先日、午前中の診療が終わって、わずかな昼休みの時間に、息子が39度台の熱を出したと連絡がありました。
話を聞いてみると、グズグズ言っており、体を触ったら熱かったので、熱を測ってみたら39度以上あることが分かったそうです。
2歳になるまで、熱らしい熱は出したことがなかったので、心配は心配でしたが、他に症状はないようで、とりあえず座薬で様子を見ることにしました。午後の診療中も若干は気にかかっていましたが、熱が出たばかりだし、様子を見るしかないなと思っていました。
家に帰ってみると、一度出た熱はそんなにすぐには下がりません。いつもはこたつの周りを走り回っているのに、赤い顔をしてしんみりしています。普段はアンパンマンのビデオを見せろと大声を上げるのですが、ほとんど言葉も発しません。よほど辛いんだろうなとかわいそうになりました。
日頃から子どもの診療を行っていますので、いま流行っている病気は把握しています。熱が出る病気といえば、胃腸炎や溶連菌、RSウィルス、アデノウィルス、おたふく風邪などの頻度が高いと思います。しかし、うちの子の場合、咳も鼻も、嘔吐や下痢もないのです。
咳や鼻が出てくれば、市内で流行り始めたインフルエンザやRSウィルスも考えなければなりません。感染性胃腸炎なら、嘔吐や下痢は必発です。熱が続き、他に症状がないとなると、小さい子はのどが痛いなんて言えませんから、のどの炎症を考えます。のどが赤ければ溶連菌、のどに膿がついていればアデノウィルスを考えたいところです。家には舌圧子(のど診るための平たい棒)なんてありませんので、スプーンに懐中電灯でみようとしますが、膿はついてなさそうだくらいしか分かりません(涙)。
夜は、慌てても仕方ないので、座薬で様子を見ることにしました。夜間も熱が続いており、機嫌も悪く、普段は爆睡なのに、目覚めては泣いての繰り返しでした。朝になっても、解熱せず。
咳や鼻でも出ていれば、風邪の可能性も高いのです。逆に何にもないと、手がかりがなさすぎて何の病気が分からず、対処法もはっきりしません。川崎病や尿路感染症、中耳炎も可能性はあります。翌日仕事に行く時に連れて行って、診察と血液検査をやることにしました。
のどは少し赤いようです。溶連菌でよく見られる首のリンパ節の腫れは見当たりません。もちろんおたふく風邪でもありません。中耳炎と診断するためには、鼓膜が赤くなっていることを確認しなければなりません。耳鏡(鼓膜を診る道具)でみてみると、耳あかで鼓膜がよく見えません。これは普段からやっていることですが、専用のピンセットで耳あかをつまみ取ることにしました。除去してみて見直してみると、鼓膜は赤くありません。
かわいそうですが、血液検査をみることにしました。炎症反応が高ければ、細菌感染だし、低ければウィルス感染と判断できます。結果は0.3mg/dlと、ウィルス感染が考えられました。細菌感染なら、程度によっては抗生剤の点滴が必要になります。川崎病や尿路感染症なら入院加療がベストです。その可能性が消えて、正直ホッとしました。
いつも言っている通り、ウィルス感染の場合、インフルエンザと水ぼうそうしか特効薬はありません。それ以外のウィルス感染なら、様子を見るしか方法はないのです。脱水がないなら点滴の必要はないし、抗生剤の点滴なんて全く意味がありません。これは日頃から当院の方針なので、自分の子どもが発熱したところで、特別なことをやる必要もありません。そもそも、自分の子どもだけ特別な対応をする医師は信用できません。結局、抗生剤は使う必要がないと判断しました。
2日目、仕事から帰ると顔の赤みはとれてきていて、活動性もアップしています。よそのお子さんもテレビのCMは好きだと思いますが、うちの息子はなぜか農協のJAのCMに反応し、「ジェイエ~」と叫ぶことが多いのです。見ると、いつも通り「ジェイエ~、ジェイエ~」と叫んでいます。時折、まだ39度ほど出るようですが、体は楽になっているのでしょう。間もなく下がるのだろうと予想しています。
急な発熱で心配しましたが、抗生剤も使わず、食欲もやや落ちていましたが、水分は摂れていたので点滴も行いませんでした。今回は、のどが少し赤くなっていることから、いわゆるのど風邪と判断しています。39度が出たところで、ウィルス感染なら積極的にやることはないのです。
やはり小児科医は、子どもの痛がる点滴など、子どもの嫌がる治療はなるべく行わないのがプロの姿勢だと思っています。自分の収入が減ってもです。すぐマイコプラズマと言って点滴をする医師もいるようですが、内服で充分過ぎるくらい効きますので、点滴の必要性はあまりないはずです。そもそもマイコプラズマの迅速検査は間違って陽性になることも多いため、信頼しすぎないように言われているはずです。地元から「点滴待ち」という言葉をなくさなければならないと思っています。


