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細菌とウィルスの違いって2
2010年11月24日 更新

23日は休日でしたが、やはり頭の中は感染症の講演のことばかり…。

出かけても、つい本屋の医学、看護のコーナーへ。買った本と言えば「感染対策エビデンス集」というタイトルの本だったりします。

講演の時に使うスライドも、ようやく100枚を超えました。これで2時間は保つかな、というところまで辿り着きました。アレルギーにはこだわっていますが、感染症も小児科医になってはや20年近く。毎日のように診てきたので、“こだわり”はもちろん持っています。

ただ、アレルギーのように専門施設でより深く「感染症学」を学んできている訳ではないので、いつの間にやら診断や治療が“我流”になっているかもしれず、それを話す訳にはいきません。そのためには、自分の知識が学問的に正しいのか再確認するチャンスを頂いたとも考えられます。

個人の経験に頼る医療は、もう古いのです。買った本のタイトルのように、「エビデンス」が大切です。エビデンスとは“医学的根拠”のことを指し、根拠のないことをやる医師は、“ヤブ”と言っても過言ではないくらいの時代になっています。

おたふく風邪やヘルパンギーナと診断していて抗生剤を処方するのは、結構当たり前のように行われていますが、エビデンスはありません。医療費の無駄遣いとも言え、時々話題になっている耐性菌を増やすことにもつながります。よほどの根拠のない限り、抗生剤は使うべきではないのです。

風邪っぽいと思って医院を受診すると、咳もないのに咳止めが入っていたり、熱もないのに解熱剤が入っていることがあります。これも基本的には無駄なことというか、あまり意味のないことでしょう。患者さんや親御さんが「当たり前」と思っていることが、大して意味のないことって意外とあるのかもしれないと思います。

今回、ぜんそくのことはよく分かっているお母さんにウィルスと細菌の違いを聞かれ、私の当たり前と思っていることが、患者さんにとって充分理解されていなかった訳で、一種の“押しつけ”を無意識にしていたのかもしれないと反省している次第です。その辺を考えながら医療をしないと、そういう意味でも“我流”になってしまうと思います。

さて、昨日の続きです。ウィルスには抗ウィルス薬、細菌には抗生剤を使います。ふと考えると、分かりやすいのや「抗菌薬」って言い方の方でしょうね。細菌感染であると、キチンと診断する必要があります。診断が正しければ、抗生剤を使う根拠が出てきます。

更に、抗生剤の投与方法には内服と点滴の2種類があり、病気の重さで使い分けるべきだろうと思います。エクストラの処置をすれば、医院には手間賃が入ります。内服で済むのに、点滴をされては、特に小児科ではお子さんがかわいそうです。

小児科医のベテランであれば、「いかに点滴を少なくするか」が腕の見せどころだろうと思うのですが、地元には「点滴待ち」なんて言葉があるようです。点滴をするベットがいっぱいで、点滴をしてもらうのに、先に点滴をしている子が終わるのを待たなければならないのだそうです。つまり、ラーメン屋の店先で並ぶのと同じです。

他の医療機関さんには、それぞれのやり方があるのでしょうが、当院は開院3年で「点滴待ち」になったことは一度もありません。点滴の適応がかなり異なっている可能性があります。当院に移ってこられた患者さんをみると、RSウィルスが原因で熱が続いているのに、抗生剤の点滴が何日も続けられていたりします。敢えて言いますが、抗生剤の誤使用です。これではお子さんが気の毒ですし、医療費の無駄遣いです。地元にエビデンスのある医療を広めたいと思っています。

先の述べた通り、細菌感染の場合、抗生剤を内服か点滴か投与方法を選ばなければなりません。これは病気の重さや患者さんの体調で考えるべきでしょう。病気の重さを判断する指標が、白血球とCRPという炎症反応と言えます。ほとんどの医療機関に備えられていると思います。

CRPは、健康な人だと0.3mg/dl以下ですが、細菌感染になると値が急増します。インフルエンザウィルスで熱がガンガン出ていても、CRPは1.0を超えることはまずありません。数値が高ければ高い程、病気の勢いが強いことを意味しています。

先日、扁桃腺に膿が付いていて扁桃炎と診断したお子さんがいました。扁桃炎もウィルスと細菌どちらもで起こり得ますが、CRPが8.4でした。この場合は細菌が原因だなと考えます。

医師なら「アデノウィルスだってあるでしょ」と突っ込まれそうですが、アデノウィルスは、名前の通りウィルスです。このCRPは上がらないはずですが、唯一例外的に上がります。CRPが10を超えていて、これは重症感染症だと病院に紹介したら、アデノウィルスだったことがありました。

