もう1ヶ月したら、子ども達の楽しみにしているクリスマスです。
もちろん、サンタさんからのプレゼントが一番でしょうが、クリスマスケーキも楽しみでないはずはありません。しかし、卵、乳、小麦といった3大アレルゲンが含まれており、食物アレルギーの子ども達の“敵”だったりします。
当院に初めて来られてしばらく経っていますが、N市から食物アレルギーのお子さんが受診されました。アレルギーの体質があり、元主治医から卵、乳など複数の食品を除去するよう指示されていました。アレルギー検査を何度か行い、その都度検査が陽性なものを「アレも食べてはいけない、コレも食べてないけない」と指導されており、検査の度に食べられないものが増えていき、お母さんが何を食べさせていいか分からない、という状況に陥っていました。
アレルギー専門医でないから仕方ない部分もあるのですが、アレルギー体質の強お子さんは様々なものが検査で陽性に出ます。こういう場合は、“食べられないものを探す”のではなく、“食べられるものを探す”のが“プロ”です。数値がクラス2以上のものを「食べてはいけない」というのは簡単です。もしクラス2以上のものを食べると、皆がアレルギー症状が出てしまうのならば、医者なんて必要ありません。アレルギー検査を繰り返すなら、“プロ”としてのプライドを持って検査しなければなりません。
アレもコレも陽性に出るようなら、アレルギー専門医に紹介しなければならないのに、誰も守ろうとしていません。敢えて言いますが、食物アレルギーを軽視している小児科医が多いことを表しているのだろうと思っています。
さて、N市からの患者さんの食生活を聞いて、卵と乳製品を本当に除去しなければならないのか疑問に感じていました。除去しておけば何も起きず、医師は「自分の指導が正しい」と思い込んでしまいます。正しくないから、何も起きないのです。要は、過剰に除去してしまっていると言う意味です。「食物負荷試験」でシロクロつけようということになりました。
卵はアレルギー検査の値は極めて高かったため、卵焼きを負荷するのははばかられたため、卵を使ったカステラを食べてもらうことにしました。卵焼きに比べれば、卵の含有量は少ないため、食べられる可能性を考えていました。
実は、カステラの負荷試験をやったのが、昨年の初夏でした。1年以上前のことです。最初は順調に食べていましたが、最後の方になって、一気に蕁麻疹が出て、咳込みも起きてしまいました。定義上はアナフィラキシーに当たります。
当院で「食物負荷試験」をやる場合は、もちろん慎重に行っているつもりですが、ほとんどが無事に完食しています。しかし、食べられる限界を超えてしまうこともあります。蕁麻疹が口の周りにちょっと出た、なんてこともありますし、まれにアナフィラキシーも起こります。限界を分かるために、シロクロつけるために“攻めて”いますので、症状が出ることもあるのです。
当時、お母さんは現実を突きつけられた格好で、そうとう落ち込んでいたことを昨日のことのように覚えています。ただ、卵アレルギーはかなり強いことが判明しましたので、卵を安易に口にすることは避けなければならないと判断しました。
一方、乳製品は日頃の食生活から結構いけることが分かっていましたので、ヨーグルトを使った負荷試験を別の日に実施していました。こちらの方は、あっさりクリアしてくれており、牛乳も生クリームも食べられるようになっていました。
その後、卵だけがネックの状況が続いており、最近になって正直食べれれるかどうか、確固とした根拠があった訳ではないですが、お母さんと相談の上で「またカステラで挑戦してみますか?」という話になっており、先日、1年以上前のことですがアナフィラキシーに至ってしまったカステラを使い、リベンジの負荷試験に挑戦しました。
ちょっと蕁麻疹が出たくらいとは訳が違いますので、またアナフィラキシーを起こしてしまうかもしれない、と細心の注意をした上での負荷試験となりました。「また出たらどうしよう」、そういう不安は私自身も持っていました。しかし、食べなければ何も起きず、その対応が正しいかと言えば、私は正しくないと考えています。食べられるものを「食べていけない」と言うのは“誤診”であり、医師は罪の意識を持たなければならないと思っているからです。
果たして、結果やいかに。1年前のアナフィラキシーがウソのように、今回は何も起きませんでした。めでたし、めでたしです。“攻めて”よかったと思っています。これで食材が増やすことができます。
親御さんも、まさかカステラが食べられるとは、と思っていたようです。ただ、ちょっとは食べられるかもと言う淡い期待は持っていたようで、お子さんとある取り決めがなされたいたそうです。
それは、もしカステラが食べられれば、「帰りにケーキ屋さんでクリスマスケーキの予約をしていこう」というものでした。負荷試験が終わった時点で、お子さんもクリスマスケーキをゲットできたと上機嫌でした。
当院を初診された頃は、卵も乳製品も食べることを禁じられていました。負荷試験でアナフィラキシーも経験してしまいましたが、それさえも乗り越え、クリスマスケーキを食べられるようになったのです。お子さんの笑顔はもちろんですが、私の目に焼き付いているアナフィラキシー時のお母さんの落ち込んだ表情と180度違った、嬉しそうな表情を見て、私も嬉しくなりました。
相も変わらず、新潟県には「食物負荷試験」が普及していない状態が続いていますが、検査だけで食べられないという指導を繰り返している医師に、お母さんの嬉しそうな表情を見せてあげたいと思いました。
当院の存在を知っている患者さんしか、「食物負荷試験」の恩恵に預かれないというのは“異常事態”と言えると思っています。食物アレルギーが軽視されているように感じているのは、アレルギー専門医であれば皆が感じていることだと思います。
食物アレルギー児を持つお母さんの笑顔のためにも、地道に「食物負荷試験」を広めていかなければならないと決意を新たにしています。


