冬休みに一旦流行の勢いが縮小していたインフルエンザが、流行の兆しをみせています。
当院は、アレルギーの専門施設という認識がまだ強いということと、市内の小児科では一番新しいため、多分他の小児科よりは感染症の患者さんが少ないのだと思います。
にもかかわらず、市内の中心部と言っていい小学校からインフルエンザの患者さんが複数受診されました。年明け前は、上越市の郊外の方の小学校からの患者さんでした。今回は、市の中心部に近いところにある学校ですので、残念ながら流行は一気に拡大してしまうものと予想されます。
これまで診た患者さんの今のところの印象は、あまり高熱ではなく、治療により速やかに解熱するようです。ただ、予防接種を受けているお子さんでもかかっています。兄弟がかかって、もらってしまったケースもあります。
上越での流行は、いわゆる「新型インフルエンザ」と思います。今回のインフルエンザの予防接種は、「新型」も入っていたのですが、あまり予防効果が期待できないのでしょうか?。もしくは、一応は効いているので、かかっても軽く済んでいるのかもしれません。
インフルエンザに関しては、このような状況だと思いますが、現在、市内で流行している病気といえば、一時期のピークは過ぎていますが、感染性胃腸炎、溶連菌、おたふく風邪でしょうか。
胃腸炎は、ノロウィルスもいますが、ロタウィルスやアデノウィルスも混じります。どれも当てはまらないケースもあります。ノロやロタウィルスといったウィルスが原因の場合は、特効薬がありません。
感染性胃腸炎は熱も出ることがあるため、抗生剤を飲むものと思う患者さんもお多いでしょうが、ほとんどがウィルスが原因のため、処方すべき薬ではありません。また、どの医療機関に行っても「整腸剤」が出されます。これを特効薬と思っている方も多いでしょうが、読んで字の如く「腸の調子を整える薬」でしかありません。
胃腸炎の時は、呕吐や下痢がみられますが、体に入ったウィルスを体が追い払おうとしています。つまり、上から追っ払うのが「呕吐」であり、下から追っ払うのが「下痢」です。呕吐を“吐き気止め”、下痢を“下痢止め”で抑えてしまったら、体の中にウィルスが留まってしまいます。基本的には、嘔吐や下痢を止めるのは、理にかなっていない治療になります。
ただし、吐き気が強くて、水分も摂れなければ、脱水になってしまいます。そんな時は、やむを得ず吐き気止めを使わせて頂いています。“やむを得ず”と書いたように、「嘔吐」=「吐き気止め」ではないのです。と同時に「嘔吐」=「点滴が必要」ではありません。嘔吐を繰り返し「脱水」といって水分補充ができず、尿量が少なくなって初めて“点滴が必要”になります。
胃腸炎は、一般的には1日勝負と言っていいと思います。どういうことかと言いますと、嘔吐の強い状態は1日程で軽快してしまうことがほとんどです。
例えば、お子さんが2回嘔吐した状態で受診されたとします。普通は、2回程度の嘔吐なら「脱水」にはならないのです。ポイントは、嘔吐がその2回目が最後かもしれないし、更に3回、4回と続いてしまうかでしょう。脱水になるか、ならないかの分かれ道でもあります。先程言ったように、1日勝負ですので、できれば嘔吐が終わろうとしているのか、更に続くのかを見極める作業が必要だと思います。
点滴は脱水の子を潤わせる作業ですが、医療は何らかの検査や処置をすれば医院が潤う結果になります。ただし、小児科医は、子どもが相手です。大人に比べ脱水になりやすいのは事実ですが、必要がないであろう点滴をするのはプロとは言えないと思います。
診察室に入ってくると「チックン(点滴)しない?」と繰り返し聞いてくるお子さんがいかに多いことか。本当に必要なものは、必要です。それは致し方ありませんが、胃腸炎の場合は、嘔吐が終わろうとしているのか、続きそうなのを見極める努力が大切でしょう。
それは“未来”のことなので分かりませんが、当院ではこうやっています。医院の個室に入って頂き、そこで水分を摂って頂いています。ちょっと時間をかけて、ゆっくりと摂らせてみると、意外に吐かないものです。その判断は絶対ではないでしょうが、ほとんどのお子さんが、その後は吐かない、もしくは多少吐いても、点滴をせずに乗り切ることができます。つまり、点滴が必要なかったということです。
タイトルの「キャンペーン」と言うのはやや大袈裟かもしれませんが、「胃腸炎」=「点滴」、「嘔吐」=「点滴」とお考えの患者さん、親御さんが非常に多いので、「嘔吐したって、意外と点滴は必要ない」ということを地元の方々に知って頂こうと努力しているつもりです。そういう意味での「キャンペーン」なのです。
最近、当院にかかりはじめたお子さんが、親御さんから「病院に行くよ」と言われて、「あー、あの痛くない病院ね」と行くのに乗り気になったそうです。当院の方針がお子さんにまで伝わっていて、ちょっと嬉しくなりました。
繰り返しになりますが、胃腸炎のお子さんを片っ端から点滴をする必要はなく、本当に必要な処置だけ行うのが、小児科のプロだと思っています。この「キャンペーン」は是非とも続けて行こうと考えています。


