今日は、午前中の診療が終わったら、一般の方向けの講演になります。
用意するスライドが普段と異なるので、ちょっと苦労しました(汗)。普段は食物アレルギーの基礎知識と誤食時の対応(エピペンの使い方)といった話をしていますが、今回はぜんそくもアトピー性皮膚炎の話も含んでいます。
それを用意していて、無力感を感じています。
この場でも構想に触れたりしていました。アレルギーマーチに沿ってアレルギーの病気が発現してきて、それは経皮感作に基づいているという話だったと思います。
そのようにして発病してきたら、病気を診断し、治療することになりますが、例えばぜんそく。ガイドラインによれば、軽症であれば、ロイコトリエン受容体拮抗薬という内服薬を用い、重症化してくると吸入ステロイド薬を使って治療すると書いてあります。
最近は治療法が画一化され、進歩もしてきたため、随分治療が楽になりました。入院を繰り返していたお子さんが、当院に通うようになり、入院しなくなったケースもありますし、外来で治療できるようになりました。
小児科医の願いはぜんそく死をなくすことですが、ほぼ達成されています。ぜんそく発作を起こして、入院することも減りました。我々はぜんそくという病気を克服したのでしょうか?。
確かにぜんそくの重めの患者さんに吸入ステロイドを処方すると、かなり良くなります。専門医の間では有名な研究があります。ぜんそく患者さんに早めに吸入ステロイド薬を使って治療すると、治療していた2年間は調子はいいものの、治療をやめると1年くらいで元に戻ってしまうという衝撃的なものです。
つまり、吸入ステロイド薬はぜんそくを完治させるものではなく、症状を抑えているだけなのかもしれないのです。私の年代くらいの小児科医なら、小さい頃ゼーゼーを繰り返し、入院も何回もしていたけれど、成長とともに治ってしまうという経験はあるかと思います。結果的に軽い患者さんは治るけれど、アレルギー体質の強い、典型的なぜんそくは治すのは難しいのかもしれません。
確かヨーロッパの方の論文だったと思いますが、2歳から12歳だった小児ぜんそくの患者さんの30年後の状態を調べた報告がありました。彼らは32歳から42歳になっています。
完璧に治ったのは22%で、検査すると異常は出るけれど、症状はほぼ抑えられているのが29%。合わせた51%が治った状態でしたが、残りの49%は症状が出ていて、未だに治療しているというものでした。
ぜんそくを克服したとは言えないという状況だと思っています。以前は少なくなかったぜんそく死がほぼなくなり、現在の日本の30年後が今回のデータと同じになるとは限りませんが、今回、スライドを準備していて「アレルギー、恐るべし」と思ってしまいました。
アトピー性皮膚炎があると、ぜんそくが出るんじゃないかと経過をみていると、予想通りというかぜんそくを発症してくることがあります。当院は、早期発見、早期治療を心掛けています。
いま診ている子ども達が、30年後に今回提示したデータを上回っていて欲しいと願っています。


