日々の診療で忙しいのですが、時々は上越市の1歳6ヶ月検診に行っています。
開院して3年。ようやく当院かかりつけの患者さんの顔をよく見かけるようになりました。ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギーがあり、何度も通院して下さっているので、顔を見れば誰だか分かります。
検診は数十人来られますので、二人の医師で対応しています。順番で振り分けられますので、私のところに来るかどうかは分かりません。そんな中、どうしても私に診て欲しいというご希望を頂きました。当院かかりつけの方ではないようです。
話を聞いてみると、卵アレルギーの相談でした。食物アレルギーは乳幼児には5~10%あるとされ、かなりの頻度であり、しかも卵は食品別では最多です。悩んでいるお母さんは結構いらっしゃるはずです。
卵入りのビスケットでは何も起きないが、卵ボーロだと口の周りが赤くなるとおっしゃいます。アレルギー検査も卵白が陽性だそうです。本来はかかりつけ医が対応しなければならないのですが、食物アレルギーの診療には最低限の知識が必要です。ビスケットが良くて、卵ボーロがダメである理由も説明できなければなりません。
卵ボーロは、その作り方の中で卵成分が残ると聞いています。一見、ビスケットも卵ボーロも卵入りのお菓子と言うことで大差はないように思えますが、含有量が異なるようです。その差が表れたのであろうと説明しました。
最近、診療していて思うのは、結構若いお母さんでも充分な説明を求めている方が多いということ。そりゃ、かわいい子どもを守るために、病状を理解している必要があります。
ぜんそくと診断されてもいないのに、「オノン」や「プランルカスト」などのぜんそく薬が処方されていたり、“湿疹”に何の説明もなく「アルメタ」などのステロイド軟膏が出されているケースを時々見かけます。それを知ってビックリして当院に駆け込まれることもあり、これはハッキリ言ってルール違反です。充分な説明を求めるのは患者さんの権利であり、こういう行為が“ルール違反”であることを親御さんは知るべきでしょう。いまだに「話さえまともに聞いてもらえない」と愚痴る親御さんも少なくありません。効率重視の医療の“犠牲”になっていると感じています。
この場でも時々触れていますが、食物アレルギーを“食べて治す”という経口減感作の考えはウワサがウワサを呼び、かなりお母さん方の間でも広まっているように思います。私をご指名のお母さんからこんな質問を受けました。「症状が出ても食べ続けていいのでしょうか?」と。
この質問には、正直少し困ります。話題の「経口減感作療法」の場合、食べて体を慣れさせるので、症状が出ても食べ続けます。もちろん強めのアレルギー症状が出れば、抗アレルギー薬やステロイド薬を飲むこともあります。それでもめげずに食べ続けるのです。
“症状が出ても”というのは、当然ながら強い症状が出るのなら、「食べてはいけない」ことになります。軽い口の周りの発赤程度だと、食べ続けていいのかは正直迷います。食べ続ければ消えてしまうものなのか、体調がいい時だから、たまたまその程度で抑えられていて、体調が悪い時なら強めのアレルギー症状が誘発されてしまうかもしれません。
食物アレルギーの難しいところは、食べられていた量が、体調によっては食べられないというように変化してしまうことでしょう。ある程度は安全域というか、保険を残しておかないと、場合によってはドーンと症状が出ることも有り得ます。
かといって、若干卵が入っている加工品なら問題ないことも多いし、完全に除去し続けることが、逆に卵に対する過敏性を増してしまう可能性が指摘されています。これまでの指導が正しいのなら、症状が出るものは「食べてはいけません」と言えば済んだのですが、新しい考え方が広まってくると、「食べ続けていいのでしょうか?」の質問に、今の私には明快に答えることができずにいます。多分、人によっては良く、人によってはダメということなのだろうと思っています。
患者さんによく言っているのが、「卵アレルギーの赤ちゃんはよく聞くけど、卵アレルギーの大人って聞きませんよね?。成長とともに治る証拠ですよね?。」ということです。中には一生除去しないといけないと思っている親御さんもいますが、そうでないのは明らかです。
よく「2歳まで食べない」と指導している小児科医もいますが、なぜ2歳なのでしょう?。私は「食物負荷試験」をやっていますので、1歳前に卵を解除できる子もいるし、小学生になっても食べられない子もいます。食物アレルギーも軽い、重いがあるので“2歳まで”という話に根拠は何もないのです。除去する必要がないのに、2歳まで除去させられてしまう親御さんもいるし、2歳を過ぎても食べられずに落胆している親御さんもいることでしょう。もっと親御さんの気持ちを考えるべきでしょう。
私は一人の開業医ですから、「経口減感作療法」がどういう形で広まっていくのか、行く末を見守るしかありません。「食べ続けていいのでしょうか?」の問いに100%の確実性を持って答えられる医師はいないと思うのです。
検診とはいえ、判断が難しいことを少し時間をかけて説明しました。自分のかかりつけの患者さんではないからと、手を抜いて答えるようなことはしたくなかったのです。ただ確実に言えることは、アレルギー検査の値だけで食べられる、食べられないの判断をすべきではないと言うことです。いずれ「食物負荷試験」をやって医師の目の前で卵を食べさせてみるということはやった方がいいことはお伝えしました。
今回のお母さんが、何故私を指名した下さったのかは分かりませんが、食物アレルギーの関心が高まってきているお陰なのかもしれません。食物アレルギーの正しい知識や検査法がもっともっと地元上越に広まっていくといいなと思っています。


