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プチ贅沢
2011年01月24日 更新

最近、「プチ贅沢」と言う言葉があるそうです。

その一つの現れが、コンビニのちょっと贅沢なスイーツだそうで、各コンビニエンスストアが様々な商品を開発し、大きな売り上げを見せているようです。

週末に、ファミリーマートの売れ線のスイーツを専門家が辛口コメントで斬るという番組をやっており、私も観ていました。人気商品でも、遠慮なくダメ出しが出されていましたが、最終的には4人の評価が4人とも満点の商品もありました。

それを観て、ミーハーにも食べてみたくなってしまいましたが、地元の上越市にはファミリーマートがないため、用があり出かけた長岡市のファミリーマートに寄ってみました。店長さんが言っていましたが、放映後、あっという間に売り切れてしまい、私が行った頃には商品棚はもぬけの殻、という状態でした。テレビの影響は絶大だなと思いました。

先日、新潟市から患者さんが紹介状をもらいに受診されました。もともとは上越の方で、卵アレルギーがあり私が診ていたのですが、昨年秋に新潟市に引っ越しされたそうです。引っ越し前に、そのことを知っていれば紹介状を書いたのですが、引っ越し先でいくつか行った小児科で「この子は卵アレルギーがあって」と話しだすと、「市民病院へ行って」と何人かの小児科医から言われたのだそうです。

確かに、新潟県内では数少ない食物アレルギーの専門家がいるので、そう言われるのも無理はないのですが、新潟市ではそういうルートができているからこそ、一様に同じ病院のことを口にするのだと思いました。

はたと、上越市のことを考えると、状況は異なります。

私自身は福岡で食物アレルギーの専門的な医療を学び、約10年前に新潟県で「食物負荷試験」を開始しました。その当時は、県内で専門的にやっている施設はなかったと思います。3年前に上越に開業しましたが、開業医で「食物負荷試験」をこだわってやっている小児科は全国的にも多くはありませんでした。

開業医には患者さんが多く受診するため、てきぱきと診療する必要があるのは事実でしょう。食物アレルギーに関係なく、開業医で充分に説明してもらえる時間を与えられないのは、多かれ少なかれ“効率”を求めた結果であろうと思っています。手間がかかり、リスクを伴うということだと思いますが、効率を重視する開業医には不向きな検査のようで、未だに普及していません。それでも技術があるのを、出し惜しみするのは患者さんに失礼だし、そもそも医療に効率を求め過ぎることに違和感があり、敢えて開業医の身でありながら「食物負荷試験」を実施しています。

例えば、当院に患者さんが100人受診したとします。1日の診療時間は決まっていますから、その中で患者さんの診察を行う訳です。他の医院に200人患者さんが行ったとします。単純に考え、診察時間が半分になり、診察や説明に充分な時間が取れません。その結果として、これも単純計算ですが、今の保険診療では200人来た方が2倍の収益が出ます。

私の考える必要な診察や説明を端折り、切り詰めて200人を診るのと、じっくり時間をかけたため、100人しか診れず収益も半分だけど、満足のいく医療をできるのであれば、私は100人の方を取ると思います。ただ、ここで私と同じ考えの医師もいれば、そうでない医師もいることだと思います。

100人診る態勢の医療をやっている医院には200人は来ないと思います。200人の態勢のところには200人が集まるのだと思っています。まさに医師にとっても、人生いろいろなのでしょう。

「食物負荷試験」も一度経験した患者さんなら分かると思いますが、とても時間がかかります。当院なら9時に始めて、終わるのが12時を過ぎます。途中、診療を中断し患者さんを診にいくことも少なくありません。1日に200人診る態勢では、不可能だと思います。医院にとって経営に有利であっても、私の場合は「食物負荷試験」を止めてでも200人を診たいとは思いません。

特にアレルギーに関しては、普通に説明したつもりでも「こんなに詳しく説明してもらったことはない」と開院以来、何度言われたことか…。普通にやっているつもりなので、そう言って感激されると、何度も驚かされます。さらに「食物負荷試験」もやっている訳ですが、逆に言えば「自分のやり方は間違っていないんだ」と確認できるのだと思います。専門的に、丁寧にやれば、その姿勢は患者さんにとっては、「プチ贅沢」なのかもしれません(笑)。

新潟市は、食物アレルギーの患者さんが専門医に行けるような流れができており、患者さんにとっては迷わず、最終的に専門医に辿り着けるので、ありがたいことでしょう。上越では、当院への紹介はなかなかなく、開業医ではなく、病院から勧められることはあります。“効率”を落としてでも、専門医としてこだわって負荷試験をやっている訳ですから、周囲にアレルギー専門医がいないこともあり、新潟市のような流れがあってもおかしくはないと思っています。

食物アレルギーは食べられるようになるまで除去するのが一般的な対応ですから、私がアレルギーの専門医になる以前の感覚では、専門医に紹介する病気でなかったのかもしれません。時代は変わり、「食物負荷試験」が少し普及してきて、私のよく言うガイドラインでも推奨されています。やる気さえあれば、根拠のある医療をやる元気があれば、専門医でなくてもできる検査になってきています。

普通は、開業医から病院への紹介はあっても、開業医から開業医の紹介はあまりありません。病院へは紹介しやすいけど、開業医にはという紹介に気が進まないという気持ちがあるのかもしれません。もしかしたらですが、敵に塩を送るようなものという感覚の先生もいるのかもしれません。その場合、患者さんは“不在”なことに気付きます。私が他の先生の紹介する場合は、自分よりもより良い医療をしてもらえることを期待して紹介状を書いているからです。

私も経営を考えて負荷試験をやっている訳ではありません。専門であるアレルギーを武器に、地域医療の一環として行っています。個人的には、他の開業の先生などと連携をとって「食物負荷試験」をやっていきたいという考えは常に持っています。

私は、新潟市のような連携を羨ましく思っています。食物アレルギーくらい、様子を見ていれば治ると思っている先生がいるとしたら、今は受け身ではなく、ある程度は能動的に動く姿勢が求められています。正しい認識を持って頂けるよう、2011年も周囲への啓発を進めていかなければならないと考えています。