小児科 すこやかアレルギークリニック

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嫌いな言葉
2011年07月04日 更新

医療は、医学的根拠のあることをやるべきだと繰り返しています。

そのために「ガイドライン」が存在するにもかかわらず、守っていない医師も少なくありません。アレルギーは専門医がおり、普通の小児科にかかっていても良くならなければ、専門医を受診すべきだと思います。

感染症となると、小児科の仕事の大部分が感染症のため、小児科医の全てが専門家と言ってもいいと思います。ところが、思った以上に診療内容に差があるようです。

先日、こんなことがありました。小さなお子さんが40度を越える発熱で当院を受診されました。

あまりにぐったりしており、採血をさせて頂きました。細かい数字は忘れましたが、白血球が28000(正常値は6000~8000)、CRPという炎症反応は3(正常値は0.3未満)くらいでした。白血球は、体を細菌から守る兵隊さんと考えると理解しやすいと思うのですが、10000でも高いと判断するので、28000は充分に高い値です。

CRPはさほど高くはないのですが、ぐったりしており、白血球が極めて高いことから、細菌感染症としては重いと判断しました。抗生剤は内服と点滴という投与方法があるのですが、病気の勢いが強いと判断し、点滴治療が必要と判断し、その旨を説明し、ご理解を頂きました。

ポイントは、点滴治療は強要するのではなく、根拠を説明し、こうした方が改善が早いことを分かって頂くことが大切だと思います。

点滴治療をさせて頂き、翌日、再診して頂きました。作戦通りで、解熱して元気も出てきていました。ただ、熱は午前中はなくて、午後にポンと出ることもあります。可哀想だとは思いましたが、採血で客観的に評価させて頂くことにしました。昨日の白血球とCRPの値を比べれば、抗生剤の点滴の効果が一目瞭然に判断できるはずです。

結果は、白血球が13000、CRPも3を下回っていました。これで、前日の点滴治療が功を奏し、改善していることが証明できたと思います。親御さんも、しなくていい点滴は好まないでしょうし、点滴するのも可哀想なくらい元気になっていました。親御さんには白血球とCRPの見方をお教えしましたし、数値の推移を示し、点滴をする必要はないでしょうと説明しました。

日頃から、無駄な点滴をするべきではないと思っています。点滴を繰り返せば、医院の収益が上がることは分かっています。ただ、そちらに走ると、“根拠のある医療”ができなくなると思っています。地元の医療をアレルギーだけでなく、感染症でもレベルアップを図りたいと思っていますので、白血球やCRPの見方など、いわゆる患者教育にも力を入れているつもりです。

今回は、内服の抗生剤でも治療できたかどうかは分かりませんが、ある程度、病気の勢いが強いと、点滴から抗生剤を入れると、著明に熱が下がることはよく経験することです。ここぞという時には、点滴治療が有効です。今回は、点滴治療をしない方が可哀想だったのではないかと思っています。いずれにしても、作戦通りでシメシメという感じでした。

これは想定外のことなのですが、実は翌日また熱を出して、慌てて受診されました。ここで考えられることは、今回の原因の細菌がぶり返して、また熱を出した可能性もあります。また、別の風邪をもらったということも考えられます。

細菌感染には、これまで書いてきたように白血球とCRPで判断するのが、根拠のある方法だと思います。当院は開院して4年近くになりますが、採血を3日連続でやった記憶はないのですが、もし血液検査が跳ね上がっていれば、重症細菌感染症ということで入院加療も考えないといけないと思いました。

お子さんに申し訳ないと思いつつ、心を鬼にして採血が必要と判断しました。点滴治療が必要かは、まだ分からないと思います。

結果は、白血球が8000、CRPが0.6でした。これをどう判断するかと言えば、もし細菌がぶり返していれば、白血球もCRPも前日よりも跳ね上がっているはずです。ところが、ほぼ正常値に戻っています。つまり、別の“風邪”と言えると思います。血液検査が正常範囲である以上、そして何らかのウィルスが悪さをしていると考えられる以上、抗生剤の点滴は必要ないことが証明されたと思います。

実は、私の判断を説明する前に、親御さんにすっと結果だけ渡してみました。親御さんは「細菌がぶり返したのではなかったのですね」と私のこれまでの説明を理解して下さっていました。もちろん、あとで先の説明をさせて頂きましたが、白血球とCRPの見方を理解して頂けたと思いますので、いわゆる患者教育もできたのかなと思っています。

当院で、抗生剤の点滴をしている数は相当少ないと思います。胃腸炎で嘔吐や下痢を頻繁に繰り返していれば、脱水に陥っていると判断され、点滴が必要になりますが、これは脱水の改善が目的であり、胃腸炎のほとんどがウィルス感染ですから、抗生剤を使う必要はまずないと思います。

熱が出て、白血球やCRPが高い場合、さほど悪くなければ抗生剤を内服で投与しています。今回のように数値が高ければ、抗生剤の点滴が必要になると考えます。当院の場合、抗生剤の点滴が必要と判断すると、8割以上のお子さんが翌日には解熱しています。ただ、CRPが10を越えるような場合は、最重症の感染症と考え、入院加療を勧めています。

自分で言うのも何ですが、当院では必要そうなケースにのみ抗生剤の点滴を行なっているため、ほとんどの患者さんが翌日に解熱しているのだと思っています。

現在の医療は、感染症に関しては、白血球とCRPの値で判断しているため、根拠のある医療をしたいとなると、それで抗生剤の点滴の可否を判断することになると思います。

タイトルの私の嫌いなのは、「点滴をしないと治らない」という言葉です。そう繰り返している医師もいるようですが、そう言うのなら医学的根拠を示すべきです。血液検査をキチンと吟味をすれば、抗生剤の点滴は相当減らすことができると思っています。マイコプラズマと診断して、抗生剤の点滴を繰り返されている患者さんも少なくないようですが、マイコプラズマの診断自体が、根拠のないことも目につきます。

「お子さんを治す」というのが親御さんと小児科医の共通の目的です。小児科医は根拠に基づく判断をした結果、それに見合った治療法を提案すべきであり、点滴を強要するようなことは言うべきではありません。

実際、細菌感染は親御さん達が考える以上に多くはなく、ウィルス感染がほとんどです。抗生剤の点滴に通っても、解熱しなければ、ウィルス感染の可能性も高まってきます。大した根拠も示されず、点滴に1週間も通ったとおっしゃる患者さんもおり、こういう患者さんがいる限りは、感染症についても根拠のある医療を地元に広めていかなければならないと思っています。

その根拠になる白血球やCRPの見方を小さい子を持つ親御さん達に知って頂く努力をし、必要のないであろう抗生剤の点滴を減らしていきたいと思っています。