ラテックスアレルギーという病気があります。
先日、アレルギーの体質の強いお子さんが、学校から「アレルギー専門医を受診して下さい」と言われて、当院を受診されました。ようやく地元上越市でも、アレルギーの専門医がいるという認知が深まってきたようで、嬉しく思っています。
これまでは「お医者さんにみせれば」それで充分という風潮があったので、一歩前進といった感じでしょうか?(笑)。
もともとの相談は、給食を食べて昼休みに遊んだら、皮膚が赤く腫れて、ゼーゼー言ったというものでした。近くの小児科に行ったら「運動誘発ぜんそくではないか?」と言われたそうです。
最近は急に寒くなり、ぜんそくの調子の悪いお子さんが増えました。調子の悪い時は時に、走るとゼーゼー言ったり、咳き込むのですが、それが「運動誘発ぜんそく」です。ただ、運動誘発ぜんそくでは説明ができないことがあります。皮膚症状です。ここは、時々話題に上げている「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を考えなければいけないはずです。
申し訳ないですが、よく知らないとこの病気を疑いもしないのでしょう。逆に重い病気を念頭に置くべきでしょう。話を聞いたところでは、充分考えられます。しかも、何度か繰り返しています。「二度あることは三度ある」ので用心が必要です。
そのお子さんが、風船を膨らませていたら、口の周りや顔が赤くなったそうです。風船のゴムの成分に反応したものと考えられます。天然ゴムの成分をラテックスと言いますので、ここは「ラテックスアレルギー」と診断していいでしょう。
一般的には、医療関係者に多いとされています。何故なら、外科系の医療従事者は手術などでゴム手袋をはめる機会が多いので、ゴムとよく接しています。歯科医にも多いとされています。手袋をはめているうちに、ゴムに感作と言って反応してしまうのです。
実は先のお子さんは、ゴム手袋をはめた時に、手が赤く腫れたという既往があります。アレルギー体質が強いため、いつしかゴムに感作されてしまったのでしょう。以前、ラテックスアレルギー研究会で話でこんなことを聞いたことがあります。100円ショップなどで売っているゴム風船は、ラテックスの含有量が多いと言うものです。子どもが風船を吹いて、アレルギー症状を起こす報告はあるのだそうです。
ラテックスアレルギーには、フルーツアレルギーを合併することがあります。聞いてみると、桃にもアレルギーがあるそうです。普通なら合併しているだけと思うでしょうが、そうではないのです。
「ラテックス-フルーツ症候群」という病気があります。ラテックスと似た構造を持つ成分を含むフルーツにもアレルギー症状を起こしてしまうというものです。メロンや桃、アボガド、栗などと言われています。この患者さんも、今のところアレルギーの出るフルーツは桃だけだそうですが、いずれメロンやアボガドなどに反応してしまうかもしれません。
先日も触れましたが、食物アレルギーの相談にこられたお子さんの家族歴を問診したら、母に栗アレルギーがありました。「栗は珍しいな」と思い、すぐにラテックスアレルギーが頭に浮かんだので聞いてみたら、ラテックスにも反応してしまうそうです。仕事は看護師さんだそうで、知っている医師ならすぐに関連づけられるのですが、知らなければ「なんだそりゃ」なんてことになってしまうのでしょう。このお母さんはまさしく、ラテックス-フルーツ症候群なのです。
お子さんがかかっただけなのですが、ラテックスと関連の強いフルーツには、より強いものと、さほど強くないものがあり、今は食べられても、今後より関連の強いフルーツが食べられなくなる可能性があります。食物アレルギーの本に、関連の強いフルーツが列記されていましたので、コピーしてお渡ししました。お母さんの診断は内科の先生が苦労して診断されたそうですが、アレルギーを起こす食品が増えた時に、すぐに分からないと困るだろうと思ったからです。
だいぶ前にも触れましたが、世界丸見え仰天ニュースというテレビ番組だったと思いますが、出産の手術中にアナフィラキシーショックを起こしたケースが取り上げられていました。執刀医がメスで切開した傷口に触れたら、みるみる具合が悪くなったそうです。ショック治療をして回復したのですが、原因はラテックスアレルギーによるものでした。
最近は、医療従事者の感作を防ぐため、もちろん患者さんを守るため、ラテックスフリーと言ってラテックスを含まない手袋を使う病院が増えています。先のラテックスでアナフィラキシーショックを起こしたケースはそう昔のことではなく、ラテックスフリーの手袋が使われている時代のことですので、ラテックスアレルギーに関する認知の低い病院だったと言わざるを得ません。
最近の情勢を知っていれば、避けられていたかもしれないのです。とはいえ、全国の病院ではそういった手袋を導入しているところは、まだ一握りであろうと思っています。まさに知っている、知らないで生命の危機的な状態に陥っていまうかどうか分かれてしまうのです。恐いことだと思います。
当院は、インフルエンザのワクチンで忙しさが増しても「食物負荷試験」をやっています。同業者の先生は、当院が負荷試験をやっていることをご存知でも、いまだに紹介のない状況が続いています。ラテックスアレルギーといい、予算の関係などで知っていて対応しないのは、その医療機関の本質にかかわることです。アレルギーを持つ患者さんは多いので、もっと患者さんサイドに立った医療が広まることを願ってやみません。


