小児科 すこやかアレルギークリニック

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心が痛む
2011年01月14日 更新

扁桃腺が大きいお子さんで、扁桃炎を繰り返しやすいケースを時々目にします。先日、扁桃炎を起こしたお子さんに、抗生剤の点滴を行いました。

いつも言っているように、子どもが熱を出した時の原因は大きく分けて二つあります。細菌感染とウィルス感染です。

細菌感染の時のみ、抗生剤が効きます。ウィルスが原因の場合は、抗ウィルス薬を使いますが、インフルエンザくらいしか有効な薬はありません。扁桃炎を起こしやすいアデノウィルスというウィルスがあります。熱がガンガン出る病気ですが、ウィルスなので抗生剤を使っても効果はありません。

アデノウィルスでないことを迅速診断キットで確認し、血液検査でCRPという炎症反応が高くなっており、細菌感染で間違いなかろうことは確認させて頂いていました。のどに膿がついていますから、これで何からの細菌による扁桃炎と診断できると思います。治療は抗生剤を使いますが、扁桃炎は高熱が続くことが多く、病気の勢いが強い時は内服よりも、点滴という形の方が効果を期待できます。それで抗生剤の点滴という治療法を選んだのです。

実は、数ヶ月前にも細菌感染による扁桃炎を起こしており、抗生剤の点滴をさせて頂きました。CRPは正常が0.3以下のところ、8を超えており医師なら分かりますが、病気の勢いが強いことが理解できます。場合によっては、入院治療も必要になってくるくらいの値です。結局、1回の点滴では解熱せず、翌日も点滴をし、それで熱が下がりました。入院は免れた訳で、めでたしめでたしと言っていいでしょう。

そのお子さんが先日、また高熱を出して受診しました。のどを診るとやはり赤く、扁桃腺に膿が付着しています。アデノウィルスは陰性で、CRPは4くらいでした。お母さんも熱が出て、すぐに受診して下さり、早期発見早期治療をしようということになりました。

今回も同じ種類の細菌とは限りませんが、前回使用した抗生剤を使わせて頂きました。幼稚園児の患者さんは、点滴をすると恐怖のため、処置室で点滴の処置をする際に、大泣きします。診察室にもハッキリ聞こえるくらい大声をあげます。

こんな時は「申し訳ないな」と思いますが、有効な治療であるため、「(抗生剤の)点滴をしない方がかわいそうだ」と自らに言い聞かせています。

CRPは4でしたが、単純に考えると病気の勢いが半分と言えるのかもしれません。私としては希望的観測もあるのですが、1回の点滴で症状を改善させたいと考えていました。ところが、予想に反して翌日も熱が下がらないと受診されました。

前回はCRPが倍の8で、抗生剤の点滴を2回やって熱も下がり、元気になりました。今回も2回点滴を頑張れば、元気になるだろうと思っていました。また点滴の処置の際、涙声で叫んでいました。とてもかわいそうで、心が痛みましたが、「これで良くなるんだ」と自分にも言い聞かせざるを得ませんでした。

ところが、ところがです。更に次の日も熱が下がらなかったのです。私の中で、「何故?、どうしたらいいんだ?」という思いが駆け巡っています。想定外のことが起きても、医師として冷静に判断しないといけません。

まず、今回は原因菌が前回と異なったことが考えられます。通常は、診察時に原因菌までは特定できないので、菌を予想し有効と考えられる抗生剤を選択します。前回、入院を免れさせた実績のある抗生剤を使いましたが、解熱しませんでした。

一般的には抗生剤を3日使い、それでも症状が改善しなければ、抗生剤を変更することが推奨されています。既に2日使っているので、抗生剤を変更するのも選択肢でしょう。もう一つは入院し、治療するという手があります。抗生剤の点滴は1日に2~3回行うのが通常の使い方なので、1日に1回しかやらない外来点滴の場合は、ある意味“不十分”で“中途半端”なのです。以前も書きましたが、外来治療で何もかもができるのであれば、病院に入院施設は不要になります。

お母さんも忙しい中を3日連続で医院にかけつけて下さいました。家庭の状況が許せば、じっくり腰を据えた入院治療が望ましいと考えました。もう患者さんの泣き声はもう聞きたくなかったこともあり、お母さんに入院を勧めました。

家族が入院すると、その家庭は大変なことになります。外来での点滴を含めた2時間ほどの治療は、入院するよりはよほど良いでしょうが、3日目点滴治療をして改善することが分かっていれば、「点滴を頑張ろう」と言ったかもしれませんが、そうなる保証はないのです。そこまで話した上で外来治療を希望されるのであれば、抗生剤を変更しようと思いました。

結局、お母さんも前回の2回の点滴で症状が改善しているのを見ているので、「今回はちょっと違うな」と思われたと思いますし、私の入院を勧めた意図をくんで下さり、入院治療を選択されました。それならその決定を尊重し、入院の上で完璧に治療して頂きたいと思いました。

当院では開院して以来、3日連続で点滴をしたことがありません。小児科医になって20年程になりますが、その歴史の中で3日連続で外来点滴をしたことはありません。きっと小児科医の99%が、そうだと思います。ところが、上越に開院して「1週間点滴に通った」という話は既に何度も聞いています。1週間と言えば、5~6日連続という意味でしょう。私の中では、そんな治療は存在しないし、間違いなく入院治療の適応です。なぜ病院に紹介しないのだろうと不思議でなりません。子どもの泣き声を聞き、心が痛まないのだろうかとさえ思います。結局、医療は“医師が必要と認めたら”、「あり」と言われれば「あり」になってしまうのでしょう。

医療は、良心的にやればやる程、経営など効率の上がらない職業だと思います。診察や検診の時に、親御さんの疑問や質問に答えているつもりですが、「こんなに説明してもらったのは初めてです」というフレーズは何度聞いたか分からないくらいです。これも上越に来て初めての経験です。私のやっていることは、ごく“普通”のことだと思っているのですが…。

もちろん真面目に取り組んでいる同業の先生もいらっしゃるでしょう。ただ、私のやっていることが“普通”でないなら、そうしている医師もいることを知って頂くことも医療レベルの向上につながるかもしれません。今後も、自分の中で良心的なことにこだわって医療をしていこうと思っています。