小児科 すこやかアレルギークリニック

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たかが「1」、されど「1」
2011年04月14日 更新

最近、かなりハイペースで「食物負荷試験」を行っています。

新年度と言うことで、食物アレルギー診断書の希望者が殺到しているからです。昨年もこの時期は1ヶ月に何十件もやらざるを得ませんでした。

食物アレルギーは、治る可能性は充分あります。患者さんには、卵アレルギーがあれば「卵アレルギーです」とハッキリ言っています。日頃から“食べさせる努力”をしているとは言え、除去が必要な重いケースでは、誤食はアナフィラキシーなど危険な状態を起こすことがあります。

患者さんの中には「一生食べられないの?」と思ってしまう方もいらっしゃいます。確かに、ピーナッツや甲殻類など大人でよく見られるアレルゲンの場合は、治ることを期待するのはちょっと難しいかもしれません。でも卵は別のことが圧倒的に多いと思います。

患者さんには「卵アレルギーの赤ちゃんはよくいるけど、卵アレルギーの大人っていないでしょう?」と言うと、「それもそうね」と分かって頂けると思っています。正直言うと、大人でも体調の悪い時に生卵を食べると下痢をするという方も実はいるんですが…。

他院でずっと除去を指示されていた患者さん達が「ずっと除去することが正しくないらしい」と気付かれて、当院を受診されるケースは増えています。園や学校の先生から当院を勧められることも少なくありません。だいぶ、私の日頃からの取り組みが認知されてきたように感じています。

アレルギー検査の値を見ただけで「食べてはいけない」と指導するのは、“古い対応”と言わざるを得ず、食物アレルギーの基本的な対応である「必要最小限の除去」という方針に反します。負荷試験をやっていない先生には申し訳ないですが、患者さんのために、更に患者さんは園•学校関係者の方々に広めていきたいと考えています。

卵や牛乳、小麦は頻度も高く、治りやすいアレルゲンですので、積極的に負荷試験を行っています。では、重めのアレルギー症状を引き越しやすいピーナッツ、ソバ、甲殻類は、卵や牛乳よりはやりづらいのは確かです。ただし、これも食べても何ともないことはよく経験しますので、「卵、牛乳、小麦以外は負荷試験をやりません」というのは、専門医としては中途半端な対応を言わざるを得ないでしょう。

先日、以前ソバを食べて全身に蕁麻疹が出たことのあるお子さんが、小学校にも上がるし、症状が出たのは何年も前のことなので、「そろそろ食べられるか試してみましょう」ということになりました。検査が当てにならないことも多いと言ってはいますが、流れは大事で、クラス1まで下がっていることは確認しています。

一般的にはクラス2以上を陽性と扱いますので、クラス1に下がると、“大したことない”値と言えます。専門でない先生だと「家で少しずつ食べさせてみて」と言うと思います。このお子さんの場合、以前ソバで症状を起こしているし、恩師から検査が陰性になっても気をつけた方がいいと指導されていましたので、負荷試験の適応と考えました。

負荷試験の日に、1食分のソバを持ってきて頂いた訳ですが、まず1本を食べさせてみました。何も起きません。増やし方は医師の判断で増量していくのですが、2本、5本と順調な滑り出しです。結局、1食分を完食しました。

しかし、です。徐々に体を痒がるではありませんか。急な咳き込みも見られます。急いで聴診すると、軽くゼーゼーが聞こえます。残念ながら、決して軽い症状とは言えない、アナフィラキシーと診断できます。

以前の私はそうでしたし、実際のこの状況でステロイドの点滴を第一選択にする医師は多いと思いますが、重症患者さんには自己注射薬の「エピペン」を処方するように、一気に改善させる薬としてアドレナリン(別名エピネフリンで、「エピペン」のエピはこのエピです)を選択すべきでしょう。

やはり医療は経験も大事で、アナフィラキシーの状態でアドレナリンを使うと、どういう反応をしめすかを知っておくことは大切なことです。患者さんには申し訳ないのですが、アドレナリンの筋肉注射をさせて頂きました。

結果は、ものの見事に効いてくれました。また触れようと思っていましたが、アドレナリンを使っても、じきに効果が切れるので、症状がかなり重い場合は、またぶり返してくることもあるので細心の注意が必要です。ただ、この患者さんにはぶり返しは見られませんでした。

親御さんもその一部始終をご覧になっていたので、「ソバはまだ食べられない」ということを認識して頂けました。昨日も触れましたが、最初の1本の時点で症状が出た訳ではなく、1食分食べたあとで症状が出ましたので、そういう意味ではいずれ食べられるようになるのかもしれません。ただ強めの症状を起こしてしまったので、しばらく除去は必要でしょう。

もし外出時に家族でそば屋に入って、気が緩んでソバを食べてしまったとしたら、アナフィラキシーを起こしてしまったはずであり、出先で入院になったかもしれません。すぐに適切な対処で症状を抑え込むことができました。

最近、話題の経口減感作療法は、多分日本広しと言えども、ソバの治療をやっている施設はないでしょうし、除去が難しい食品とは言えませんので、除去の継続という指示が適切だと判断しました。

ソバはやはり注意が必要と思いました。ソバに限らず、クラス1なら食べても大丈夫と思っている小児科医も少なくないと思いますが、安易に「家で少しずつ食べさせてみて」というべきではないでしょう。たかが「1」、されど「1」と言えるでしょう。

ただ、ソバがクラス2などでも負荷試験を行っても、食べても何ともないケースも経験しており、やはり「食べてみないと、分からない」といういつもの結論に至ってしまいます。

先日の恩師の退官記念講演会で、海老沢先生や宇理須先生といった日本の第一人者が集まった時に話題になりましたが、食物アレルギーを診断するアレルギー検査以外の診断法は、今のところ厳しいようです。

負荷試験をして症状が出てしまった時に、お子さんには辛い思いをさせて、いつも申し訳なく思っています。ただ、「なるべく食べさせてあげたい」という気持ちは揺らぎはなく、この経験を踏まえ、慎重に負荷試験を進めていきたいと考えています。