私は、常々アレルギーで困っている子ども達が多く、医師のやり方もまちまちであり、ガイドラインに沿って対応し、同じ方針のもとで治療すべきだと言い続けています。
今は格差社会と言われていますが、医療においてもその“格差”は存在しています。医師が専門であるかどうか、“企業努力”をしているかによって大きな差ができてしまっています。
新潟県は、アレルギーの医療レベルが全国的にも高くありません。未だに患者さんの方が「医師に診せれば安心」と考えており、医師も専門医に紹介しようとする動きはほとんどありません。その結果、ビックリするような医療が行われてしまっています。
今日は、食物アレルギーにおける、「インタール」という抗アレルギー薬にスポットを当ててみたいと思いますが、これまた誤った使い方をされていることが多いのです。
食物アレルギーの患者さんは増加しておりますが、その治療法で確実なものは「アレルゲンを食べないこと」に尽きます。当院のホームページをご覧の方はもうご存知でしょうが、アレルギー検査は皆さんが思う程、当てになる検査ではありません。「検査結果が陽性であれば、食べてはいけない」という指導は、正しくないことが多いのです。
微量でも強いアレルギー反応を起こしたことのあるお子さんは例外ですが、未だに繰り返されている指導で、卵白がクラス2や3程度であっても、「卵を含むもの全てを食べてはいけない」というのは行き過ぎであることが多いのです。
仮に過去に強めのアレルギー症状を起こしたことがあったとしても、卵アレルギーは成長とともに治る可能性があるので、何年も除去し続けるのは感心しません。「少しは食べられるのではないか?」と攻めの気持ちがないといけないと思います。こういう患者さんは「食物負荷試験」をできる医師が診るべきですが、紹介もせずにひたすら除去し続ける小児科医が少なくないのは残念なことです。その結果、10歳になっても卵を除去し続けているお子さんもいます。
ひたすら除去を指示する医師の間で、いまだに多用されているのが「インタール」という抗アレルギー薬です。
食前20分前に飲むのが使い方ですが、お腹が空いて泣いているお子さんを必死でなだめすかして時間が経ってから、食事を摂らせているお母さんも少なくないと思います。ちなみに、当院は県内でも食物アレルギーの患者さんはトップクラスに大勢診ていると思いますが、まず使っておりません。私の認識では、「食物負荷試験」を行って何を食べてはいけないというのが分かっていれば、「インタール」を飲ませる必要はあるでしょうか?。
そもそも、卵を食べて蕁麻疹が出たことのあるお子さんに対して「インタール」を使う方法は保険適応がありません。使われている場合は、誤った使い方である可能性が高いのです。ではどう使うのが正しいのか?。
食物アレルギーの病態は大きく分けて二つに分かれます。卵を食べて蕁麻疹が出てしまう「即時反応」タイプと食事や母の母乳経由でアトピー性皮膚炎が悪化する「食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎」タイプです。
「インタール」は後者にのみ適応があるのです。つまり、前者である、即時反応を起こすタイプは、原因食品を絞り込み、それを食べないようにして症状を抑えるしかないのです。先日、某市から来られた患者さんは卵で症状が出ると分かっていて、なぜか「インタール」が出されていました。当院に受診された患者さんで、「インタール」を飲んでいる患者さんは即刻中止させて頂いていますが、症状が悪化したと言われたケースは一度もありません。
「アナフィラキシーを起こすと悪いから飲んでおきなさい」と小児科医から言われて、毎日3回、指示通りに苦労しながら飲ませている親御さんもいらっしゃるでしょうが、重い症状は「インタール」では抑えることができないと言われているのです。これを読んで、ビックリしている親子さんもいらっしゃることでしょう。無駄で不必要なことをしないためにも、ガイドラインに則った医療をすべきだし、患者さんからすれば専門医にかかることが重要なのです。
ガイドラインによれば、多種類の食品が原因の場合、家庭や園での除去が不完全な場合は「インタール」を補助的に使ってもよいと記載はされていますが、1~2ヶ月使ってみて、効果が確認できなければ漫然と継続すべきでないと明記されています。先日来られた患者さんは、何年も処方されていました。“我流”の治療と言わざるを得ません。
県内には、今日も子どものためにと必死に「インタール」を飲ませ続けている親御さんが少なくないと思いますが、この文章を全員に読んで欲しいと思っています。「インタール」を出し続けている医師に言いたいのは、育ち盛りのお子さんに毎日食事の20分前に1日3回薬を飲ませ続けることがどれだけ労力が必要なのか考えてください、ということです。それを考えると、「食物負荷試験」を行って何を食べてはいけないと明確にすることが、いかに重要かが見えてくると思います。
飲む必要がないかもしれない薬を、毎日飲ませ続けることは避けるべきです。私は県内から理論的でない我流の治療をなくしたいと考えています。こういう患者さんがいる限りは、私は正しい、ガイドライン通りの医療を普及させるために頑張っていかなければならないのだと思っています。


