たいていの患者さんは病気になると、まず近くの開業医にかかり、それでも改善が思わしくないと「やっぱり病院でないとダメだ」と総合病院に鞍替えされると思います。
確かに、病院には複数の医師がいることが多いし、スタッフも設備も揃っています。開業医は、入院設備を持ちませんので、入院が必要な患者さんに対応しろと言われて、それは無理な話です。
アレルギーに関しては、酸素不足になっている重い発作を起こしたぜんそく患者さんは、酸素吸入をする必要があるので、入院は避けられません。全身が皮疹だらけのアトピー性皮膚炎、アナフィラキシーを起こした食物アレルギーの患者さんも場合によっては入院が必要になることもあります。
しかし、いつも言っているようにこれらの病気には「ガイドライン」があって、診断の仕方や重症度の決め方、もちろん重症ならキチンとした治療が必要になりますので、重症度別の治療法などが書かれています。
ぜんそくは、吸入ステロイド薬などを使った継続的な治療が推奨されており、その普及とともに入院を要するような重い発作を起こすお子さんが激減しています。つまり、重い患者さんは夜中に発作を起こすことが多いので、夜でも対応してもらえる入院施設を持つ病院でしか対応が難しかったのですが、治療により発作を起こしにくくなるため、開業医でも治療できるようになってきています。
実際に、アレルギー学会でよく顔を合わせるようなアレルギー専門医の先生方も開業というスタイルで頑張っていらっしゃいます。重症なアトピー性皮膚炎も、往々にして過小治療が原因で良くなっていないので、当院ではかなり重症なお子さんでも診ています。また食物アレルギーでアナフィラキシーを起こしても、エピペンなどの使用により、入院を避けられるケースも増えていると思います。
自分でいうのも何ですが、地元では唯一の小児アレルギーの専門医として、それなりのレベルの医療をやっているつもりです。病院よりもレベルの低いことをやっているとは思っていません。開業医の中には、平気で10年前の医療をやっているところもあるようです。つまり、医療の質は、医師の意識の持ちようでどうにでもなるのです。
開業医は、重症な患者さんを抱え込む程、一人の患者さんにじっくり説明すればする程、時間を取られるので“効率”は落ちます。患者さんの話を話半分に聞いて、症状が改善していなくても同じ薬を出し続ければ、“効率”は上がってしまうのです。一生懸命やらない方が、利益が上がってしまうのが、最大の問題点でしょう。
私も怠けようと思えばいくらでも怠けられます。ただ、それでは患者さんに申し訳ないし、自分の人生を生きていることにならないと思っています。そのためには、ある程度、“刺激”が必要になってきます。
開業医では多くないと思いますが、毎年アレルギー学会で発表をしているのも、自分を鼓舞するためです。発表もしない、学会にも参加しなければ、結局は10年前の医療を平気でやってしまうことにつながってしまいます。
先日、厚生労働省の研究の協力を求める手紙が届きました。食物アレルギーで即時型反応と言って、食べてまもなく蕁麻疹が出たり、ゼーゼー言ったり、嘔吐をしたりする反応を起こして医院または病院を受診した患者さんの年齢や性別のほか、原因アレルゲン、その時の治療などを記入するというものです。
そういった大勢の患者さんを対象にすることで、今の食物アレルギーの抱える問題点があぶり出されることがあります。こういう研究は繰り返し行われており、最近は低年齢であっても魚卵でアナフィラキシーを起こすことが多いことなどが分かってきています。
当院は、この研究に参加することにしました。毎日大勢の患者さんを診るだけで疲労困憊となりますが、日本の食物アレルギーの情勢を知ることに協力していることになりますし、開業医の身であってもこういったプロジェクトに参加している意識を持つことで、自分のモチベーションを保つことができればと思ったからです。
早速ですが、ソバアレルギーの子がソバを打った部屋に行き、ぜんそく発作を起こしたり、給食で小麦を食べ、運動することでアナフィラキシーに至った、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの患者さんが受診されています。
多分、新潟県は参加する医師が少ないでしょうから、新潟の情勢を知るのに役立てて頂きたいと思っています。


