小児科 すこやかアレルギークリニック

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二の次
2011年02月03日 更新

幸いなことに、今シーズンはRSウィルスが非常に少ないと思います。

RSウィルスは、本来2歳以下の子をもつ親御さんは知っておかなければならない恐いウィルスです。しかし、認知度が非常に低いのは、医師側に責任があると思っています。RSウィルスとキチンと診断している医師はとても少数だからです。

当院は、咳の長引くお子さんを大勢診ています。長引く咳を繰り返している子もいれば、咳が初めて長引いたお子さんも、他院で治療しても改善がなければ、当院を受診して下さるケースもあります。ゼーゼーするお子さんもいれば、そうでないお子さんもいます。

先日、1歳のお子さんが当院を受診されました。問診票を見ると、近くの小児科で生後2ヶ月の時にマイコプラズマと診断されたと記載してあります。ゼーゼー言って、夜はなかなか寝付けなかったようです。

申し訳ないですが、この診断は間違いだと思います。なぜなら症状が、RSウィルスしか考えられないような状況だからです。

生後2ヶ月と言えば、生まれたばかりの赤ちゃんです。この年代は、「移行抗体」といって、お母さんのへその緒から免疫をもらっていますので、風邪などの感染症をもらいにくい状態になっています。マイコプラズマも同様です。

しかし、例外があります。それがRSウィルスです。RSウィルスに限っては、移行抗体が効かないため、発症を抑えることができないのです。しかも、赤ちゃんの細い気管支で悪さをして、多くの痰を作るのです。細い気管支(細気管支)に痰が絡むと、呼吸する度に痰が震えて、ゼーゼー聞こえます。これが「細気管支炎」の病態です。細気管支炎を起こす原因の過半数がRSウィルスだというデータもあります。

生後2ヶ月の赤ちゃんがゼーゼー言えば、99%の小児科医がRSウィルスを思い浮かべると思います。マイコプラズマでは、こういった症状を起こさないと思います。しかも、昨年はRSウィルスが大流行しました。常識的には、RSウィルスを考えるのが妥当です。

こういうケースを含め、咳が良くならずに前医から当院に移ってこられるケースにはマイコプラズマと診断されていることが多く、医師のクセというか思い込みなんだろうと思っています。当院で念のため、マイコプラズマの抗体を調べてみても、マイコプラズマの痕跡もないのです。

こういう患者さんに、インフルエンザの時のように鼻に細い針金を差し込み、鼻水をもらうと、それを検体としてRSウィルスを調べることができます。どの医院や病院でもここ最近は、インフルエンザの検査をしないことはないくらいだと思いますが、同様の手法でRSウィルスを簡単に調べることができます。

しかし、キチンと調べている小児科はかなり少ないと思います。検査費用を患者さんに請求できないからです。どちらかと言うと病院は経営は二の次で、正しい診断をする必要があるでしょうから、調べているケースは多いと思います。しかし、開業医となると経営も重要となります。その辺で医師の考え方が手に取るように分かります。どんなに疑っても、ほとんど調べない医院さんも存在します。

当院の場合は、他院で良くならないと、当院を頼って受診されることも多いので、ある意味、病院のような立場を取る必要があります。もちろん自腹を切って、RSウィルスかどうかを調べています。

医は仁術と言われています。私も慈善事業でやっている訳ではないですが、経営は二の次でも、正しい診断をしなければいけないと考えています。頭にRSウィルスことが浮かんでいても、知らんぷりをして他の診断名をつけるのは心が痛むし、そうしないのが私の方針でもあります。逆に、そうする人を私は信用できません。

私が自腹を切ってでもRSを調べるのには、もう一つ理由があります。それは、RSウィルスにかかった以降は、気管が弱くなり、風邪を引く度に咳が長引く可能性が高くなるからです。場合によってはゼーゼーを繰り返し、ぜんそくと診断されることも少なくありません。

今回、2ヶ月の赤ちゃんの話をしましたが、それ以降、風邪を引くと咳が長引くようになったそうです。そして今回、咳が長引くので、他院から鞍替えで当院を受診されたのです。その後の経過をみても、2ヶ月時の症状がマイコプラズマではなく、RSウィルスと診断すべきであったと思います。その時にRSウィルスを調べれば、今の咳の長引く原因が分かったと思うのですが、当時調べていなかったので、今更調べることはできません。当時のかかりつけが調べて欲しかったと思っています。

RSウィルスにかかると、かなりの確率で咳が長引くようになります。当院で診ているお子さんはRSかどうか真面目に調べているので、かかっていれば、「今後咳が長引くようになる可能性が高い」という目で経過を追うことができます。RSウィルスを調べていない医院さんでは、どうやって診ているのであろうと思っています。

私が呼吸器感染を専門にしているせいもあるでしょうが、RSウィルスに対する方針が、医院の姿勢を反映する鏡のようなものだと思います。自腹を切るようなことをしない方針のところもあるようですが、どこか歪みが生じてしまうこともあるでしょう。やはり医師は、時には経営は二の次にしてでも、正しいことを追求する姿勢が求められるのであろうと考えています。