一昨日の水曜の午後も、講演に行ってきました。
先週も、先々週もです。2週間前は当院から160キロ離れた新潟県では北に位置するS市の学校に行ってきました。
その学校には、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの患者さんがいるそうで、珍しくエピペンが処方されていました。
珍しくというのは、アレルギーが専門でない場合、エピペンを1回も処方したことのない小児科医が圧倒的に多いと思います。更に言えば、エピペンをどういう患者さんに処方すべきか分かっていない医師すらいます。
車など“売りっぱなし”で、アフターケアが不十分な店もあるようですが、私はそうはなりたくないと思っています。エピペンは、いざという時に園や学校のどの職員もが使用できる状況にしておきたいと考えています。
自分がエピペンを処方した患者さんを守る手伝いをしたいと考え、自分の患者さんの通う園や学校に出向き、どんな時にどう打つかという指導を行なってきました。もうかなり回ったのかなと思っています。
それでは飽き足らず、自分が処方していない患者さんのところまで行くようになりました。冒頭のS市の患者さんのケースもそうです。
食物アレルギーは「必要最小限の除去」が基本であり、昨日も触れましたが、除去が過度だと患者さんが大変なほか、逆に過敏性が増し、より食べられなくなってしまう可能性が示されています。これはより重症なアナフィラキシーを起こすことのある食物依存性運動誘発アナフィラキシーとて同様だと思っています。
そのS市の患者さんの場合、今は中学生なのですが、小学校高学年の頃から給食を食べ、運動するとアレルギー症状が繰り返し出ていたそうです。近くのアレルギー科を標榜しているものの、アレルギーの研修を受けていない小児科に相談に行ったところ、「小麦に違いない」というようなことを言われ、それから小麦を摂ったら運動しないという生活が始まりました。
正直、やや腹立たしく思っているのですが、小麦を摂っていない日に症状が出ることもあり、テキトーに診断されていました。この時点で、この医師の能力の限界を超えている訳ですが、「専門医に紹介しよう」という発想がないことに呆れてしまいます。
その後、アナフィラキシーを起こし、他の病院を緊急受診し、エビアレルギーではないかと言われます。過去の症状を見直してみると、すべてエビが使われていました。エビは食べると唇が腫れるという症状があり、運動を組み合わせると強めに症状が出るようです。
ここで一般の方であっても「小麦の除去は必要ないのでは?」と考えると思うのですが、緊急受診した病院の小児科医もアレルギーが専門ではないため、「小麦の除去も続けて下さい」なんてことを言います。食物アレルギーの基本の「必要最小限の除去」ということはあまり念頭にないようです。
こんな中途半端なことを指示されているがため、給食では小麦を除去していたそうです。実際、食事で小麦を除去することは難しいため、ここ何年も弁当持参だそうです。
S市の学校にエピペンの話に行った訳ですが、私の話を聞きたいと親御さんや本人も参加して下さいました。講演後、相談を受け、上記のような理論的ではない対応に「何とかせねば」という思いが膨らんできました。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーに関する運動負荷試験は、新潟県ではほとんど行なわれていません。あまり開業医が手を出す試験ではないのですが、小麦でないことを否定したい検査なので、アナフィラキシーのリスクはかなり少ないと判断しました。
検査をやっている新潟市民病院に行ってもらおうかと思いましたが、患者さんが当院での検査を希望されましたので、S市の学校を訪れた2週間後に検査に受診されました。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの運動負荷は、再現性が低いとされます。原因食品を食べて運動しても、症状が誘発されないことが結構あるようです。ですから、今回小麦を摂って運動負荷試験を行なって、仮に症状が出なくても、「小麦が原因ではない」と言い切れるものではありませんが、過去5回ほどのエピソードがいずれもエビで説明できそうな状況なので、「小麦が原因ではないのではないか」ということを示すことで、現在の不自然と思われる弁当生活を脱却するきっかけになればと思った次第です。
うどんを食べ、当院にあるルームランナーで15分間走って頂きました。心拍数は目標の180/分まで上がりました。その後しばらく経過を見ましたが、アレルギー症状は見られませんでした。
今後は、徐々に弁当の中に、これまで一切使っていなかった小麦製品を入れて頂き、運動も普通にやってもらい、何もないことを確認しようと思っています。甲殻類の除去は免れませんが、最終的には普通の給食を食べ、弁当を止めてもらおうと思っています。
このように食物アレルギーの中でも、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは過剰な対応を取られていることが多く、原因の検索も一切せずに「給食後、2時間は運動しないように」などという指示を出していることが多いようです。ホントに患者さんが気の毒です。
似たようなケースがありましたが、相談して頂ければと思っています。


