休んだ後の外来は、結構辛かったりします。休んだ分、診るべき患者さんが増えるのと、体を休みモードから診療モードに切り替える必要があるからです(汗)。
これも時々言っていることですが、開業医がレベルが低く、病院のレベルが高いという訳ではないということです。学会などに参加するため、休診にする医院は多くないようですが、開業医こそがどんどん外に行って勉強しなければなりません。
病院には複数の医師がいることが多いので、他の先生の治療を見て「今はこう治療するんだ」と教えてもらえることがあります。開業医の場合、誰も教えてはくれません。実際、10年以上前の治療をして、そのことに気付いていない医院さんすらあります。いつも言っている通り、患者さんもある程度は知識を持たないと、「すべて先生にお任せ」なんて姿勢を取っていると、とんでもないことになることも起こり得ます。
何度通っても良くならない、いつも同じ薬しか出ていない、そんな場合は残念ながら、医院を替えることも考慮に入れるべきだと思っています。
この週末、福岡の勉強会に参加してきた訳ですが、かなり勉強になりました。昨日も書いたように、自分の知識がまだまだ足りないことを思い知らされました。今回、学んできたことに触れていこうと思っています。
近年のアメリカのデータでは、入院を要するような食物アレルギーの患者さんが増加しているのだそうです。また、オーストラリアでも特に0~4歳の乳幼児の入院の増加が確認されています。
子どものアナフィラキシーの原因は、何も食物だけが原因ではありません。薬やハチ、ラテックスなどでも起き得ます。前述のアメリカ、オーストラリア以外でもイタリア、ドイツなどでもアナフィラキシーの原因の多くを食物が占めています。
当院は外来診療のみですので、入院治療はできないのですが、患者さんにはアナフィラキシーになったら急いで受診して下さいと言っています。もちろん、重症でかなり状態が悪ければ、入院加療をお願いすることもあるでしょうが、アナフィラキシーであれば抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、アドレナリン注射などで対応できるケースも多いのです。アドレナリン注射は医療機関では、「ボスミン」という薬を使いますが、患者さんが携帯できるようにしたのが「エピペン」という薬です。
私の把握している範囲では、夜間や休日にアナフィラキシーを起こし、救急外来に駆け込んだり、市外の患者さんですと地元の病院を急いで受診されているようで、あまり当院を受診されるケースは見かけません。
先日あったケースは、大晦日に卵アレルギーのお子さんが、母が目を離した隙にシュークリームを食べてしまい、アレルギー症状を起こしました。蕁麻疹と腹部症状でした。かかった医師が呼吸器症状に注目していたようですが、卵アレルギーの場合は、呼吸器でなく消化器に症状が出やすいのです。本来、アナフィラキシーと判断されるケースでした。
やはり卵アレルギーのお子さんで、この子の場合は卵焼きは食べられていました。以前、ソフトクリームを食べてアナフィラキシーを起こしたことがあります。卵が生の場合は強めの症状を起こすのであろうと判断していました。
ある日、ケーキを食べてアナフィラキシーを起こしました。市外の方なので、近くの病院の救急外来を受診されたそうです。後日、電話で連絡を頂いたのですが、最初に聞いた時は「卵焼きを食べられているのに、ケーキで起こすなんて」と思いました。後で分かったことなのですが、ケーキはケーキでもバタークリームが塗ってあり、そのクリームの中にメレンゲが入っていたそうです。やはり、加熱していない卵には反応してしまうのでしょう。
いずれのケースも、アドレナリン注射(エピペン)は使われていませんでした。専門医でなければアドレナリン注射は使われない傾向にあり、必要なケースでも使用されていなかったりします。今回のケースを私はみていないのですが、話を聞いた限り、前者は使っても良かったと思っています。ステロイド薬の点滴で、入院加療をしています。
先日も書いたかもしれませんが、アレルギー学会でこんな話が出ていました。食物アレルギーの患者さんが、アナフィラキシーの既往があるため、主治医からエピペンが処方されていました。学校でアナフィラキシーを起こした時に、学校の先生は必要があれば投与していいことになっているのに使用できず、到着した救急救命士も打っても良いものの使わず、病院に搬送されて小児科医が、持参したエピペンを打ったというのです。ここは1本1万円もするエピペンではなく、病院の同成分でやすいアドレナリンの注射を投与すべきでした。予想するに医師も相当慌てていたのでしょう。
私は幸いにして経験はありませんが、食物アレルギーの重症例は死亡することも有り得ます。海外の死亡例はピーナッツがほとんどですが、エピペン(アドレナリン)が思った程には使われていないのだそうです。
エピペンには0.15mgと0.3mgの2種類があり、要は小児と大人用と言えますが、最初に述べた通り、乳幼児の入院例が増えています。エピペンの0.15mgは体重15キロ以上の子に適応と言われています。しかし、重症児は体重が15キロ以上あるとは限らないので、それ以下の子には処方できないことになっています。
海外では、重症な場合は、とにかくアナフィラキシーショックの状態から抜け出せるよう体重が満たなくても使用されることもあるようです。カナダでは乳幼児の食物アレルギーに対し、エピペンの処方率がかなり高いと聞いています。
振り返ってみると、日本ではエピペンの処方率は極めて少ないものになっています。エピペンに関する講習会を受けていないと、エピペンを処方できない決まりになっており、例えば地元の上越ではエピペンを処方できる小児科医は極めて少ないため、増えている食物アレルギーに対応できてない可能性が高いのです。
昨年の新型インフルエンザ騒動で、日本人の過剰な対応が海外では笑いものになりました。しかし、結果的に新型インフルエンザによる死亡例が、諸外国に比し極めて少ないものでした。同じ病気でも国によって対応がことなるのです。
食物アレルギーは、新型インフルエンザの場合とは異なり、“過小”な対応となっていると思います。各医師が食物アレルギーの現状を知り、適切な対応を取らなければならないと思います。と同時に、患者さんも食物アレルギーが重症な場合は、かかりつけ医がアレルギー専門であるかどうかを確認し、「すべて医師にお任せ」という受け身の態度ではなく、能動的に動くことも必要だろうと思っています。


