寒暖の差が大きいと、ぜんそく発作を起こしやすくなります。
最近は、ちょうどその時期に当たり、咳が止まらないと困って受診されるケースが多くなっています。
ひとつ注意したいのが、ゼーゼーするお子さんがぜんそくかと言えば必ずしもそうではありません。逆にゼーゼーしないからぜんそくではないと否定できるものでもありません。
午前中に隣の糸魚川市から咳の患者さんが受診されました。アトピーのため、当院で治療中だったのですが、咳がひどいと当院を頼って受診されました。咳が強めで、「風邪にしてはちょっと変だな」と思っていたら、お母さんからヒントがありました。近くの園でRSウィルスが流行っていて、RSウィルスにかかっている子と遊んだというのです。
RSウィルスは極めて感染力の強い感染症です。RSにかかった子と接触するとかなりの確率で感染します。それを実感しているので、「風邪にしてはおかしい」という小児科医の勘も合わせて、調べることにしました。
いつも言っている通り、RSウィルスは開業医が調べると医院の持ち出しになるため、調べない医院が多いのが現状です。“風邪”と誤診されてしまうと、院内で接触してしまっては、いとも簡単に感染してしまいます。つまり、それこそ本当の風邪で医院に行っても、RSウィルスをもらってしまう可能性が高いのです。
RSウィルスの初期だと、本当の風邪と区別を付けるのはまず無理です。真面目に診療している当院でも、見極められる自信はありません。ただ、本当に「RSウィルス感染しか考えられない」ような典型的な状態でも、調べずに“風邪”と診断している医師もいます。熱が続くことも少なくなく、点滴を指示されることもあるのですが、となると院内の滞在時間も長くなり、点滴処置をやる看護スタッフもRSウィルスとは知りませんから、ちょっとした接触で感染を院内で拡大させてしまう可能性は高くなります。
さて、先の患者さんは予想通り、RSウィルスが検出されました。RSウィルスにかかった子と少し遊んだことで、うつってしまったのです。
RSウィルスの何が嫌かと言えば、生後1~3ヶ月というお母さんの臍の緒からもらった免疫のお陰で感染症にかかりにくい月齢であっても、いとも簡単にうつってしまうこと、赤ちゃんの細い気管支で多くの痰を作るので窒息しそうになること、ゼーゼーが強まり機嫌も悪く、夜も眠れなくなります。原因が分かっても特効薬がないため、入院のリスクはかなり高いのです。
私が医院の持ち出しを作ってもRSウィルスを調べる理由は、原因を追及するためと、入院のリスクの高い病気なので、“風邪”と誤診してまうことで、親御さんも油断してしまい、苦しがる子どもを「風邪だから仕方ない」と適切な対応ができなくなってしまうからです。子どもは幼ければ、自分の苦しい状況を説明できませんから、逆にRSウィルス感染を見つけ出し、「こういう状態になったら、入院が必要です」と説明しておけば、うまく対応ができると思っています。
午後から、今度は隣の柏崎市からぜんそくのお子さんが熱が下がらないと受診されました。
熱が続いており、咳込みはかなり強いのです。血液検査からすると、ウィルス感染と思われる値でした。ぜんそくの治療をしているにもかかわらず、睡眠障害もみられます。ここまでぜんそくを悪化させるのは、RSウィルスの可能性も充分あると考えました。RSウィルスの子との接触は明らかではありませんでしたが、柏崎市でもRSウィルスが流行っていると聞いていましたので調べてみると、予想通りRSウィルスが検出されました。
入院のリスクが高いため、地元の病院にいつでも入院できるように紹介状を書きました。紹介状があった方がスムーズに受け入れて頂けると思ったからです。RSウィルスと分かったからこそ、現在の呼吸苦や状態の悪さはRSウィルス感染に起因することを証明でき、相手が悪いので入院のリスクが極めて高いことを理解して頂けたと思います。
自分を信頼して、遠路遥々受診して下さった患者さんへの誠意だと思っています。医院の損になるからと、RSウィルスを調べないような“ちっちゃい”小児科医にはなりたくないと考えています。
少し前に、長岡市の患者さんも熱と咳で受診され、「おかしい」と考えて調べてみたらRSウィルスでした。熱が続き、咳で夜も眠れないようなら入院が必要だと言っていたお陰で、地元の病院で入院加療を行って頂けました。
こう書いて理解頂けるのは、上越の周辺地域ではRSウィルスの感染が拡大しているのです。一部の真面目な先生の報告では、上越市でもRSウィルスが少しずつ出ているそうです。毎年秋から春にかけて、RSウィルスは流行しています。毎年2~3万人の乳幼児が入院加療しているという実態があるのです。上越もRSウィルスの流行期に入りつつあるのだと思います。
昨年も上越ではRSウィルスが大流行しました。当院だけで100人近くのRSウィルスの患者さんを確認し、呼吸困難の乳幼児は入院をお願いしています。病院の先生の話でもRSウィルスによる入院が途切れることはなかったくらい、例年にない大きな流行だったそうです。一方、地元のラジオなどの感染症情報ではRSウィルスの流行の話は全くと言っていい程、出ませんでした。患者さんは、なかなか正しい情報が手に入りにくい状況なのだと思います。
そんなこともあり、昨シーズンは当院からRSウィルスが流行していることで注意を喚起する情報を関係各所に発信せざるを得ませんでした。真面目に取り組んでいる姿勢を評価して頂いたのか、今月、地元の園から感染症の講演を依頼されました。アレルギーは話し慣れているのですが、感染症の話をしなければいけないとは思ってもみませんでした(汗)。
特にリクエストが強いのが、冬に流行る感染症についてです。インフルエンザやノロウィルスに加えて、RSウィルスに関しても細かく触れようと思っています。感染症のスライドは1枚も持っていなかったので準備を進めていますが、今は40枚を超えました。
RSウィルスは2歳以下の子どもが重症化しやすいと言われていますが、2歳以下の子を持つ親御さんの認知度は3割しかないとの報告もあります。何故こんなに低いかは、医院の都合も小さくないと考えています。当院が力を入れている食物アレルギーにおける「食物負荷試験」もやっていない医院が多いから、知名度が低いのです。それを意地でも広めたいと取り組んでいるつもりです。RSウィルスも全く同じことが言えるのだろうと考えています。まず「知る」ことが患者さんの権利でもあるからです。
アレルギーでも感染症でも「正しい情報を提供する」のを目標に地道に頑張っていきたいと思っています。


