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木を見て森を見ず
2010年11月25日 更新

この1年、診療以外で頑張ったものと言えば、「龍馬伝」です。

この週末で最終回を迎えるNHKの大河ドラマ「龍馬伝」は、毎回欠かさず観ています。恥ずかしながら、坂本龍馬という人がどんなことをした人がよく分かっていなかったので、知りたいと思っていました。日に日にハマってしまいました。

坂本龍馬に関する本も何冊か読みました。大河ドラマでは龍馬をよりヒーローにする演出もちょっとあったようですが、一人の身分の低い侍があの手この手を使い、江戸幕府を終わらせ、日本を近代的に生まれ変わらせるきっかけを作ったのは、驚きに値します。政治家も含め、憧れる人が多いのもうなづけます。

坂本龍馬について調べているうちに、ビックリしたことがひとつあります。龍馬は日本を変えるために、仲間を作ります。それが「海援隊」なのですが、その前身の「亀山社中」という団体の中に越後長岡藩の侍も含まれていました。この越後にも、坂本龍馬と同じ志を持って日本を変えることに協力していた人間がいたことを知りました。新潟も捨てたものじゃないなと思いました。

そして、その「龍馬伝」の最終回では龍馬が志半ばにて暗殺されるのですが、私の生まれて100年も経っていない頃に歴史が大きく動いていたことを実感し、本当に驚いたものです。

この坂本龍馬から若干エネルギーをもらったつもりですが(笑)、新潟の子どものアレルギーのレベルアップを図りたいと思いますし、感染症についても、ここ最近触れているように患者さんが知るべきことが沢山あると思っています。

先日、咳が長引くと患者さんが当院を初診されました。いつも内心「もっと早く来てくれればいいのに…」と思ってしまうのですが、それまでは別の小児科で診てもらっていたそうです。この4月から咳が長引くたびにマイコプラズマと診断され続け、この半年で3回もかかり、点滴に通わされたそうです。

敢えて言いますが、医師も「本当にマイコプラズマと思っているんだろうか?」と考えてしまいます。小児科医なら誰でも「こんなに繰り返すはずはない」と思うと思うのです。何故こんなことが起こるのか?。「木を見て森を見ず」の典型だと思います。

もし血液検査で判断しているのならば、新潟では広く用いられているマイコプラズマの迅速診断キットの弱点を如実に表しています。一旦かかると、抗体が長期間に渡り体に残っており、過去にかかった名残を見ているだけなのに、マイコプラズマと判定させてしまうのです。

患者さんを流れてみれいれば、「こんなに何度もかかるのはおかしい」と考えなければならないのに、検査の結果でしか患者さんを見ていないとこんなことが起こります。私が予想するに、1回はマイコプラズマだったかもしれませんが、他の2回は違う、もしくはそれ以前にかかったマイコプラズマの影響が残っており、この3回とも違った可能性があります。単なる風邪で熱が出ただけなのに、マイコプラズマと誤って診断され、その都度抗生剤の点滴に通わされた可能性があります。

実はこの患者さんだけでなく、「小児科で何度かマイコプラズマと診断されたが、良くならない」と何人も当院を受診されています。全例、ぜんそくが見落とされています。医師は同じミスを繰り返してはいけないと思います。診断を間違ってもかかった医療費は医院に入る訳ですが、それはおかしいし、医師も努力を怠ってしまいかねません。間違ったら患者さんに返さなければならないシステムがでできれば、医者は必死で勉強するでしょうね。もちろん、私もですが…(笑)。

結局、医師が自分のやっていることが間違っていないか、と常に考えていないといけないし、何度もかかるこるのはおかしいと親御さんが知っていれば、早くに医師を替えることもできたでしょう。あいにく、医師にすべてを任せておけばいいという時代は終わったと思います。お子さんを守るためには、親御さんもある程度は医学的知識を持っていなければならないのです。

今週に入ってもRSウィルスの患者さんが出ています。ぜんそくは風邪をきっかけに悪化することが多いのですが、ぜんそくを持つ乳幼児がRSウィルスにかかると呼吸状態が悪くなります。

当院で診ているぜんそくのお子さんが、熱を出し、咳がひどい状態で受診されました。最近は寒暖の差も大きいので、ぜんそくの調子が悪いお子さんも多いし、風邪で熱が出る方も多いのですが、この患者さんも最初はそうだと思っていました。

熱が3日めに入り、結構な高熱で、咳で眠れない、食欲も落ちてきたということで受診されました。当院は無駄な点滴はしない方針ですが、尿量も減っていて脱水も進んできていると判断し、点滴を行いました。大した脱水でなければ、1本めの点滴でおしっこが出るはずです。しかし、2本めにようやく排尿がありました。つまり、思ったより強めの脱水になっていたことを意味しています。

点滴のついでと言っては何ですが、検査をさせて頂いていて、昨日話したCRPという炎症反応は低く、この持続する発熱の原因は何らかのウィルス感染と判断していました。熱が続くからと言って、点滴の中に抗生剤を入れるのは正しい判断とは言えないと言いましたが、今回も抗生剤は入れていません。点滴の目的は、脱水を補正することでした。

当初、何らかの風邪のウィルスが悪さして、たまたま熱が続いているんだろうと思っていましたが、「強い脱水があったこと」、「ぜんそくが悪化していること」、「ウィルス感染であること」を考え合わせると強力なウィルスが足を引っ張っていることに気付きました。インフルエンザが流行していれば、インフルエンザも有り得ますが、県外に行ったこともなくインフルエンザではないだろうと思いました。となると、あとはRSウィルスくらいだろうという考えに至り、検査をしてみたらRSウィルスが陽性に出ました。

多分、これだけでは多くの小児科医がRSウィルスを調べないと思います。開業医が外来でRSウィルスを調べると医院の損になることも一因でしょう。普段、真面目ににぜんそく治療に通ってくれているお子さんでしたので、ここまでぜんそくが悪くなり、「何かおかしい」と思って、悪化要因を調べるべきだと思ったのです。「木を見て森を見ず」の対応だったら気付かなかったと思います。

実は受診されたのは22日のことで、翌日は勤労感謝の日であり祭日です。親御さんもだいぶ心配されていたので、検査する前に「RSウィルスが出たら、入院を勧めよう」と思っていました。予想通り、陽性だったので病院にお願いして、入院して頂きました。

RSウィルスは、インフルエンザのタミフルのような特効薬がないため、入院したからといって劇的に良くなる訳ではありません。5日間くらい熱が下がらないこともあり、熱が続けば続く程、ぜんそくも一層悪化します。入院がベストであろうと考えました。なお、病院に行って患者さんの顔を見てきましたが、まだ熱が下がっていませんでした。外来で引っ張っていたらと思うとゾッとしますし、結果的にも入院が正解だったのだろうと思います。

もうじき感染症の講演がありますが、地元の園の先生方にも、これらの経験に基づき、マイコプラズマは繰り返すものではないことや、調べない医師が多いため知られていないけれど、RSウィルスという病気があり、ぜんそく患者さんだと症状が重くなるし、ぜんそくがなくても呼吸困難を起こしやすいことなども知って頂こうと思っています。

当日は、多くの園の先生方が参加されるそうなので、いろいろと知って頂くことが、地元のレベルアップにつながると信じていますし、今から楽しみです。