当院を初めて受診される患者さんで、乳児と言ったらほぼ全員が「湿疹が治らない」という状況で受診されています。
ほぼ間違いなくアトピー性皮膚炎が見逃されています。“乳児湿疹”と言われているか、診断名が告げられずに、説明もなくステロイド軟膏が処方されています。プロらしからぬ対応と言われても仕方ないでしょう。
先日、浜松で「間違いだらけの小児アレルギー医療」という題名でいかにガイドライン通りの医療が行われていないか、についてお話ししてきました。診断が正しくなく、治療が中途半端で良くならないケースが圧倒的に多いのですが、巷にはステロイド軟膏に対する抵抗感がいまだに残っています。以前よりは少なくなりましたが、「ステロイドは絶対に使いたくない」という患者さんがいるのも事実です。そんな状況に至った歴史についてもお話ししてきました。
この現実は、小児科医や皮膚科医にも責任はあると思っています。もちろん、正しい情報も間違った情報も垂れ流し状態のインターネットの影響もあるでしょうし、お母さん仲間からの情報もあるでしょう。そういう患者さんに対して、“プロ”である医師がキチンと向かいあってこなかったこともあるのだろうと思います。
先日、受診された赤ちゃんは、乳児湿疹と診断され、ロコイド軟膏が処方されていました。「強い薬だから、3日以上は使わないように」と指導されていたそうです。その通りにやっていたのですが、塗っては悪化し、また塗っては悪化の繰り返しだったそうです。多分、新潟県でこんな使い方を指導されている患者さんは想像できないくらい大勢いることだろうと予想しています。このステロイドに対する偏見は、驚いたことに医師の間でもあるのです。
私はこの患者さんに、アトピー性皮膚炎のガイドラインを示しながら、アトピー性皮膚炎があること、まだ乳児なので食物アレルギーの関与も考える必要があること、皮膚の炎症を抑える必要があることなどを説明しました。
親御さんが一番、“抵抗”したのは、ステロイドを3日以上使うことでした。一度、医師の口から発せられた言葉は、お母さんの心に根深く引っかかっているようです。180度違うことを言われると、混乱するのは当たり前ですが、嫌な言い方になってしまいますが、専門医にしてみれば誤った指導は本当に迷惑な話です。逆の説明をし、説得するのは時間がかかります。ステロイドの使い方に自信がなければ、すんなり紹介してもらった方が患者さんにとってはどれだけ有り難いかと思ってしまいます。今後もこういった指導をされ続けるのでしょう。ステロイド外用薬に対する誤解が更に生まれてしまいます。
今年は地元の園や学校の先生からアレルギーの講演を依頼されています。かなり参加して頂けるようなので、少なくとも地元の間では正しいアレルギーの知識を持って頂かなければならないと思います。アトピー性皮膚炎に関するステロイド外用薬の正しい使い方もその一つです。
長年行われている正しくない指導が浸透している場合は、その誤解をひとつひとつクリアしていかなければなりません。思った以上に大変な作業になります。私にとって受診して下さる患者さんに個々に説明することも大事ですが、子どもを扱う職種の方にステロイドに関して正しい知識を理論的に説明すれば、正しい情報を一度に発信できるメリットが大きいのです。「あそこに行けば、正しいガイドライン通りの医療をやってもらえる」と知って頂くチャンスだと思います。
開業医にとって、自院の患者さんを増やすのは経営面では大事なことかもしれません。ただ、自分の医院の患者を増やすというような低レベルな目的ではないつもりです。ひとりひとりにガイドラインを示し、誤解を正していくのは労力が必要です。逆に時間がかかります。手間がかかってもいいから、正しい医療を受け、皮膚を掻き壊し、眠れないような日々から脱却して欲しいと願っています。


