昨年、ある有名な皮膚科の先生のご講演を聞いた時のことです。
アトピー性皮膚炎と区別の必要な皮膚の病気の話でした。最初はアトピー性皮膚炎と考えて治療しても、思い通りに改善しなければ、「アトピー性皮膚炎ではないんじゃないか」と考えを切り替えて、別の病気を探すことで、診断をつけていくという話をされていました。
皮膚というと、診断名も告げられずにキンダベートといった弱いステロイド軟膏を処方し続けれるケースはよく見ますが、「一流の先生は、その辺の医者とは全然違うな」と思った次第です。
いつも言っているように、医者は誤診したり、効かない薬を出しても、とにかく利益が上がるようになっています。医師が自ら「正しい医療をしたい」と思い続けないと、自分を律する強い思いがないと、おかしなことをし続けることになってしまいます。
いま、生後半年前のゼーゼーする赤ちゃんを診ています。他の小児科で風邪と言われていたのですが、常識的に考えて、風邪ではゼーゼーしないのは素人でも分かります。当院に逃げて来られました。
聴診すると、確かにぜんそくの時に聞かれるようなゼーゼーという音が聞こえます。私はここで、気管支拡張薬の吸入をしました。発作を起こして、救急外来に駆け込んだ時にやってもらう、あの吸入です。
ぜんそくを疑った時に、ぜんそく治療用の吸入をして、ゼーゼーが改善した場合、「ぜんそくがある」と判断するテクニックがあります。逆に言えば、ゼーゼーした場合、ぜんそくと決めつけるのは危険な場合があるとも言えます。
ぜんそくの吸入が驚くほど効いたため、ぜんそくがあるのだろうと判断しました。早いと生後6ヶ月前からぜんそく症状を繰り返すことがあります。ぜんそくの時に使う内服薬を処方し、治療させていただくことにしました。
ところが、思ったほどの改善が見られません。ここで「違う病気があるんじゃないか?」と疑わないといけないのです。
赤ちゃんがゼーゼーした場合、ミルクの誤飲というのがあります。飲んだミルクが食道から胃に行かず、気管の方へ行ってしまう病気です。本当なら造影剤を混ぜたミルクを飲ませ、レントゲン写真を撮って、逆流を明らかにしないといけません。
ただ、周囲にはそういう精密検査をしてくれる病院はなさそうです。話を改めて聞くと、ミルクを飲んだ後にゼーゼーしやすいようです。先程言ったように、造影剤の検査が必要なのですが、それができないので、逆流の治療をさせていただき、それでゼーゼーの改善具合を見させていただくことにしました。
対応はこうです。ミルクにとろみをつけて、粘性を増し、気管に落にくくすること。ミルクを飲む時は、上体を起こし、哺乳後30分は横にしないことなどが挙げられます。
試行錯誤しつつ、この赤ちゃんのゼーゼーを意地でも改善させたいと思っています。


