小児科 すこやかアレルギークリニック

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ちょっと違う
2011年01月18日 更新

正月休みにご実家に帰られた方も多いと思います。

出先で具合が悪くなり、実家近くの病院に駆け込んだなんて話もちらほら聞きます。子どもの病気はいつ発症するか分からないので、大変です。

当院でぜんそくの治療をしているお子さんが、下越の実家にお帰りの際に熱を出し、それが誘因となってゼーゼー言ったため、慌てて近くの小児科を受診されたそうです。

当院ではオノンという抗アレルギー薬を出していたのですが、2日分しか持って行っておらず、オノンを出してもらい、その他にフルタイドという吸入薬を処方されたそうです。残念ながら、たいした説明もなく「これを使いなさい」みたいな感じだったようです。

ぜんそくの治療は、軽い患者さんにはオノンという抗アレルギー薬を使います。それでもゼーゼー言いやすければ、フルタイドという吸入ステロイド薬を追加するのが定番の治療になっています。それからすると、今回の処方は正しいように思えます。私なら「ちょっと違う」と感じます。何が「ちょっと違う」のでしょうか?。

ぜんそくの治療は、2種類存在します。発作を起こして息苦しい、眠れないなどの症状を和らげ、改善させる治療です。もう一つは、ぜんそくは慢性の病気です。ゼーゼーを繰り返せば、よりゼーゼーしやすくなります。そうすることで、ゼーゼーしやすいクセがついていまい、大人に持ち越してしまう可能性が出てきます。

小児ぜんそくの治癒率は5~6割と言われています。過半数は治る希望があるため、子どものうちに治しておく努力が必要になります。そのためには、ゼーゼーいうクセを取り払えばいいのです。発作を起こさないように予防すれば、ゼーゼーしないクセがつき、治ってしまう可能性が出てきます。よく「ぜんそくで定期的に通院している」という患者さんがおりますが、予防治療をしているのです。

以上をまとめますと、発作を起こして苦しく、園や学校を休まなければならない状況からいち早く脱するという「発作を治める」治療法と、大人に持ち越さないための“長期戦略”である「ぜんそくを治癒させる」治療法の2種類があることになります。長期戦略の治療法の代表格がフルタイドという吸入ステロイドと言えます。

軽いぜんそくの患者さんは、たまにしか発作を起こさず、しかも症状も軽いので、放っておいても治る可能性があり、先程の後者の継続的な「ぜんそくを治癒させる」治療が必要がないと思います。

一方、繰り返し発作を起こす場合は、ぜんそくが重い可能性があります。そこで大事なのが、「重症度」になります。「軽症」なら何も重症用の治療をする必要はないし、「重症」なら大人に持ち越さないようにじっくりと継続治療する必要があります。どうやって軽いか重いかを判断したらいいのでしょうか?。それは、私がよく言っている「ガイドライン」を参考にすればいいのです。

ぜんそくのガイドラインには、ぜんそくの診断法、重症度、治療法などが記載されています。アレルギーの専門医は適切に治療できるでしょうから、逆に言えば、専門でない医師のために存在します。しかし実際のところは、専門でない先生に少しずつ浸透しているとは言え、守っていない先生はまだ多く存在します。ですから、医師によってぜんそくの診断や治療が異なるのです。ガイドラインという治療のひな形があるので、本来ならどの小児科医が診ても同じ治療になるはずです。

さて、お世話になっておきながら申し訳ないですが、今回のケースで私はとても違和感を覚えました。この患者さんが本当にフルタイドという吸入ステロイドを使った治療が必要かどうかの検討がなされていないからです。

先程、ぜんそくの治療には2週類あると言いましたが、風邪を契機に悪化した時は、「発作を治める」治療が必要であり、今回はそれに当たります。出先では「ぜんそくを治癒させる」、フルタイドを使った治療は二の次となると思います。

日頃から診ている私の印象としては、たまたま風邪を引いて、ぜんそくが悪化しているのです。風邪が治ってしまえば、オノンという軽症用の治療で症状は安定する可能性が高いと考えています。フルタイドまでは必要なかろうと思います。いや、正確にはフルタイドが必要になるかは、今後の経過の中で分かっていくことだと思います。

また発作時にフルタイドという吸入ステロイドを吸っても、急激な効果は見込めません。発作で息苦しい状況では、上手く吸入できないはずだし、気管支にある痰が邪魔をして、体に取り込めないはずです。

私であれば、病院で行う吸入器で、吸入ステロイドではなく、気管支拡張薬の吸入を行ったと思います。それで改善がみられれば、軽い発作と判断されます。あとは風邪で発作が誘発されたため、風邪薬で様子をみたと思います。

吸入で思ったような改善が得られなければ、重い発作と判断され、点滴などの治療が必要になり、それでも呼吸困難が改善なければ、入院が望ましいとガイドラインに明記されています。上越で診療していると、ぜんそく発作のためにある医療機関に1週間も点滴に通ったとよく聞きます。敢えて言いますが、ガイドラインを無視した我流の治療であることがよく分かります。

今回のケースでは、気管支拡張薬の吸入も行われておらず、フルタイドが出されていました。フルタイドという、いわゆる強い薬は重症度を見極めた上で、本当に必要な患者さんに処方されるべき薬であり、出先の病院でポッと出される薬ではないと思います。私ならば、「今回風邪で悪くなったのだと思うけれど、もしかしたら今後の経過によってはフルタイドという吸入薬が必要になるかもしれません。地元に帰ったらかかりつけと相談して治療方針を決めて下さい」と言ったと思います。

小児ぜんそくにおいても患者さんや医師の間にも誤解が多く、適切に診断されておらず、発作を繰り返している患者さんは少なくないと思っています。入退院を繰り返していた患者さんが、当院に相談に来られ、それ以降は発作が激減したというケースを経験します。私はガイドライン通りに治療しただけなのです。

小児科医の間にガイドラインは普及しつつありますが、まだ適正に使用されていないと言わざるを得ません。この場では食物アレルギーのことを書くことが多いのですが、ぜんそくについても触れていき、困っている患者さんに正しい情報を伝えていかなければならないという気持ちを強く持ちました。