で、この患者さんはアデノウィルスを迅速検査で否定しています。CRPが8.4でアデノウィルスでなければ、細菌感染である可能性が極めて高いと言っていいでしょう。さすがに熱が3日続いて体力もやや落ちているようですし、CRP8.4は病気の勢いが相当強いことを表しています。多分、内服でチマチマ治療していたら、病気の勢いを抑えられないと考えました。

医師は白血球の数も注目しています。正常値は6000~8000ですが、この患者さんの場合、14000くらいだったでしょうか。明らかに増加しています。これも病気の勢いをみる判断材料になります。ウィルス感染の場合は、やはり高熱が続いていても、白血球数は上がりません。

この白血球。普段、「体を細菌から守る兵隊さん」と説明しています。採血で細菌用の兵隊さんが多いということは、体の中に細菌が入って、あばれていることを指します。こう考えると、分かりやすいと考えています。

これらのデータを元に、お子さんに「点滴の針を刺すかわいそうさ」と「刺さないかわそうさ(=熱が続き、病気が治らない)」を天秤にかけた結果、抗生剤の点滴を選択しました。点滴時に、やはりお子さん本人はまだ小さいため、納得しておらず大泣きしていましたが、頑張って点滴しました。

当院の場合、収益が上がることは分かっていても、無駄な点滴はしないようにしています。ウィルス感染に抗生剤の点滴をしても、意味はありません。キチンと細菌感染と診断して抗生剤を使えば、多くの場合、有効なはずです。実際のところ、当院で点滴をした場合、ほとんどが翌日までに解熱します。理論的に正しいことをすれば、正しい結果として返ってきます。

先の患者さんの場合、CRPが8.4と病気の勢いが強く、場合によっては1回の点滴では、熱が下がりきらないこともあります。点滴の翌日も再診して頂きましたが、まだ38度台の熱が残っていました。当院で点滴をして熱が下がる場合は、翌日には元通りになっています。ということは、抗生剤で叩ききれなかったのだろうと判断しました。

お子さんには悪いなと思いつつ、もう1回点滴を頑張って頂きました。当院で2日連続で点滴になることは、1年に5人もいないと思います。もちろん、乳児で尿路感染症など入院加療が必要と判断されれば、病院に即刻紹介しています。ですから、もう少し大きい子で、外来治療が充分と考えられる細菌感染により熱が続いているお子さんの中でと言うことになります。

開院当初は、感染の患者さんの受診はほとんどありませんでした。熱が出ても、近くの医院に行き、アレルギーだけ当院へという形だったのです。いまは、熱が出てもかかりつけ医として受診して下さいますから、感染症の患者さんも随分増えました。当院では熱が3日以上続いたら、CRPを調べています。1~2日だと風邪の可能性も高く、それくらいで検査していたら、子どもがかわいそうだからです。

ここ最近の寒さで、発熱の患者さんも増えています。採血の必要な患者さんも1日に何人もいます。確率的にもウィルス感染がほとんどで、細菌感染は少ないはずです。実際に、熱が続き、親御さんが心配されていても、ウィルス感染と判断されることがほとんどです。尿量が減っていなければ、点滴はまず必要ありません。

点滴が必要かどうかは各医師の判断に基づくものですが、「点滴待ち」なんて言葉は未だに信じられないのです。私の点滴の基準は異常だと思っていませんが、私の目線でみれば、点滴は減らせるだろうと思っています。医院に点滴で5日も通ったなんて、よく聞きますが、本当に5日も点滴が必要なら、小児の場合は入院の適応だろうと思います。

患者さんにしてみれば、熱が続けば医師に頼るしかないのでしょうが、細菌感染なら、当院の実績にようにほとんどが1日で下がります。それくらい、今の薬はよく効きます。患者さんは自分の身を守るためにも、症状が良くならなければ、良くならない理由を医師に聞かなければなりません。

「聞きづらい」とよく言われますが、かわいいお子さんのために、勇気を出して是非聞いてみて下さい。聞けないくらいなら、かかりつけ医として考え直さなければならないのかもしれません。聞いても、理論的でない返事が返ってきたり、症状が良くならなければ、医師を代えることも考えなければならないと思います。

分かりやすく書いたつもりですが、CRPは白血球数のことを頭に入れれば、理論的に正しい医療を受けやすくなると思っています。参考にして頂ければ幸いです。