは予防接種を嫌がりますが、CMでやっているように、我々大人のような免疫の力を獲得するには10代半ばまで待たないといけないのだと思います。積極的に予防接種を受けて病気の魔の手から子どもを守る姿勢は大切でしょう。特にアレルギーを持ったお子さんは、リスクもゼロではありませんが、多分思ったより少なかったり、軽かったりするのだと思います。
その辺のことも知っておいて頂きたいと思っています。


