いま、学会の準備をしています。
地道に負荷試験のデータを入力しています。近隣に食物アレルギーに力を入れている医療機関がないため、一年を通して相談に受診される患者さんが多いです。
個々のケースは、「とにかく食べさせてあげたい」の一心でリスクを背負って負荷試験を行っていますが、全体でみると、開業医でもこれくらい負荷試験をやっているという証拠になります。
私の今年の目標は、昨年に引き続き、一人でも多くの小児科開業の先生から負荷試験をやってもらうことです。
やりたいと思っているドクターは、少ないけれど確実にいるはずです。ただ、今の学会の首脳は、開業医には負荷試験を勧めておらず、そこが問題だと思っています。そういう発想だから、負荷試験の充足率がまだまだ極めて少ない状態が続いており、患者さんのニーズに応えきれていないのあろうと思っています。残念ながら、学会幹部は全員大病院の先生なので、開業医の実態をあまり把握されていないようです。
となると、私のような負荷試験をこだわっている医師が学会発表することで幹部に末端の現状を訴え、更には負荷試験をやってもいいと思っている医師を掘り起こす役目があると思っています。
先日、あるテレビ番組で、食物アレルギーが取り上げられていました。専門病院で卵アレルギーの患者さんんが卵白を用いた負荷試験を行っており、途中でアナフィラキシーを起こしてしまいます。全身を痒がり、苦しくなり始めて、気管支拡張薬の吸入をしていました。
確かテレビでは、卵白の1個分の数分の1しか食べられないという結果に、向こう1年は完全除去というジャッジが下されていました。
当院であれば、得意の卵クッキーから負荷試験をしているであろうと思います。負荷試験の結果から、まず間違いなく卵クッキー3枚は食べられていたことでしょう。
ここで言いたいのは、専門病院の判断をとやかく言うつもりはありませんが、当院のやり方も「あり」なんじゃないかということを考えて欲しいのです。
卵白を使い、途中アナフィラキシーを起こすことで、「これ以上食べるのは危険」ということが分かりました。それは、今後安全に食事を進めていく上で大切なことでしょう。
当院のやり方では、たったのクッキーを3枚食べさせるだけです。当然、「これ以上食べるのは危険」という限界域が不明で、“どこまで食べられるか”ということは分からないままです。これは良くないという考え方もあるでしょう。
ただ、アナフィラキシーを起こすことなく、わずかながら卵製品を食べることができる訳です。これだけの量を食べ続けることで「経口免疫療法」になるかは、正直分かりません。
少なくとも、完全除去にはなりません。最近は、なるべく早いタイミングで食べさせた方がいいとは言われているため、その点では有利になっているとは思います。向こう1年間除去を続けるのと、どれくらい食べると危険かどうか分からないままではありますが、少しでも食べているの差が、食べられることに関してどれだけの影響があるのかは、とても興味を持っています。
もしかしたら、学会幹部の先生方から「そんな中途半端なことをして」なんて思われてしまうかもしれません。ただ、生意気なようですが、一言反論させていただくとすれば、本人も親御さんも、わずかながらでも「卵を食べられている」、「完全除去する必要がない」という点では明らかに当院のやり方が有利です。1年も卵が入っていないかどうか、ピリピリしながら食べさせていく親御さんのストレスは計り知れないと思っています。
卵を本当なら1個の1/5程度食べられる子がいるとします。当院のやり方での卵クッキー3枚では数10分の1に当たるでしょうか。その数10倍の量を食べられるはずなのに、食べさせていないということになります。ここに無駄というか、曖昧さが残るのだろうと思います。
ここで、アームストロング船長の言葉をいつも思い出します。人類で初めて月面に降り立ったアポロの宇宙飛行士の言葉です。「わずかな(数十センチほどの)一歩であるが、人類にとっては偉大な一歩である」というものです。
これまで完全除去を続けていた親御さんにとっては、クッキー程度でも“偉大な一歩”になり得るのだろうと思っています。これは絶対に無視できないことだろうと思います。
ちなみに、当院ではクッキー相当の卵の入った加工品を食べてもらうよう指導を行って、その数ヶ月後には、次の段階のカステラ1切れで負荷試験を行っています。もっと多く食べられる患者さんに、無駄に除去をダラダラと続けさせないようにです。
今年も数百件の負荷試験をやることになると思いますが、“偉大な一歩”のために頑張らなければいけないと思っています。


