先週金曜の夜に、厚生労働省からヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種を中止するよう通達がありました。
私もネットニュースで、これらのワクチンを同時接種し、翌日になくなったケースが2件相次いだという一報は知っていましたが、のちに2件増え、そのうちの1例は接種3日後に亡くなったのだそうです。とてもお気の毒なことです。
それを聞いて、私は「うちで打った子は大丈夫かな?」と思いました。接種後3日も経って急変したケースがあるとなると、当院で3日(木)に接種したお子さんは、まだ3日以内だったので、とても不安になりました。
土曜にスタッフにお願いして、当院でヒブと肺炎球菌ワクチンを打ったお子さんに一人残らず電話してもらいました。そんな大ごとが起きているとは思わないでしょうし、週末でもありますし、万が一おかしくなりかけたら、すぐに病院に走ってもらおうと思ったからです。
当院は、アレルギーのお子さんが多く、中にはいくつもの医療機関を経て、当院に辿り着き、それ以来アレルギー以外の症状でも、多少遠くても当院を頼って受診して下さっていますので、私自身もお子さんやそのご家族に愛着もありますし、信頼に応えようとできる限りのことはしているつもりです。
こんな時は、「本当に大丈夫だろうか?」と不安になってしまいます。スタッフも速やかに連絡を取ってくれて、当院で接種した全員のお子さんが元気であることが分かり、ホッとしています。
先日、当院を信頼して通って下さっているお父さんから、こんなことを言われました。当院が休診の時だったようですが、たまたまある小児科にかかったところ、「ヒブワクチンを打っていないから、接種に来なさい」と言われたそうです。それを聞いて、お父さんから「そうは言われたけれど、予防接種も先生のところ(当院)でお願いしたい」と言われました。
変な言い方になりますが、本当の親切心からそう言ったのだろうか?と考えてしまいました。当院の場合ですと、具合が悪くなり、他院で治療を受けて良くならないと当院に来られる患者さんもいらっしゃいます。予防接種はかかりつけ医で受けるものと思っており、普段かかっていない患者さんに当院から接種を薦めるということはしていません。医院間の“暗黙の了解”だと思っていました。逆の立場なら、いい気はしないはずです。
ぶっちゃけて言うと、予防接種と検診は現金収入になります。どこも一人でも多くと思っていると思います。予防接種を薦めるのは、親切心からかもしれないし、そうでないかもしれません。
以前も触れましたが、当院にかかっていたお子さんの9ヶ月検診を受ける時期になった時のこと。ある医院さんから執拗に検診の予約が入っていないと電話があったそうです。その数、合計4回。しまいには「まだ予約が入っていないんですけど」と電話口でやや逆ギレした態度だったそうです。
その医院さんは、本当にそのお子さんの発育や発達を心配して、電話してきたのだろうか?と思います。ちなみにそれまでの発育、発達には全く問題なし。そこまで心配する気持ちが私には分かりません。
いつも言っていますが、医療は余計なことをすれば、医院の収益が上がるようになっています。当院はそういう姿勢に反発して、子どもの痛がる余計な検査や点滴は避けるべきだと繰り返しています。医院の方針によっては、“親切”にも検査や点滴を繰り返すことになります。
周囲をみていると、本当に良心的な医療をしているところと、“親切”過ぎる医院さんもあるようです。患者さんの中には、“親切”過ぎるのを有り難いと思っている方もいるようで、患者さんも医師を見る目を養わなければならないと思っています。
ちなみに、検診に何度も勧誘されたお子さんは、重めのアトピー性皮膚炎がありました。診断もなく、説明もなく、更に皮膚症状が改善していないのに、同じ薬が出されており、救いを求めて当院を受診されました。そこまで検診を心配するなら、アトピーを適確に診断し、ガイドラインに沿って治療すべきでした。患者さんが困っている皮膚症状を心配するのが筋だと思います。
アトピーは、1ヶ月程治療してみて改善がなければ、専門医に紹介することが推奨されています。当院へは病院の先生から紹介はありますが、開業の先生からはありません。一度受診した患者さんを、なかなか手放さそうとはしないところもあるようです。当院に通院するようになり、皮膚はかなり安定してきました。
今でこそ、日本脳炎の予防接種は復活しましたが、数年前に日本脳炎のワクチンを接種した後に、あるお子さんが神経の病気を発症し、それが予防接種に起因する可能性が示されたため、一人の患者さんが出たところで、休止となりました。
ただ、それまで日本脳炎のワクチンを受けてきたお子さんに、そういった神経の病気が起きていなかったので、因果関係を証明するのは難しいと思います。日本脳炎はかかってしまうと、発症は稀ですが死亡や後遺症を起こすことがあり、今回のヒブや肺炎球菌ワクチンのように厚生労働省が接種を休止した後も、一部の親御さんから接種を希望する声がありました。
当院でも、非常に少なかったのですが、希望者がおり、メリット、デメリットを分かって接種されるなら、希望通り接種したいと考えました。ところが、それまでは自由に入手できていた日本脳炎のワクチンが、とても入手しづらい状況になりました。一部の医療機関が買い占めたのではないかというウワサもありました。
当時は、たまたまある医療機関にかかると、中止されたはずの日本脳炎のワクチンを勧められたと言う話を何度も聞きました。実際に、ある医院さんから勧められて迷っていると、私も親御さんから相談を持ちかけられたこともあります。国が中止と言っているのに、あまり説明もせず接種を薦めており、患者さんが混乱するのは当然です。よほど“親切”なんだろうなと思っていました。
当院が力を入れている食物アレルギーは、成長期のお子さんに「あれもダメ、これもダメ」と言っていては発育、発達に悪影響が出てしまいます。ですから、アナフィラキシーを起こすかもしれないというリスクを抱えながらも、ファイナルアンサーである「食物負荷試験」をして、少しでも食べられるものは食べさせてあげたいと考えています。
もし、全ての小児科医が“親切”なら、どの医師もアレルギー検査のみで判断せず、「食物負荷試験」をやる、もしくはできる施設に紹介するはずです。ところが、ほとんどの患者さんが、当院などの専門医に紹介されることもなく、「食物負荷試験」の存在自体を知らされていません。
医療における“親切”って何だろう?といつも思っています。
これもいつも言っていますが、子どもは採血や点滴を嫌がります。子どもには「自然治癒力」という力が備わっており、熱が出てすぐに点滴をするところもあるようですが、極力しないのが本当の“親切”なのだろうと思っています。ですから、上越ではよく見られる、「点滴待ち」が当院にはないのです。営業的な“親切”なら必要ないと私は思っています。
当院にかかられる患者さんは、ぜんそくなのに“風邪”や“マイコ”、アトピー性皮膚炎なのに“乳児湿疹”や“乾燥肌”と診断されているお子さんがとても多いのですが、患者さんの信頼に本気で応えたいと思っていれば、最初はそう考えても、症状が良くなっていなければ、自分の診断や治療を間違っているのではないかと考え、見直すはずだと思っています。検診や予防接種も大事ですが、まずそういうところで医師のその患者さんに対する責任感というか思いやりというか、もしくは“親切”が垣間みられるのではないかと思っています。
医療は健康を守るのが目的ですから、予防接種も勧めることは問題はありません。ただ一昨年の新型インフルエンザのワクチンの時も、おかしな行動をとった医院さんもありました。
健康を守るために、親切心からの多少のサービスはあるべきでしょうが、医師は本来は技術を売るのが仕事なはずです。診断をキチンと付けて、適切に治療する、その上でサービスもするのが、あるべき形ではないかと思っています。


