小児科 すこやかアレルギークリニック

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どこまで話せば
2010年11月05日 更新

最近は、咳の受診するお子さんが多く、かなり忙しい状態が続いています。

患者さんを目の前にすると、いかに速やかに咳や熱の困っている状況を改善させるかで頭がいっぱいですが、仕事が終わると、例の園の先生を対象にした感染症の講演のことが気になっています。

スライド作りは、それなりに順調に進んでいます。最初はアレルギーなら2時間でも3時間でもしゃべられるけど、感染症はすぐに終わってしまうのではないか?なんて不安もありましたが、今では時間が足りない公算が大きくなってきました(汗)。

感染症の症状としては、発熱、咳、鼻水、嘔吐、下痢、腹痛、けいれん、発疹、局所の腫れ(耳下腺の腫れなど)、耳垂れ、目やになどがあります。嘔吐だと、いわゆる胃腸炎でよく見られますが、溶連菌でも起こりますし、髄膜炎、脳炎でも起こります。

けいれんも緊急性のある症状ですが、後遺症を起こし得る肺炎球菌やインフルエンザ菌による細菌性髄膜炎でも起きますし、熱で誘発された熱性けいれんもそれなりの頻度でみられます。

発疹も、突発性発疹、麻疹、風疹、水痘、手足口病、リンゴ病、溶連菌、水イボ、とびひなどもありますし、感染症ではないじんましんや多形紅斑などとの区別も必要です。これらは小児科医ならではのきめの細かさで、見極めています。

子どもの感染症の原因と言えば、肺炎を引き起こすクラミジアやオムツかぶれの真菌もありますが、メインはウィルスと細菌でしょう。細菌感染なら、溶連菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、大腸菌などが原因となりますが、ウィルスなら、麻疹、風疹、水痘、ムンプス(おたふく風邪)、ロタ、ノロ、アデノ等々あります。

大抵の小児科医が、子どもが熱が続くと炎症反応(CRP)という検査をしていると思います。細菌感染の時は高値となり、ウィルス感染の場合は健康な人と大きく変わりません。

当院の場合は、熱が3日以上続けば採血させて頂いています。最近は熱の続くお子さんが少なくなく、1日数人は検査をすることが多いのですが、一人は乳児で先のCRPは8.2でした。正常は0.3以下なのでとても高い値でした。咳も鼻水もなく、のども大して赤くありませんでした。検尿をしたところ、肉眼的にもうっすらと濁って見え、尿路感染症が疑われる状況でした。

こういった場合、入院治療が原則です。尿の培養検査を行い、多量の菌が検出されることで尿路感染症の診断が確定します。腎臓まで菌が回っていることが多いので、外来で中途半端な抗生剤を使うのではなく、入院の上できっちりと菌を叩く治療が大切とされています。また、なぜ腎臓に菌が回ってしまったのかをエコー検査で精査する必要があるのです。開業医では対応しきれない状態なので、外来での対応は難しいはずなのです。

私はおかしな対応はしたくないので、もちろん親御さんに説明した上で、病院に入院医療をお願いしました。同じ病態でも、点滴に通わせる医師もいるようですが、本来なら医師によって対応が異なるのはおかしいはずです。

別の熱の続くお子さんに検査をさせて頂いたところ、CRPは0.5でした。熱が続いても、健康の人と同等の値なのです。これはウィルスがいたずらをしている証拠です。ウィルスに効く薬といえば、インフルエンザの場合の「タミフル」、水ぼうそうの場合の「ゾビラックス」くらいでしょう。つまり、その他のウィルス感染では、薬がないのです。意外とご存知でない方が多いのです。

「検査が悪くないのに、抗生剤の点滴を受けた」という患者さんが時々いますが、額面通りに受け取れば、治療としては理にかなっていません。私に言わせれば、元気がそこそこあるのであれば、不要な点滴と言えます。不要な点滴はしないのがルールだと考えています。検査は悪くなかったけど、食欲は落ちていたので、抗生剤の入っていない点滴を受けたと言うのであれば、分かります。

いわゆる風邪の場合、多少熱が続いても、元気なことが多いので、当院では点滴はまずしていません。上越に来て、「点滴待ち」という言葉を初めて聞きました。医院には点滴のスペースが数人分あるでしょうが、そこが埋まっており、点滴を受けるために、点滴をしている子が終わるのを待たなければならないのだそうです。当院では開院3年で、“点滴待ち”になったことは一度もありませんし、当院にかかっているお子さんが点滴をしないがために症状が悪化することはないと思っています。親御さん達が思う程、点滴は必要ないことが多いし、逆に点滴重視の風潮を何とかしなければいけないと思っています。

大勢の園の先生方を前に子どもの感染症の話をさせて頂くのは、こういう風潮を改善させる意味でもいい機会だと思っています。子どもは点滴など痛い処置を嫌がります。プロであれば、子どもの嫌がることはなるべくせずに、薬の内服などで改善させる努力をすべきだし、そこが腕の見せどころな訳です。

色々と話していると、すぐに1時間、2時間は経ってしまいそうです。園の先生のお話では、冬に流行る感染症とその対策を中心にした話をご希望されていますが、感染症は医師によって診断が異なり、指導も違ってしまっているそうです。先日も述べたロペミンという下痢止めの使い方もそうですし、安易に解熱剤に頼り過ぎないこと、使ってはいけない解熱剤があることも医師により差が出そうです。

昨年は新型インフルエンザが流行しましたが、弱毒性のウィルスだったからあの程度で済んだと言えますが、強毒性の鳥インフルエンザが流行れば、数十万人が死亡すると予想されています。以前も当院のやっている院内勉強会で、鳥インフルエンザが流行した場合の対応を話したことがありますが、できればその辺も触れたいと思います。

感染症の講演といっても、「麻疹はこんな発疹が出て、こんな経過をたどります。次に風疹は…」などと話すだけなら2時間も必要ないでしょうが、私も地元の医療事情が分かってきましたし、話したいことは沢山あります。逆に「どこまで話せばいいのだろう?」という思いも出てきています。

これから流行るであろうインフルエンザと、ノロウィルス、ロタウィルス、地元ではキチンと調べられていないことの多いRSウィルスなどをメインにすることは決めています。マイコプラズマは上越だけ多いことになっているのですが、迅速検査は専門医の間では信用性が低いとあまり使われていません。それを知らずに短期間に何度もかかっている患者さんが大勢いることになっています。親御さんまで数日会社を休むように指示されたりしています。マイコプラズマの適正診断も是非とも話す必要があると思っています。

感染症の話は、アレルギー程は話し慣れていないため、どこまで話せばいいのかと大いに悩んでいます。しかし、園では医師間に基づく差などで混乱しているようですので、医学的に根拠のある話をして、混乱を減らせるようにしなければならないと思っています。