小児科 すこやかアレルギークリニック

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一般向けエピペン適応の作成経緯
2014年01月17日 更新

昨年7月に夜な夜なインターネットをしていたら、小児アレルギー学会が一般向けのエピペン適応を公表しているのを見つけました。

これは、消化器症状や呼吸器症状、全身症状を具体的に挙げ、ひとつでもこれらの症状が見られればエピペンを使って良いとするもので、画期的だと思っていました。

調布市の死亡事故があって、それが報道された際に日本の第一人者がエピペンを打つタイミングを問われると、「迷ったら使用して欲しい」と言っていたのを、私は違和感を持って見ていました。園や学校の先生方は迷うほどの知識を持っていない、そう思っていました。

食物アレルギーで不幸にも亡くなった人を検証すると、エピペンの成分であるアドレナリンの注射の遅れが指摘されていました。発症して30分以内に治療すると、改善する可能\性が高いとされていました。

そんな中、調布市で死亡事故が起きました。身体に異変が起きなければ治療のしようがありませんが、給食を食べ終わってしばらくして「気持ちが悪い」と言って、担任の元に戻ってきます。それが発端なのだろうと思っています。それからあれよあれよという間に状態が悪化していく訳ですが、15分程度あとにショック状態となります。

そこで校長が勇気を振り絞りエピペンを打つのですが、結果的に間に合いませんでした。食物アレルギーがとても重症だったことも要因ですが、病気の進行も早かったと言わざるを得ません。現場に医師がいたとしても助からなかったかもしれないという意見すらあります。

私は講演でいつも言っているのですが、この事故のケースが難しいから仕方なかったと言っていれば、第二、第三の死亡事故は繰り返されると思います。そうさせないためには、今回の事例にも適応できるようなエピペンを使用するタイミングを親御さんは園•学校関係者に周知徹底する必要があったのだと思います。

先程も述べたように、今回公表されたエピペンの適応は、消化器症状、呼吸器症状、全身症状で、具体的には13項目あります。調布のケースでは、消化器症状はなかったようです。息苦しいのを本人はぜんそく発作が起きたものと思い込んでいたそうです。

一般向けエピペンの適応を当てはめると、この辺りのタイミングで打つことになると思います。この時点で打って助かったかどうかは分かりませんが、時間にして5分程度は早く対応できたことになりそうです。

例えば、エピペンの適応に「繰り返し吐く」というものがあります。冬期はノロウィルス感染症が流行りやすく、園や学校で数回吐いただけで、エピペンを打ってしまうケースが起こり得ます。また、やはり適応に「ゼーゼーする呼吸」というのがありますから、学校でぜんそく発作を起こしゼーゼー言えば、病気が違うのにエピペンを打ってしまうことも起こる可能性があります。

エピペンは多くの方が思うほどの副作用もなく、実際全国で使われたエピペンにより、患者さんの足を大きく引っ張るような副作用が出ていないことが確認されています。ですから、エピペンをいかに使わせるかというのが学会側の課題だったのだと思います。

一方で、過剰に使われることも減らしたいという気持ちもあったことでしょう。作成は相当難しかったと思われます。それで、こういう作成の経緯が公表されたのではないかと推測しています。
http://www.jspaci.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=31

子どもの命を守ることが最優先課題ですから、私がこの適応を見ても「ちょっと早いかな」というものも含まれています。手遅れになることを避けるという本音が見え隠れしています。

先週、福岡で勉強会があった訳ですが、このことについても話題になりました。私の経験したハチによるアナフィラキシーショックの患者さんは、刺されてまもなくグッタリし、ショック症状となり、遅れて蕁麻疹が出てきました。ハチのアナフィラキシーショックは、食物アレルギーよりも進行が早いと言われています。食物アレルギーの場合は、例外はありますが、皮膚に症状が見られやすいとされます。

蕁麻疹だけではエピペンの適応にはならず、実際に一般向けエピペンの適応では皮膚症状については記載がありません。そんなこともあり、ノロウィルスによる嘔吐、ぜんそく発作によるゼーゼーなどで誤ってエピペンを打ってしまわないように、蕁麻疹を伴うことが多いと書いた方がいいという意見も出ました。

ただ、アナフィラキシーショックでも1~2割は蕁麻疹などの皮膚症状が出ないこともあり、蕁麻疹のことを強調し過ぎると、打つことに躊躇するケースも出てくるのかもしれません。ですから、もう少し改善の余地があることは事実だろうと思っています。今回の一般向けの適応を“たたき台”として議論を深め、より完成度の高いものにして頂きたいと個人的には思っています。

いずれにしても、難しいことを敢えて踏みこんで作り上げた学会の努力は讃えたいと思っています。