アメリカの大統領選が、オバマの勝利に終わりました。
日本とはリーダーの選出のシステムが異なるのはご存知の通りですが、テレビ討論会は当然としても、テレビCMにも出たり、ネガティブキャンペーンといって相手陣営への批判の応酬など、いろいろあるようです。
ところで、地元では胃腸炎がやや増えてきたようですが、園や学校に通う子ども達に「周りで何か流行っていない?」と聞くと「マイコプラズマがいます」とか「RSの子がいると聞いています」という答が返ってきたりします。
申し訳ないですが、「本当だろうか?」と思います。それは医師の診断能力にかなり差があるからです。1日に何人も胸部レントゲン写真を撮っていた時期もありましたが、現在は当時に比べればマイコプラズマは減っている印象です。
この場でも何度か書いていましたが、マイコプラズマの迅速検査でマイコプラズマかどうかを判断している小児科医がいますが、検査の信用性が薄いため、専門医は使っていません。病気の治った頃に抗体が上がってくるため、病気の最中に診断を確定することはできないと言われています。しかし、周囲では複数の医師がこの検査法でマイコプラズマの診断を行なっています。
この検査は、ある意味、食物アレルギーのアレルギー検査に似ているのかもしれません。マイコプラズマが“陽性”という結果であっても、必ずしもマイコプラズマに現在かかっているとは限らないのです。にもかかわらず、何も知らない患者さんに「マイコプラズマです」なんて言い切ってしまうから、問題なのです。
この検査法が“当てにならない”ことは小児科医のメーリングリストでも取り上げられ、県内の多くの小児科医がそのことを知っているはずなのに、未だにその検査法で診断している医師もおり、地元の感染症情報を混乱させているように感じます。
私は、「周りにマイコの子がいた」なんて聞いても、どの医師が診断したかによって、その判断が正しいのか、正しくないのかが変わってくると思っています。
また、RSウィルスも、乳幼児がかかると高熱が続いたり、呼吸困難を起こし、入院することもある怖い病気です。冬期に流行るため、要注意ではあります。ただ、このRSウィルスの診断も医師の“方針”で大きく異なります。
昨年から1歳未満の患者さんに検査する時だけ保険適応になりましたが、未だに1歳以上の子に検査すると、医院が自腹を切らなければなりません。当院は、呼吸器にも力を入れていることもあり、1歳以上であろうが、高熱が続いたり、呼吸困難が見られたりすれば、医院が損をするなどとは考えず、患者さんに真実を伝えるために、RSウィルスを調べています。
残念ながら、あからさまに損をしたくないという態度が見え見えで、疑ってもRSを調べない医院さんもあります。そんなこともあって、市内の一部の間で、「当院ならRSウィルスを調べてもらえる」というウワサが広まっているようです。
このRS、かかった全員が高熱が続いたり、呼吸苦を訴える訳ではなく、熱も出ず、単なる鼻風邪で終わってしまうこともあり、こういった患者さんを片っ端からRSウィルスを調べても大して意味があるとは思えません。やはり、重症化して「この原因は何なんだ?」と明らかにする必要がある時に、ケチ臭いことを言わずに調べるべきでしょう。ただ、疑っても調べない医師もいるのです。
結局、患者さんの通う園にRSウィルスの子がいないと言っても、RSウィルスがいない証明にはならないし、RSウィルスがいると言われても、よそで「RSウィルスがいるのだから、この子もそうだろう」という程度の根拠で、そう診断されている患者さんもいるのだろうと思っています。
つまり、RSウィルスの診断も、マイコプラズマと同様に、地元の感染症情報の実態は、結構歪んでいるものと思っています。根拠のある医療をやろうという真面目な小児科の先生は、それ程損得は考えないでしょうから、正しい情報を提供しているでしょうし、経営を中心に考えていれば、感染症が得意でなければ、場合によっては、誤った情報を流すことになるでしょう。
上越に限らないことかもしれませんが、私の主治医は〇〇医院の先生、などと言ってその医師の診断を信じて疑わない親御さんもいるでしょう。残念ながら、“宗教化”しているようです。
アレルギーでぜんそくやアトピー性皮膚炎の誤診が少なくなく、食物アレルギーも数値のみで食べられないと診断している医師もいると言っていますが、そういう診断を繰り返しているにもかかわらず、信じて通っている患者さんもいらっしゃいます。感染症についても、残念ながら同様なことが言えると思います。
私も軽いマイコプラズマやRSウィルスを見逃していることもあるだろうと思いますし、途中で病院に切り替えている患者さんもおられるだろうと思います。少なくとも当院を頼って下さり、熱が続く、咳が良くならないと言われれば、損得は考えずに「マイコやRSウィルスを見逃していないだろうか」と考えて対処しているつもりです。
私としては、マイコは当てにならない検査を信用しすぎない、おかしいと思えばRSウィルスを調べる、という小児科医として当たり前の考えを地元の患者さんのためにも広めたいのですが、医師が複数いると、皆が同じスタンスで取り組んでくれないことが不満です。
それこそ、大統領選ではないですが、小児科医が地元のケーブルテレビに出演して、テレビ討論会でもやればいいと思っています。マイコプラズマでもRSウィルスの診断についてや、ぜんそくやアトピー性皮膚炎の診断や食物アレルギーの診断法など、どの医院がどういう思想や手法で診断しているのかを視聴者に明らかになると考えます。その結果、おかしな医療が減らせることができればと思っています。
医療の世界は、皆が正しい、適切なことをやろうとしていれば、どの医療機関に行っても同じことを言われるはずですが、そうでないのは患者さんが経験されることです。私のよく言うガイドラインそっちのけの医療をやっている医院さんもあり、“宗教化”しているケースもあるのです。もっとオープンにならなければならない、そう思っています。


