最近、時間が経つのが早く感じ、もう大晦日になってしまいました。ちょっと2010年を振り返ってみようと思っています。
2月に食物アレルギー研究会が開催され、私は新潟県の食物アレルギーの現状を話してきました。新潟県は食物アレルギーの専門医が他県に比べ極めて少ないため、本来受けるべき正しい専門的な対応がなされていないことをお話しし、日本の第一人者の先生方に新潟県を気にかけて頂き、なるべく講演に来て頂こうという作戦です。
その時に、会場にいたアレルギー支援ネットワークさんから5月に長岡市で行われる食物アレルギーのイベントである「プレアレルギー大学」の基調講演を依頼されました。それまではどちからというと、なかなか協力者が見つからず、自力で新潟の啓発を行っていこうと思っていたので、ちょっと意外で、医師以外でも新潟の現状を変えたいと思っている人間は新潟にもいたのかと驚かされました。
ちょうどその頃、新潟県の教育委員会が夏に食物アレルギーの研修会を行うことを耳にし、講師として恩師を呼んだらどうかと思い、話を進めさせて頂くことになりました。児童や生徒が食物アレルギーによりアナフィラキシーを起こした場合、エピペンという自己注射の治療薬を学校の先生が打つ必要が出てきたため、特に養護の先生がエピペンの使い方を是非知りたいという風潮が高まっていたのです。お忙しい先生なので思い立った2月中に依頼をし、了解を頂きました。
当院では、新潟の食物アレルギーの現状を憂い、啓発活動を自力で行っていました。毎年10月に「すこやか健康フェア」を行っており、食物アレルギーの第一人者の先生にお越し頂き、講演会を行っています。通常なら医師会や教育委員会などが共催となったりするのでしょうが、すべて自費でやっています。
近頃話題の食べて治すという「経口減感作療法」について話して頂こうと思いました。日本でこの治療法にいち早く取り組んでいる神奈川県立こども医療センターから講師の先生をお呼びし、ご講演頂こうと思ったのですが、講師への依頼も2月でした。
協力者を得て、こららの大きなイベントが開催されることになった訳ですから、今年を「新潟県食物アレルギー元年」としたいと強く思いました。
まずは5月のプレアレルギー大学が大きな目標になりました。食物アレルギーの講演はここ10年近くずっと行っていましたので、それなりの話をする自信はありました。しかし、食物アレルギーで困っている方が参加されるであろうと思ったので、より新しい情報も取り入れないといけないし、「食物負荷試験」はこだわってかなりの件数を行っていますので、自分のデータを示そうと思いました。
開業医は、受診する患者さんの数が多ければ経営は潤います。しかし、当院は医療は質が大事と思っていますので、数を増やそうとはしていないつもりですが、お陰さまでだいぶ忙しくさせて頂いています。病院勤務時代の何倍もの診察をしなければなりません。一日が終わる頃には疲労困憊となります。そんな中で、講演の準備は結構ハードです。
ただ、このプレアレルギー大学は当院が主催ではないし、それなりのレベルの高い話をしなければならず、自ずと力が入ります。3月くらいから、頭の中の多くがこのイベントのことで占められていたと思います。開催の少し前に地元もテレビ局が取材に来て下さることが分かり、よりプレッシャーがかかったことを覚えています。
その頃、地元の園や学校から講演の依頼も受けました。8月と11月ですが、特に8月は地元の養護教諭の研修会に児童、生徒のアレルギー全般の話をして欲しいということでした。その後も講演依頼があり、下越の阿賀町にも行くことになりました。
さて、プレアレルギー大学当日になり、会場は立ち見が出る程の盛況となりました。地元のケーブルテレビの取材も入り、慣れないピンマイクを付けての講演となりました。講演の様子をケーブルテレビで繰り返し放送するそうで、それも一般の方に正しい知識を提供するチャンスになります。プレッシャーに弱い私ですが(汗)、まあ、何とか無難に話をすることができたと思います。
それをきっかけに地元のテレビ局が当院に「食物負荷試験」の取材まで来て頂き、県内に放映されました。アレルギーという学問は専門化しており、小児科医ではなく、専門医でないと対応が困難な状況になっています。「アレルギーは3分診療ではダメで、専門医に任せた方がいい」という私の主張も流されました。
7月の恩師を招いた研修会も無事終わり、8月の養護教諭への研修会、10月の「すこやか健康フェア」もその他の講演会も終了しました。自分でもそれなりに頑張った1年だったと感じています。協力者も増えましたし、この努力を続けていけば、新潟の食物アレルギーのレベルは少しずつ上がっていくのではないかと感じています。
ただ、別の課題も見つかりました。11月の地元の園への勉強会はアレルギーではなく、子どもの感染症について話して欲しいということでした。園の子供たちはいろんな医療機関にかかっている訳ですが、医師によって診断や登園許可の指示がまるで異なるのだそうです。
今の医療は、医学的な根拠がなければ信用できないものになってしまうと言われています。いつも言っているように、食物アレルギーはアレルギー検査で食べる食べられないの判断が多くの医師によりなされていますが、これ自体が大して根拠のないことです。未だにこの方針を改めようとしない医師も大勢います。それを何とかしたいと思って、日々頑張っている訳ですが、感染症にも医師間のレベルの差が大きいことには気付いていませんでした。実際に園では医師により対応が異なるため、どうしていいか分からない状態になっているのだそうです。
当院ではウィルス感染と分かれば、抗生剤はほとんど使っていません。感染症はウィルス感染と細菌感染は分けて考えるべきなのに、熱が続き、ウィルス感染でも抗生剤の点滴が繰り返し行われている現状を変える必要があると思っています。根底には、医師の言うことに間違いはないという考えがあるのでしょうが、私は決してそうだと思っていません。
2010年は、食物アレルギーの啓発に関しては手がかりをつかみました。来年にはプレではなく、アレルギー大学が新潟市で開催される予定になっています。10月の「すこやか健康フェア」も福岡の恩師に来て頂き、一度やりたかった新潟市での開催を考えています。今年は若干力が入り過ぎていたかなという反省も踏まえ、少し力を抜いて啓発を進めていけばいいのだろうと思っています。
子どもの医療はアレルギーも大事ですが、メインは感染症です。この感染症の対応もまちまちで、場合によっては根拠のないことが繰り返されています。あまり必要でないであろう点滴をされて痛い思いをしたり、登園してもいいのに長く登園を禁じられたりと子ども達が気の毒です。これも改善する努力をしなければ、地元の子ども達を守ることはできないと考えています。
それなりに頑張り、一方で大きな課題の見つかった2010年だったと思います。しかし、頑張れば誰かが見てくれているはずだし、協力者も出てくることが分かりましたので、感染症の方が大きな課題ですが、大きなだけやり甲斐があると感じることもできます。慌てず腐らず、という姿勢で確実に前には進んでいきたいと考えています。


